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だいぶ久しぶりにライブハウスに行った話

さてどこから書いたものか。そもそもは今年の七月に遠くから東京へ遊びに来た友達と、なんの用があるわけでもないのにタワーレコードに立ち寄ったときに、プッシュされていたのだ、そのバンドが。バンド名やアルバムのタイトルや収録されている曲名などが気になったので試聴しようと思ったのだけど、試聴できそうでできなかったので、20年ぶりくらいにジャケ買いしてやろうかと思った。しかし、いやいや、そんな、現代は、いろいろどうにかなるじゃんか、と、冷静でつまらなくてケチな大人の自分が脳内で主張するので、ジャケ買いはしなかった。

今にして思えばそこでジャケ買いしていたら、私は私の素晴らしいジャケ買いセンスに感動し、自分を見直すことにより、自信に満ち溢れ、その結果爆発的に陽のオーラを纏うようになり、それに圧倒された人々がうちの劇団のチケットを争うように買い求めだし、たちどころにこの間の公演のチケットが売り切れたであろうに、もったいないことをした。

と、ここまで言うくらい、家に帰ってからユーチューブでMVを探して見た私は、このバンド超好き!、となったのだった。

ユーチューブで見ることができるどの曲も素晴らしいのだが、特に気に入った曲があり、とりあえずそれが収録されているCDを購入しようと調べてみたのだけど、これがなんと、ライブ会場のみでしか販売されていないとのことだった。それなのになぜかアマゾンマーケットプレイスで販売されていたのだけど、これはもちろん不当に高い値段だったので無視、そんな人から買ってはいけない。

さて、こうなるとライブに行くしかないのだが、ライブハウスなんて何年ぶりだよ。コロナとか関係なく、随分と長いこと行ってないぞ。かつては、友人が出演していたり、友人に一緒に行こうと誘われたり、などなどのことがあり、なんだかんだで1年に1回くらいは行ってたけども。小劇場と同様に一度も足を踏み入れない人も多い場所である。そりゃそうだ、ライブハウスは怖い。いや、本当は怖くないのだが、受付のスタッフは基本的にラーメン二郎の店員くらいの接客姿勢だし(個人の感想です)、ラーメン二郎の行列と同じくらいの比率でやんちゃな客がいるし(個人の感想です)、要するにライブハウス=ラーメン二郎だから(大袈裟に書いています)、行くのに勇気がいる。というか、私はあの雰囲気が決して嫌いではなく、むしろ好きであり、タバコが吸えなくなったのは残念ではあるが、面白い場所だと思っているのだけど、持ち前のパーソナルスペースの広さから、わりと元気な時じゃないととてもお邪魔したくない感じなのだ。若い頃はだいたい毎日元気だったから、平気で行っていたけれども、今は元気な日なんかだいたい半分くらいだろう。つまりちゃんと楽しめる確率は50%だ。さあどうする。などとうだうだ考えているうちに、チケット残りわずか!、というような文字列が目に入るようになってきた。もちろん我が劇団のチケットが残りわずかなのではなく、見に行きたいライブのチケットが残りわずかなのだ。悩んでいる暇はない、買うしかない。買った。誰か道連れにする人を探す時間などなかった。

それから、ただただライブが楽しみな気持ちと、若者が集うであろうライブハウスに完全なるおじさんとなってしまった状態で行く不安とがないまぜになったまま日々を過ごした。その間に芝居の本番があったので、ライブのことを忘れていた期間もあったが、それはまあいい。

芝居が終わると、ライブまで一週間になっていた。まずは普通に買えるアルバムを購入した。なにしろ、そのライブは、アルバム名を掲げたツアーの一公演であるので、アルバムはマストだ。聴いてみると、やはり思った通り素晴らしいアルバムであったのだが、待てよ、あの、最初にガツンと食らった、ファーストインパクトのあの曲はこのアルバムに入ってないじゃないか、いや、入ってないから入っているCDを手に入れたくてライブに行くんだけど、その曲はアルバムに入ってないから、演奏してくれないのではなかろうか、入ってないから。と「入」という字が異様にたくさん含まれたことを考えたりもした。もちろん、その曲だけが聴きたいわけではないからいいのだが。

