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猫と暮らす100年越えの古民家⑤

  山の稜線を、流れてゆく雲たちが綺麗だ。青空を背景に、弧を描く鳶たちの姿は凛々しく、ああ美しいなとしばし眺める。

   木々に囲まれた毎朝の見回りは、楽しくて仕方がない。毎日同じ山道を歩くだけなのだけど、わずかな変化や獣たちの痕跡に気付けることが、うまく言葉に出来ないけれど、豊かさを感じるひと時だなと感じる。

  罠にかかっていれば、すぐさま引き返し一連の処置をし出勤する、かかっていなければ、朝ご飯を食べてから出勤する。毎日同じことの繰り返しだけれど、その繰り返しの中に、学ぶことはたくさんあるなぁと日々思う。

  帰って、玄関でダニチェックをしてから、少し薄暗い室内へと入る。明かりを取り入れるところが、家の前と横にあるので、どうしても山側の奥は光が届きにくくなるのだ。

 たまこは、少しずつ姿を見せてくれるようになってきた。音を立てることなくひっそりと、それとなく視界に入るところで、毛繕いをしたり、お行儀よく前足を揃えてこちらを、じっと見つめていたりする。

「たまちゃん」
声をかけて手を伸ばすと、さーっと姿を隠してしまうのだが、少しするとまた、見えるところで三毛色の長い尻尾を、ぱたりぱたり、していたりする。

ゆっくりゆっくり、仲良くなれたらいいな。この子は、いくつになるんだろうな。

ぱたぱた揺れる尻尾を見ながら、静かに夜は更けてゆく。


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