第27回 ポリスアカデミー (1984 米)

 差別問題でアメリカンポリスの威信が失墜しようとしています。私は子供の頃はアメリカは警官が黒人を理由なく撃っても許される恐ろしい国だと思っていたものですが、アメリカの人権意識も進歩したという事なのでしょう。

 しかし、理由はどうあれ争い事は嫌なものです。まして国家の治安を司る警察官の不祥事で暴動が起きるなど、本来あってはいけない事です。男らしい警官をこよなく愛した水野晴郎先生は草葉の陰でさぞや哀しんでおられることでしょう。

 一方日本はというと、この何年もコナンとドラマのSPばかりやっていた『金曜ロードショー』が突然気合を入れたラインナップを放送し始めたというので国民に明るい話題を提供し続けています。

 これを読んでいる皆様も久しく放送されなかった『天使にラブソングを』『バックトゥザフューチャー』をご覧になったのではないでしょうか?

 しかし、私は不満でなりません。かつてはお盆に必ず放送されていた『ポリスアカデミー』がついにラインナップされなかったからです。

 水野晴郎先生と言えば長年金曜ロードショーの映画解説を担当し、私のような古い映画好きにとっては金曜の顔というべき存在でした。先生が最も愛し、自身のコレクションまで持ち出して熱心に解説してくれたのが他ならぬ『ポリスアカデミー』だったのです。

 アメリカのある街が警察学校の入校規定を一切撤廃し、全ての希望者を受け入れるようにした所、とんでもない連中が集まってしまい、案の定珍騒動が起きるというコメディです。

 無駄にキャラ立ちした警官たち、予想も期待も裏切らない安定した面白さ、ちょっとは考えさせられるエピソードも盛り込み、娯楽映画として必要な物はすべて詰まった本作はシリーズ化し、実に7作も作られました。

 上手い具合に黒人差別に纏わるエピソードも入っています。こういう時こそ放送すべき作品ですが、放送される気配がないので私が勝手にやります。ない物は作るのがBLの精神なのです。

ポリスアカデミーを観よう!

執筆時点でNetflix、U-NEXTで配信があります。Amazonでも有料配信があります。

真面目に解説

土曜午後のテイスト
 このシリーズは分かりやすい作りになっています。警官(候補生)達は皆確固たるキャラクターを築いており、それぞれ出てきたらやることが想像が付いてしまいます。だからこそ安定して面白いのです。

 全く同じ方法論で作られたコメディが我が国にもあるのにお気づきの方もおいででしょう。そう、吉本新喜劇と全く同じ構造になっているのです。お約束を楽しむ映画です。

 そして役者も他にこれといった代表作の無い人が多いのが特徴です。金のかかったシーンもほとんどありません。つまりとっても低予算です。

 今作は製作費わずか450万ドルで8100万ドルもの興行収入を記録しました。これは何本も作られるのは当然です。健さんの任侠映画のテイストも入っています。

 シリーズが多い事もあり、昔の洋画の二本立てには本シリーズがよく入っていたのを今でもよく覚えています。一本目の出来が悪くても、ポリスアカデミーはまあ面白いだろうという安心感がありました。二本立ての妙味というものです。


マホニー座長
 警察学校の入校規定が廃止されたことから、絶対に警官になれないはずの人間が警察学校に集う所から映画が始まります。

 主人公のマホニー(スティーヴ・グッテンバーグ)は警官になるつもりはありませんでした。父親は警官でしたが、むしろ警察の世話になってばかりのアナーキーな野郎です。

 駐車係の仕事をしていて横柄な客の態度に怒って車をぶつけた咎で警察の世話になり、父の親友であるリード警部に刑務所に入る代わりに警察学校での修行を命じられ、嫌々入校する羽目になります。

 逃げたら刑務所と脅されているので、マホニーはそれなら向こうから追い出してくれるようにガキのような悪戯を繰り返します。マホニーと愉快な仲間達が悪戯を繰り返しながらいつの間にか手柄を立てていく、この映画の内容はそれだけです。


ジョーンズ猫八

 マホニーは警察署で風変わりな男に出会います。自称医学博士のジョーンズ(マイケル・ウィンスロー)です。

 この人は90年代初頭を知る人は見覚えがあるのではないでしょうか?『レーサー100』のCMの黒人の方が通りが良いはずです。

 この人の芸は声帯模写。テレビの素人隠し芸大会に出場して今作で世界的な知名度を得るに至りました。どうして捕まったのかマホニーに聞かれるや機銃掃射で署内をパニックに陥れちゃいます。ようはアメリカの江戸家猫八です。

