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初めて女子プロレスを見てきた

プロレスは昔から好きで、男子のプロレス興行は何度も見に行ったことがあるし、その興行の中で行われる女子の試合なども見たことはあるのだが、女子プロレスの興行は見に行ったことがなかった。そんな私に、最近、プロレスニュースやSNSやYouTubeなどを見ていて気になる女子レスラーが2人できて、ちょうどいいのがあったら見に行きたいな、とは思っていたのだけど、なかなか重い腰が上がらない日々を過ごしていた。なにしろいまさらドラクエ10オンラインを始めてしまい、日替わりクエストやらなきゃ、みたいなことばっかり考えている日々だからだ。ドラクエ10オンライン、すげえ面白いけど、危険な遊びだとしか言いようがない。違う、ドラクエの話を書きたかったわけじゃない。

先週末。自称元演劇人の友人と飲みに行った。彼とは20年以上の付き合いになるし、まあだいたい数ヶ月に一度くらいのペースで飲むので、話題の中心は最近あったことになる。

実は来週、生まれて初めて女子プロレスを見に行くことにした。

と言ったのは、私ではなく友人のほうだ。突然どうしたというのだ。いや、我々の年代にはプロレスが好きな人や、プロレスを通ってきている人が多いので、おかしくもなんともない、普段から当たり前に、馬場、猪木、鶴田、天龍、藤波、前田、四天王、三銃士、あたりのことは知っているものとして話をしている。が、何故に女子。いや、普段から当たり前に、飛鳥、千種、ダンプ、ブル、北斗、アジャ、キッスの世界、あたりのことは知っているものとして話をしているけども。

詳しく聞いてみると、神取忍のYouTubeをたまたま見たところ、神取が自ら町中でスカウトするという動画があり、そこでスカウトした人のデビュー戦があるので、是非見たいと思ってチケットを取ったとのことだった。かつての彼の芝居のように熱を孕んで語られるスカウトからデビューに至るまでの物語は、彼がそのプロレス興行を見に行く理由として完璧だった。

私ももちろん大変興味を持ったのだけど、果たして興行の日までに、そのYouTube動画を全て見る時間があるだろうか、動画を見ていないとなんか損した気がするんじゃなかろうか、という、貧乏人丸出しの思考により、一緒に見に行くか迷っていた。ちなみにだが、別に友人は私に「一緒に行く?」などとは一言も言っていない。「面白そうだな、一緒に行こうかな、どうしようかな迷うな」と私がひとりで勝手に迷いの森に入っただけだ。

なんで森に迷い込んでいったのかというと、対戦カードを調べたところ、冒頭に記した気になっているレスラー2人が、両方とも、メインの6人タッグ戦に出場するとわかったからだった。これは運命としか思えない。財布を見ると、今月ラスト1枚の諭吉がそこでさびしくてさびしくて震えていた。さあどうする。

それから、ドラクエと労働で忙しく、YouTubeもろくに見ることができないまま、あっという間に興行当日となった。3日しかなかったので、仮にドラクエをしていなかったとしても件のYouTubeを全部チェックできたとは思えないが、とにかく、当日になってしまった。スケジュール的には余裕でいける、財布の中では相変わらず諭吉が震えていたが「この時期にまだ諭吉がいるだけですごいじゃないか、もう行っちゃえよ」と、心の中の天使も悪魔もお守りもヘッドロココも言ってくるので、当日券情報を調べる。が、まるで出てこない。当日券が前売り券と値段がいくら違うのかみたいな情報どころか、当日券があるのかないのかも不明なのだ。そこは頑張ろうぜ!LLPW-X!神取社長!頼むよ!

