【働くあのひと case.2】毎日が文化祭
2人目は、AbemaTVでニュースキャスターを務める辻 歩さん(通称:たけださん。武田修宏さんに似ているから)アナウンサー歴は4年目。3年間地方局に所属し、去年の春からAbemaTVのニュースキャスターとして働き始めたそうです。キャスターとしての顔はもちそん、これまで聞いたことのないたけださんの本音を、インタビューを通して掘りまくりました!
―どうしてアナウンサーになろうと思ったんですか?
中学生の時くらいから、テレビ局の人になりたかったんだよね。当時放送していた「めちゃイケ」って番組がめっちゃ好きで。
将来は、めちゃイケのディレクターになるつもりだった。岡村さんも好きだったし、お笑い番組なのになんか感動もあって。そこの塩梅がすごい面白かった。
高校生まで、めちゃイケのディレクターになるつもりで生きてきたんだけど、キー局の社員になるには、まずは東京の大学に行こうって思った。まあ受験した理由はそれだけじゃなかったんだけど、「東京の大学に行こう」って思った一番の理由はそれだった。東京のテレビ局の人になろう、って。
そのときは、アナウンサーになるとかは考えてなかった。人前に出るのは昔から好きだったけど。
東京来て、ちょっと放送研究会とか入っといたほうがいいんじゃないかとか思った。周りの友達もテレビ局に入りたい子が多くて、入っていく人も多かったんだけど。
なんか…いつのまにか、その波に乗り遅れたというか(笑)新歓とか行ってたんだけど…。気づいたらお笑いサークルに入っていたんだよね。それは、なんというか完全になりゆきだった…。
「テレビ局に入りたい」って言っていた友達は軒並み放送研究会に入ったのに、なぜか俺はお笑いサークルに入ることに!そこは流された!
でも、これは入って気づいたことなんだけど。お笑いサークルにいると、ライブで普通にネタもやるけど、学生イベントとかのMCの依頼が来るんだよね。
それこそ、放送研究会から「MCやって」って依頼がくるようになって。結構、そういうイベントに出たりするの好きだったから行ってた。
そしたら、「あれ、MCって意外とおもろいやん」ってなった。もともとテレビ局の人になりたかったのと、こういう仕切る役とか面白いじゃんってなって。
両方やりたいって思ったら、アナウンサーになるっていう選択肢が浮かんだ。MCもしつつ、テレビ局にもいつつ。
なれる可能性がちょっとでもあるんなら、アナウンサー目指してみようかなって思ったのが、大学2年生の終わり~3年くらい。
ー本格的にアナウンサーを目指そうと思ったきっかけって、何かありますか?
周りが就活モードになって、改めて「じゃあ何が自分はやりたいんだろう」って考えたときに、自然とアナウンサーになりたいって思ってた。けど、まあなれるとは考えていなかった。就活意識して、目指してみる打席には立ってみようかな~ってくらい。
大学2年の終わりに、TBSのアナウンススクールの体験みたいのを見つけて。「あれ、これちょっと行ってみよう」って思って、行ってみた。
そしたら、周りもアナウンサーになりたい人ばかりだし、現役のアナウンサーが教えてくれるから、「アナウンサーになること」のイメージがついて。本腰いれてやってみようかな、と。目指してみようかとそこで思った。
なるためにはどうしたらいいかを少し把握した気がする。
それでも、まだ自分がなれるとは思っていなかったから、当時スクールに通っていたことは、本当に誰にも言ってなかった。
大学2年の時には、2週間に1回とかだったからそんなにたいしたことじゃなかったんだけど。3年になってから、本格的に1週間に1回のスパンで通い始めた。
2年の時には「入門編」としてクラスに通っていたけど、3年になって就活とか考え始めたときに、もう少し続けてみようかな、と。
ースクールに通ってみて、実際どうでしたか?
まず、かわいい女の子がめっちゃおる…ってなった。
同時に、可愛くても我が強い子が多くて…。なんか、「大変やなあ」って思った。
ー…なるほど。この質問は、なかったことに。
(笑)
考えてみたら、大学3年生の時には週1回通ってたから、バンドでリーダーやってたときも、スクールには行ってたんだよね(※たけださんは所属するバンドサークルで、一時期新入生をとりまとめるリーダーをつとめていました)
そのときは自分はアナウンサーになれるって思っていなかったから、なれなかったらちょっと恥ずいやんって思って。
通ってたことは、誰にも言わなかった!本当に、言ってない。
だから、ずっとこっそりスクールに行ってた。金曜日のお昼のクラスだったんだけど、これはまあ…自分のせいなんだけど、再履の必修が1限と5限に入ってて。1限行って、赤坂(スクール)行って、5限行って、サークル行って、夜は自分のバンドの練習する、とかしてた。何食わぬ顔してサークルに行って、飲んだりしてたな。
ー実際にアナウンサーになって、どうでしたか?