 マホニーはジョーンズが気に入ったらしく、警察学校に行くならジョーンズを連れにと要求して聞き入れられ、連れて行ってしまいます。ついて行っちゃうので風変わりです。


アホのファックラー
 かくして警察学校に続々変な連中が集まってきます。特に強烈なのはファックラー(ブルース・マーラー)でした。

 歩いているだけで何かにぶつかる病的なドジなので奥さん(デブラリー・スコット)は必死に止めますが、何故か強固な意志を持って警官になるべく車を走らせてしまいます。

 奥さんは車のボンネットにしがみついて阻止しようとしますが、ファックラーは構わず車を走らせて警察学校へと向かいます。まあ、そういう映画です。


使い捨て要員
 レギュラーとしてずっと出続ける奴が居る一方で、一回限りでお役御免となる使い捨ても居ます。

 写真屋だったのに街の不良に屋台ごと川に放り込まれて復讐の為に警官になったマザコンのバーバラ(ドノヴァン・スコット)、常に女を複数人侍らせているモテ男のマルティン(ンドリュー・ルービン)といった面々です。見せ場はあったのに次回以降お呼びがかかりませんでした。

 最たるものはマホニーの彼女要員です。彼女たちはストーリーに特に直接影響を及ぼさず、その回限りで使い捨てられるコンドームです。

 その代わりちょっと大物がキャスティングされます。今作の気まぐれで入校したお嬢様カレンを演じるのはキム・キャトラルは『セックス・アンド・ザ・シティ』のサマンサです。ラジー賞女優でもあります。

 もっとも、時系列を考えると今作では全くのコンドーム扱いであった事は明白です。ニューヨークを登場人物に入れるほどの存在意義もありません。


マッドポリス84
 警察サイドも大概な人達が揃っています。金魚とゴルフカートをこよなく愛するラサール校長(ジョージ・ゲインズ)からして人格者ではありますがどうにも間が抜けています。

 体格の良い白人男性しか採用されなかった時代を懐かしむ保守で堅物のハースト本部長(ジョージ・R・ロバートソン)は下品な皮肉を連発。水野晴郎先生はそういう警察官のマッチョなところが好きだったのでしょうけど…

 教官で肉食女子のキャラハン(レスリー・イースターブルック)は事実上のメインヒロインかもしれません。怖い代わりに面倒見もよく、シリーズを追うとレギュラー化します。

 特に美味しいのは鬼教官要員のハリス警部(G・W・ベイリー)です。『クローザー』で見せた有能ぶりや何処へやら、意地悪な割に間抜けでひたすら候補生に振り回される役回りです。

 そしてそんな体制側にすり寄る候補生のブランクスとコープランドはBL的に美味しいので詳しい事は後に譲ります。


黒人だってアメリカ人
 今作は柄にもなく人種差別の問題が盛り込まれていますが、その実黒人候補生もちゃんと警官になれるし見せ場が十二分に用意されています。こういう映画でこそ本当の平等が描かれるのは皮肉な話です。

 気弱で鈍臭いおばちゃんのフックス(マリオン・ラムジー)はハリスにいじめられていましたが、オチ要員としてシリーズに欠かせない人物となりました。

 私が大好きなのが2メートルの男ハイタワー(ババ・スミス)です。巨体と馬鹿力が芸です。それもそのはずで演じるスミスはかつてはNFLのスタープレイヤーでした。アメフト好きの人には「ネイマスの予告勝利で負けた方の選手」と言えば通じます。

 彼は事実上のもう一人の主人公であり、BL的にも非情に美味しいので覚えておいてください。


14週間の不思議
 かくして候補生たちは警官となるべく14週間の訓練を受けます。たった14週間で警官になれるような国だからあんな事件が起こるのではないかと不安になります。ちなみに日本は半年から10か月給料付きで仕込んでくれます。