当日。開場時間よりだいぶ早く到着し、まずはライブハウスの場所を確認。本来ならばそれからコインロッカーなどを探して身軽になりたいところなのだが、なにせ、絶対にグッズというかCDを買うのだから鞄はいる。しかたない、持っていこう。小さい鞄だから大丈夫だろう。

時間はまだまだある、整理番号もだいぶ後ろのほうだし。小雨が降っていたが、とりあえずそこらへんをうろうろした。うろうろしても、なかなか時は進まない。徐々にライブハウスの近くに人が増えてくる、若者しかいない。怖くなってその場を離れ、たまたま発見したブックオフで心を落ち着かせる。よく考えたらワンマンじゃないし、出てくるのは最後なんだから、始まってから一時間後に入場したっていいんだ。でも、やることねえしな。このままブックオフにいたら、110円の本を無駄に大量購入することは目に見えている。これ以上荷物を増やしてどうする。迷惑だろ。

結局開演時間ぴったりに再びライブハウスに行ってしまった。が、なんと、まだ入場が終わってなかった。終わってなかったどころか、ちょうど私の整理番号が呼ばれた。もう入るしかあるまい。

受付で、お姉さんにデジタルチケットをもぎってもらい、ワンドリンクの料金600円を支払い、ほっとしていると、お姉さんがなにやら言っている。受付でやることってまだなんかあるっけ?てか聞き取れねえ。「お目当てはどちらですか?」ああ、そうか、そういうシステムあったわ。小劇場の役者扱いみたいなやつ。バンド名を答え、なんとか入場に成功した。そういえば昔も、友達のやっているバンドを見に行ったけど、友達のやっているバンド名を知らなくてなんか受付で変な感じになったことあったわ。

物販コーナーはすいていた。というか、開演時刻を過ぎているので、誰もいなかった。チャンス!欲しかったCDと、何故かシャツを一枚購入した。これで目的の半分は達成である。

さて、ワンドリンクを交換せねば。大行列を想定していたが、途中で飲む人が多いようで、バーカウンターには誰もいなかった。とりあえず酒だ、酒を飲むしかない。黒霧島を水割りでもらって、フロアに入ると当たり前だがかなりの混雑していた。ソールドアウトだったし、売り切れ間近の整理番号で入ったのだから。これ、酒持ってるのもなんか危ないな、と思い、ほぼ一気飲みで終わらせた。それで酔うほど濃くなかったので助かった。氷も全部噛み砕き、プラスチックのコップを鞄に放り込む。

対バンの、二つのバンドと一人のソロシンガーの間は、あんまり記憶がない。もちろん普通に楽しんでいたのだが、目の前にいるやつが奇妙な動きを連発していて自分の財布などが心配になって出演者の入れ替えのタイミングで移動したり、横のやつが会場内で一人だけ横に揺れていてぶつかるので出演者の入れ替えのタイミングで移動したり、後ろの女の子の邪魔になってそうだったので出演者の入れ替えのタイミングで移動したりした。結果、トリの見たかったバンドの出番の時には後方壁際という私的には最高のポジションをゲットしていた。これで心置きなく楽しめる。なんだかんだで、まだライブハウスでうまく立ち回れてるじゃんか、おじさんの俺よ。しかし冷静になってみると、マジで俺が最年長なんじゃないかというくらい若者だらけだ。こっちは最早、お前ら、客の若者たちの笑顔でさえ尊く感じてしまうくらいなのに。

そして登場。ああ、やっぱり、そんな感じでかっこいいのか。そんな感じでMCするのか。新曲もあるのか。この曲みんなで歌うの面白いな。新曲以外はアルバムの曲だねやっぱり。と油断していたら、なんと、例の曲を演奏し始めたのだ。ラストの一曲前で。わー。やったー。あー。最高だ。ワンモア!そして終演。

終わってから物販を買う人が多く、その列に塞がれてなかなか外に出れない。なるほどな。ライブを楽しむために荷物を極限まで減らしているから、終演後に買いたいというわけか。列をよけて脱出。

正直なところおじさんにはいろいろしんどかったけど、行ってよかった。ライブハウスはいい。ライブハウスで見ることができてよかった。


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