どの仕事でもそうかもしれないけれど、思ってた世界と必ずしも同じではなかったというか。
実際は、見えない部分での仕事がめちゃくちゃ多い。
例えば、どこかで事件があったりすると、数時間前に現場にいって、その周辺を取材しまくる。喋ることをつくらないといけないから。
行って初めての土地では喋れないし、中継を喋りでつなげないといけないときもあるから、情報は常に必要。
視聴者にとっては5分くらいのニュースでも2時間3時間かけてニュースはつくられてて、そこは見えない部分だなと思う。
これは局によって違うけれど、報道の性質上、毎日どこでなにが起きるかわからないというのがある。
台本がなかったりする現場もあるし、台本書く人を用意するなら、そのぶんひとり制作にまわせるってこともあって。
事件によっては、カメラがどう動くかもわからないし、現場に行っても何が起こるかもわからない。
それを報道するためには、いろいろ事前に仕込んでおかないといけない。
あるイベントに対して特番やるときには、かなり準備する。スタッフさんに頼んでやってもらうこともあるけど、少なくとも自分は、自分で調べて話すことを作らないと怖い。
自分で調べたら、なにかおきても自分で判断できるし、自分の足で取材も行くし、専門家にも話を聞きに行く。
用意されたものを読むだけの仕事もあるけれど、自分は「報道の人」だから。
あるものだけをするんだったら、自分はいらないと思う。
現場に行ってみたけど報道するまでもないから帰る、っていう空振りも結構ある。
残念だなと思うこともあるけれど、まあ世の中が平和であれば一番だな。
ー「自分だからできること」って、なんだと思いますか?
やっぱり、そういった取材の部分かな。ローカルにいたときは人手不足だった時期もあったから、自分で取材して、自分で記事書いて、自分で編集して、自分で読むとか普通にしてた。
そこで経験したことを今、役に立てられているというのは、価値のあることなのかもしれないとも思う。
あとは、喋ることが好きだから、長い時間話すとかは苦ではない!
取材さえできれば、いくらでも話せる。それは仕事云々ではなくて、普段の自分もそうだと思う。
ニュースって、アナウンサーだけで作っているわけじゃない。いろんな人が関わって、最後の出口がアナウンサーなだけ。
これまでみんなでつくってきて、たくさんの思いが詰まったものを、アナウンサーが間違えたら間違えた形で伝えてしまう。特にネットだったら、すぐに広まる。
だから、どれだけ時間をかけて用意されたものだとしても、自分の目で確認することが大切だと思っているし、自分も制作に携われたらうれしい。
ーアンカーのアナウンサーとして、心がけていることってありますか?
複数の視点で物事を捉えて喋るということは、すごく気をつけている。あるニュースがあったとしたら、Aの意見を持つ人と、まったく逆のBという意見を持つ人が必ずいる。どれだけその意見に大小があったとしても、どちらかだけに偏った意見を話すことは、絶対にしないようにしている。
ニュースって、そのニュースによって得する人と損する人が絶対にいるから。
報道したことによって、世の中に議論を巻き起こすことが理想!意見はいくつあってもいいと思うし、どれも無視してはいけないなとも思う。
「違い」ってあっていいと思っていて。意見って両方ないと、多分世の中が腐ると思っている。それは歴史が証明していて。
報道はそういう風に、どちらかの意見だけに偏った世間をつくることもできてしまうなと思う。報道の人って、こういうこと思っている人が多いんじゃないかな。
自分もニュースをみたときに個人的に思うことがあったりもするけれど、いったん立ち止まって、報道する身として話すということは忘れないようにしている。
ー「やめたい」と思ったことって、ありますか?
めちゃくちゃあった。夜中に呼び出されることも多いし。プライベートの予定が極めて立てづらいんだよね。
いつ、どこで何がおきるかわからないし、まあ世の中が平和であることがなによりなんだけれど。
でも、すごくざっくりしているけれど、将来は信頼されるニュースキャスターになりたい。「この人が言うってことは、そうかも」って思ってもらいたい。
テレビ局って、もう大体信頼ができあがっているんじゃないかって思うんだよね。
テレビ局であることが信頼で、「そこに属すること=信頼」みたいな。
今はAbemaというまだできたての組織にいるから、まずは自分が信頼できるアナウンサーになって、それがAbemaTVの信頼にもつながればいいなっておもう。すでにできあがっているもので勝負するんじゃなくて、自分の行動で何かを変えられるように、それで自分としても組織としても信頼を得られればいいなって思う。
*
ー話は変わりますが!
たけださんにとっての一番の「好き」ってなんですか?
