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「ゆゆ式」という究極の日常系漫画


日常系作品は現在では一つのジャンルとして定着している。大きな事件や出来事が起こることなく、作品内のキャラクターの日常を淡々と描いているのが主な特徴である。

しかし、日常系には作品ごとに様々な特徴があり、例えば天使と悪魔が女子高生をしていたり、キャンプが趣味の女子高生たちの日常だったりと、とにかく多種多様な設定が大体の作品に練り込まれている。

なぜこのように様々な設定が含まれるのかというと、単純に何か一つでも特徴的な部分がないと、話の展開に限界がくるからだ。女子高生が主人公の作品が多いが、女子高生が主役という事に加えて何か一つ他とは異なる設定があることが多い。普通の女子高生としての生活に加えて軽音部として活動していたり、自転車部に所属していたりすることによって高校生のイベントである文化祭や体育祭という学校行事とは別に、ライブシーン、練習シーン、大会だったりと、様々な展開に転がすことができるので、女子高生という設定に加えて付加価値をつける必要がある。というか、つけたほうがネタが増えるので連載に有利になることが多いのだと思う。


そんな中で「ゆゆ式」という作品は異質な作品であり、真の意味での「日常系」だと私は思う。

ゆゆ式は女子高生三人組の日常を描いた作品なのだが、やはり他の作品とは異なる点がある。しかし、それは変わった部活をしているとか、友達がいないとかそういう方面ではなく、本当の意味での日常に特化しているという点だ。

ゆゆ式には日常系作品において定番である文化祭や体育祭、修学旅行といった学校行事のイベントがまったく描かれない。

基本的には主人公の野々原ゆずこ、日向縁、櫟井唯。この三人の会話を中心に物語は進んでいく。本当にそれだけだ。2008年の連載開始から唯一変わった出来事と言えば、相川千穂、岡野佳、長谷川ふみの三人組と仲良くなったという一点のみである。

このように本当に抑揚のない物語であるのだが、連載が現在も続いており、「まんがタイムきらら」を代表する作品である。

しかし、唯一他の作品とは違う要素があるとすれば、野々原ゆずこ、日向縁、櫟井唯の三人は「情報処理部」という部活に所属しているという点である。しかし、この情報処理部は特に部活らしいことをしているわけではなく、ただ三人で気になったことをパソコンで調べているだけで、やろうと思えば部活という舞台を用意しなくても成立する。

この「情報処理部」が存在している理由は顧問の松本頼子との接点を作るために生まれたのだと個人的には思っている。(現在では岡野佳相川千恵が部室に単独で訪れてきたりと初期にはなかった役割をこの部活は担っている。)

更にこの作品に出てくる登場人物は上記の人物しか出てこない。

野々原ゆずこ 日向縁 櫟井唯 相川千恵 岡野佳 長谷川ふみ 松本頼子

これで全部だ。非常に登場人物が少ない。これだけの数で毎月面白い漫画を描き、ネタが尽きることなく12年連載が続いているというのは、作者の三上小又先生は天才である。

上記のことから「ゆゆ式」究極の日常系作品だと私は思う。

ここからは私の願望なのだが、ゆゆ式はこれからも彼女たちの何も変わらない平熱の日々を末永く描いて欲しいと思います。


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