とはいえ、当日券が無いってこともなさそうだったので、例の友人(リングサイド3列目の前売り券を購入済み)に、とりあえず会場には行くと伝えて、それから普通に仕事をしている間に、友人が怪しいチケットショップでチケットをゲットしてくれていたのだった。怪しいとか書いたけど、怪しいのは雰囲気だけで、法律的にも問題なく、なんならお安く購入できた、ありがてえ。

試合開始前

前置きが長くなったが、そういった経緯で「井上貴子 – デビュー35周年記念イベント – ~ひとしずくの勇気~」に行ってきたのだった。

第一試合のキャサリンデビュー&NORI再デビュー戦は、キャサリンがどうやらタッグマッチのルールを正確に理解してないことも含めて、久々にデビュー戦らしいデビュー戦を見たなという感じだった。最近はなにしろネットで探せばいくらでもプロレス映像を見てレジェンドからどインディまで勉強し放題なので、こういうことはなかなかない。神取がわざと教えてなかったとしたらお見事としか言いようがないが、天然で忘れていただけのような気もする。NORI選手はJuice=Juiceの「わたしが言う前に抱きしめなきゃね」のインストで入場してきたので無条件で応援するしかない。Juice=Juice好きなんだろうか。

第二試合はSTARDOM提供試合。なんというか、最近の新日本プロレスっぽい試合展開だった。会社の方針なのか、たまたまそういう選手の試合だったのかは不明。

そこから、本日の主役の井上貴子選手の歌、からの、ゲストの歌。SHOW-YAのボーカルの方の鉄人ぶりはびびった、60歳超えてあれはすげえや。そしてもうひとりは松本伊代、あの、ママでおなじみの、伊代だ。当然のように歌うはセンチメンタルジャーニーだ、まだ16だから。

まさか自分の人生で、松本伊代の生歌を聴くことがあるなんて思っていなかったわけだが、なんでなのかまるでわからないけれども、とにかく嬉しかったのだった。なんだこれは、本物を見た、という種類の感動なのだろうか。不思議な体験だった。

そして、それよりももっと一生見ることができないだろうと思っていた、80年代の親衛隊を生で見れたのは衝撃だった。ヤングの頃から伊代ちゃん一筋であります!、と背中が語っているピンク法被のおじさまはもはや神々しくさえあった。もちろん伊代ちゃんを応援しに来ているわけだが、現代のアイドルファンと声援が、今で言うコールが、まるで違う。なにしろ何を言っているのかさっぱりわからない、私が知っている日本語から一番近いものを当てはめるとしたら、絶叫、もしくは、断末魔、あたりになるだろう。しかもそれが続いたあとに、なんと、笛を吹く者が現れたのだ。曲の途中に、笛。つまりセッションが始まったということだ。今のアイドル現場なら良くて即退場、悪くて出禁だろう。あまりにも壮絶な超ベテラン伊代ちゃんファンの生き様。私の周辺の観客たちは全員、伊代ちゃんに向けていたカメラを、笛の彼へと向け直していた。凄かった。ミキサマミキサマオシオキキボンヌよりパンチの効いた応援がとっくの昔に生まれていたという知見を得たのは大きな収穫だった。

さて、試合再開。

続いての試合は、元全女(全日本女子プロレス)の現役レスラーを集めたタッグマッチだ。なんといっても注目は、大ベテラン、ダンプ松本だ。

ダンプ松本

とにかく元気に竹刀を振りまくるダンプ、それだけで見る価値がある試合だった。そのうえ、もうなかなか見ることのない、フォークを額に刺して大流血、なども披露。伝統芸能レベルのものを見せてくれた。

メインは、井上貴子、井上京子、桃野美桜VS神取忍、アジャコング、ウナギ・サヤカ。Marvelous所属の桃野美桜と、フリーのウナギ・サヤカという、私的に気になっている現代の女子レスラー2人と、他は全員レジェンド級という夢のようなカードだ。

桃野美桜のいいところは、元気とか、スピードとか、ハイフライヤーとか、いろいろあるが、空気を読めないところが素晴らしい。もちろん致命的に読めないわけではなく、ほどよく読めないことにより、自然と主役に躍り出る。

ウナギ・サヤカは、現代の女子レスラーの中では、口喧嘩最強だろう。つまりとんでもなく空気が読めるので、観客を味方につけることができる。

この日に関しては、読めないほうが面白かった。もちろんベテラン勢のふところの深さがあってのことだが。

などと、わかっているようなことを書いたが、全て個人の感想です。いやー、面白かった。女子プロレスの時代が来るかもしれない。いろいろ運営とか当日のスタッフワークとかで、直すところいっぱいあるけどな、と演劇を運営している人としては思うが、ちゃんとしていればいいってもんでもないし、客席、いい空気だったなあ。

ラストの集合写真



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