喋っていることが好き。誰かと喋っていたい。そもそも、誰かとコミュニケーションをとるっていうのが好きなんだと思う。人見知りもしないし、初対面でも話すし。話すことで自分をわかってもらえるのと同時に、相手の新しい面を知れたりとかするの、おもしろいなあって。
ー逆に、喋れなくなるときってあるんですか?
多分本質的に、沈黙が怖い。
なんか、もしかしたら自分の根幹はそこにあるのかもしれない。
沈黙が怖いから、喋るっていう。相当気を許さんと、沈黙には耐えられん!(笑)
沈黙オッケーって思える人って、相当距離が近いと思う。
あとは、何も音がない部屋で寝れなかったりもする(笑)Youtubeで曲流したり、ラジオ流したり…。本質的に無音が怖いんだな。
…これ、深く考えたことすらなかった。
ー「喋る」って、相手が必要だと思うんですけど、誰かと一緒にいるのが好きってことですか?
そうだと思う。アナウンサーの仕事をしていて気づいたんだけど、ニュース読むときってカメラに向かって話すから、なんか孤独なんだよね。その向こうには確かに人がいるんだけど。だから、イベントのMCとかでお客さんがいたりするとめっちゃ嬉しい。反応見ながら次は考えて話せたりもするし。意外とこの仕事をやってみて、孤独だなって。
ー最後に!たけださんにとって「働く」ってなんですか?
しんどい9割、楽しい1割。
その1割の時を迎えるために、自分は働いている。この1って時間のことだから、その質はめちゃくちゃ高い!
なんか、毎日が文化祭みたいだって思う。いろんな人が働いていて、なにかをつくって、そのアンカーがアナウンサーで。そうやってみんなでつくったものをきちんと終わらせられて、「よし、やりきった!」って喜べる瞬間が一番やりがいを感じる。
人生において、無駄な打席ってないと思う。結局、「しんどい9割」もどこで活きるかわからない。
高校、大学、ローカル局にいたとき、そして今。それぞれ別の時間だけど、今になってやっと、それらがいい具合に繋がってきたなって実感するから、これからも頑張ろうって思う。
めちゃイケ好きじゃなかったら、お笑いサークル入ってなかったら、多分今アナウンサーになってない。
ローカル局にいたとき、1年目2年目がすごくきつくて。夜中も普通に呼び出されて動いて、実は本気でしんどかった。しんどすぎるときには、「本当にこれは人生の無駄なんじゃないか」って思って、はやくやめたいって思ったこともあった。
でも、いざ東京で働きはじめたとき、そこで気づいたことが多かった。
例えば、自分は今まで事件の報道を担当していたから、現場にも出ていたし、自分で事件について勉強したりもしていた。
でも、東京に来てみて火災現場の取材とかしたことあるキャスターってあんまりいなかった。ヘリから撮っている火災現場の映像みながら実況するっていう仕事がきたとき、ローカルでは死ぬほど現場にいってたから、映像越しでもその状況が手に取るようにわかった。
2年目は裁判に関する報道メインだったから、刑事訴訟法について死ぬほど詳しくなったんだけど。
「これはいったい、これからの人生になんの意味があるんだ」って、そこで働いているときには思ってたけど、東京にきて思わぬ形で役にたったりとか。情報が少ない現場にでても、今まで培った経験と知識で先が予測できる。
そのときはすごくしんどかったり、いやこれやる意味ないやろって思ってたことも、全部意味があることなんだって思えるようになった。
今もしんどいこと多いけど、過去と今がどこで繋がるかわからないよなって思う。本当に。
結局今の自分の基盤も、前の職場で地道に培ったものなんだとも思えるし。
なにかをやりきったときに、「どうしてうまくいったんだろう」って振り返ると、あのときに基盤をちゃんと作れていたからなんだ、って思ったりもする。「実は無駄ではなかったんだ!」って。
今の環境で吸い尽くせることを吸い尽くせているか、それがすごく大事。
今の場所でできないまま次に行くと、次の環境でも「あの時、もうすこしやっときゃよかった」って思う時がくるから。
そこにいるときの経験が、いつか絶対に次に繋がるから。…それを自分ができていたかと聞かれると、そうではない気もするんだけど。
でも意外と、ほんのささいなことが繋がっていくもんだよね。
ーちなみに、「これは聞いてほしかった」みたいなことってありますか?(期待の目)
…まあでも。
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編集していて気づきましたが、冒頭の「めちゃイケがめっちゃ好き」って、もしかしてダジャレだったのかな……。録音にもばっちり残ってます。
メディアで働く身として、じんわりとくるお話でした。報道について、そして働くということについて、改めて考えさせられます。
ニュースキャスター 辻さん!貴重なお話をありがとうございました!
※辻アナのツイッターはこちら!
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@tsuji_ayumu
いつも応援ありがとうございます。