季節の移り目

 朝起きると、今日はいつもより少しだけ暖かいな、と思った。
 テレビをつければ、やはりそういう旨の内容を天気予報で放送していた。
 そうはいっても日が沈むとやはり少し肌寒くなるらしい。
 ならばいつもと着込む枚数を変える必要は特にないな、と思い、朝食を腹に収めスーツに着替える。
 初夏のこの頃ならまだスーツを着ることに抵抗がないからいいのだが、本格的な夏になってしまうとスーツに袖を通すのが辛くなる。
 そんなことを思っていると、支度が整ったので家を出た。

 会社までは電車を使わない。
 これが暑すぎたり寒すぎたりすると家を出た瞬間に心が折れ、公共の交通機関を使ってしまうのだが、初夏の頃の暑さは苦痛になら無いので、家から会社まで歩いていく。
 視線を上げれば、薄暑を楽しむかのように少し薄手の人がパラパラと見受けられる。
 季節の移り目を目にしたようで少し気分が良くなり、会社に向かう足がすこしだけ早まっていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?