不謹慎だけどちょっと嬉しい

 太陽が天頂で大地を例外なく焼いている時間。特に季節が夏ともなればその威力は耐え難いものがあり、この時間帯は日の当たる場所での作業を自重するように勅命が下るほどだ。もっとも、夏以外で太陽が天頂に昇ることはないのだが。
 陽光を遮るものがない草原で、鳥の羽を持った彼女は暑さにへばっていた。その頭は地面に直接座る人物の膝に預けられている。
「おいおい大丈夫かよ。だからあんまり無理すんなって言ったのに」
 頭上からの言葉には純粋に心配の感情しか込められておりず、いつものようにからかったり鳥頭と馬鹿にする雰囲気はない。頭を預けている人物はその手に持った扇で風を送ってくれる。それが気持ちよくて、あまり良いとは言えない現状がずっと続けばいいと思ってしまう。
「うん・・・・・・ちょっと油断してました」
 屋外での仕事も今日で5日目。特に問題がないからと調子に乗っていたのは否定できない。
 そもそも、勅命が出ているにもかかわらず、こうして屋外で作業を命じられている時点で自分たちの種族の立場の弱さを実感する。
 それでも自分はまだ雇い主に恵まれた方だと思っている。無理はしないように注意してもらえるし、時折こうして労いの言葉をかけてもらえるからだ。
 ひどいところになると倒れてもそのまま放置で次の日には冷たくなった姿で発見される、ということもあるらしい。
 住んでいた巣を撃ち落とされ、売り飛ばされた時には不安で空を恨めしく思った事も一度や二度ではない。それでも、こうして意識ある生き物として扱ってもらえるだけ自分はまだ恵まれていると思う。
「ん・・・・・・もう大丈夫です」
 心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる主人に微笑みかけ、草原から飛び立つ。
 空から見下ろすと、草原の中でこちらを見上げる主人と目が合い、彼女は残りの時間も頑張ろう、と翼を一層力強く羽ばたかせた。

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