 マホニーは教官のふりをしてカレンから電話番号を聞き出したり、バーバラを罠にはめたりと悪戯を繰り返しますが、なかなか退学にはしてもらえません。

 マホニーはジョーンズと同室にしてもらうように頼みますが聞き入れてもらえず、タックルベリー(デヴィッド・グラフ)という男と同室になります。

 元警備員の軍隊オタクで、前の職場でサプライズパーティーに驚いて銃を乱射し、学校にも銃やナイフを無数に持ってきていている一番アメリカンポリスっぽい男です。彼についてはシリーズを追うとBL的に美味しい事実が判明します。

 一方、マルティンにはめられて頭を坊主にする羽目になったブランクスとコープランドは根性をハリスに買われ、出来の悪い候補生をふるい落とす策略に協力を約束させられます。かくして二人は新しい世界に足を踏み入れる羽目になるのです。

 マホニーは講義中にジョーンズに偽の校内アナウンスをやってもらって校長室へ踏み込み、ラサール校長に退学処分を直談判しますが、リード警部から特に頼まれているので退学はできないと言われてしまいます。


お色気は欠かせない
 娯楽映画にはお色気が欠かせません。お色気を一身に引き受けるのが巨乳のキャラハンと色男のマルティンです。逮捕術の訓練で巨乳のキャラハンに組み伏せられて大興奮する野郎ども。

 そしてマルティンが女を連れ込んで乱交パーティーに及んでいる隣室でキャラハンは下着で筋トレです。子供に見せるとセクシャリティに深刻な影響が出そうです。一方カレンはこの方面で身体を張りません。

 その頃マホニーは酒を飲みながら女性候補生のシャワーを覗いてお楽しみ中です。ハリスに見つかって逃げ出しますが、ハリスも覗こうとして見つかり、大恥をかいてしまいます。

 ハリスは怒ってリード警部に電話してマホニーを退学させようとしますが、マホニーはというと窓の外を通ったカレンと窓越しにいちゃついて、退学できないならそれでもいいかと態度を軟化させています。

 煮え切らないマホニーに「俺をなめるなよ」とハリスはおかんむりですが、マホニーは「舐める女もいるよ」と下ネタ全開です。


お待ちかねのブルーオイスター

 やがて初めての休暇がやってきます。ハリスはマホニーが候補生を集めてパーティーを開くことを察知し、弱みを握るべくブランクスとコープランドにバーバラを脅させてパーティーの会場を聞き出させようとします。

 マホニーはバーバラがハリス側に脅されたことを見抜き、「ブルーオイスター」というバーでパーティーをやると嘘をつきます。

 ブランクスとコープランドがブルーオイスターに行ってみると、そこにマホニーの姿はなく、レザーファッションのマッチョな野郎どもばかり。そう、ここはゲイバーです。

 一方候補生たちはマルティンが集めたと思しきお姉ちゃんたちと近所の海岸でお楽しみ中です。タックルベリーが柄にもなくサックスなんて吹いちゃって大騒ぎです。ハイタワーが元は花屋だった事も語られます。

 一方ブランクスとコープランドはハードゲイと「オリーブの首飾り」を踊らされて別の意味で大盛り上がりです。古い人にとってこの曲は手品ではなくホモのテーマソングなのです。

 海岸の方も脱ぎだす姉ちゃんも現れてタックルベリーも思わず演奏の手を止める盛り上がり様です。そんなどさくさにマホニーとカレンはキスまで言っちゃいます。

 ブルーオイスターはチークダンスに移行しています。ブランクスとコープランドのどこか諦め切った表情の分析については後に譲ります。


色男はつらいよ
 訓練はどんどん進んでいきますが、そんな中でマルティンに事件が起きます。自分の部屋と間違えてキャラハンの部屋に入ってしまったのです。

 いちゃもんを付けてマルティンの服を脱がせ、自分も脱いで襲い掛かるキャラハン。夜明けにフラフラしながら庭を歩くマルティンの姿を観れば、何が起きたかは明白です。

 困ったマルティンはマホニーに相談します。たった一人の女に無茶苦茶にされたことをマホニーは驚きますが、マルティンはこれは恋だと心揺れています。しかし、マルティンは今作限りでお役御免。キャラハンは新しい恋に生きることになるのです。


本丸を攻めろ!
 マホニーは退学になってもカレンとはやっていけると踏んだのか、大胆にもラサール校長に悪戯を仕掛けます。

 視察が来るというので講演の為に演台に立つ校長。演台の下にはマホニーとどこからか連れてきた娼婦が隠れています。下から「攻撃」されて講演を無茶苦茶にされた校長はハリスにマホニーの排除を命令します。

 しっかり気持ちよくなりつつも悪い悪いことをされたと怒る校長。ハリスは「誰に?」と聞かれますが校長は口ごもってしまいます。マホニーだけ姿を見せて娼婦は隠れたままだったのです。こういうナチュラルなホモネタがたくさん入っているのがこのシリーズの特徴です。


後ろから前から
 訓練が進み、どうにか候補生たちも成長して警官らしくなっていき、本物の警官とパトカーに乗って見習いをする訓練に突入します。

 ハリスのパトカーに乗せられたマホニーですが、この男は気まぐれなので本気で警官になる決意を語ってしまいます。面目を潰されそうになって怒るハリス。

 タックルベリーは木から降りれなくなった猫を「どうにかして」という通報に猫を射殺して応対し、フックスは交通整理に手間取り、ハリスはそのせいで渋滞に捕まってますます怒り出します。

 そして近くを通ったバイクを徴発して渋滞を抜けようとしますが、車にぶつかって馬の尻に頭から突っ込んでしまいます。マホニーの「獣医を呼べ」というセリフで何が起こったか察しがお付きでしょう。

 ハリスは新品の帽子を拝領して口止めをしますが、他の候補生(キャラハンまで!)はにやけ顔で、ジョーンズは馬の鳴きまねまでしちゃいます。既に話した後なのです。下ネタが安定して面白いのは万国共通です。


憂鬱の巨人
 その夜、マホニーの元に深刻な表情のハイタワーが訪ねてきます。明日はパトカーの運転講習だというのに、ハイタワーは車の運転を12歳以来したことが無いのです。

 マホニーは友達の頼みだからとコープランドの車を勝手に借りて練習します。ハイタワーは身体がデカすぎて運転席に収まらず、運転席のシートを外して後部座席に座って運転するという荒業で対処しちゃいます。

 前の車のオカマを掘ってパトカーに追いかけられますが、ハイタワーは流石にプロフットボーラーなので運動神経が良く、パトカーをクラッシュさせてまき、講習もパスします。

 ところがフックスはのんびりした性格なので運転ものろく、最後にコープランドの足を轢いてしまいます。

 コープランドの車のナンバープレートはレベル・フラッグ(南軍の旗)があしらわれていました。そんなコープランドが「黒豚」と言ってはいけない事を言ってしまいました。

 ハイタワーがブチ切れ、コープランドが逃げ込んだパトカーをひっくり返し、そのまま学校を去ってしまいます。


アメリカ人の知性
 身から出た錆とは言え、コープランドは車も破壊されて散々です。食堂でマホニーを「マホモー」と小学5年生レベルのセンスで罵り、喧嘩を吹っかけます。

 これに今度はバーバラがブチ切れます。トレーでブランクスをぶん殴り、そのまま乱闘に突入です。最初に手を出したバーバラが退学になりそうになりますが、マホニーが自ら罪をかぶって退学となります。

 一方見習い中のファックラーは、先輩警官から貰ったリンゴを窓から捨て、それが通行人に当たったことから喧嘩が始まり、町は暴動になります。大喜びで店先の商品を奪い取り、神輿が通った時の江戸っ子のように大喜びで街に繰り出す市民たち。

 マホニーが荷物をまとめているところへ暴動の報が届き、警察学校にも動員がかかります。銃が撃てると大喜びのタックルベリーと比べ、マホニーは複雑な表情です。

 正規の警官の補助で交通整理に当たる予定でしたが、ラサール校長が番地を間違えて危険地帯へと送り込まれたことで映画は佳境へと突入します。


芸は身を助ける
 ここからは各人が持ち前の芸をフルに発揮して見せ場を作ります。テレビをどこからか失敬して怪しい日本知識で日系人をナンパするマルティンでしたが、群衆に見つかって大騒ぎとなります。

 ラサール校長はアホですがいい人なのでパトカーで助けに来てくれましたが、マホニーとジョーンズともどもパトカーを囲まれてしまいますが、ジョーンズの機銃掃射で群衆を追い散らして逃げ出します。

 ブランクスとコープランドは金網越しに拳銃を振り回して暴徒相手にイきりますが、金網というのは大抵切れ目があります。暴徒(ダグ・レノックス)に拳銃を奪われ、丸腰で逃げ込んだ先はブルーオイスターでした。叫び声とオリーブの首飾りが響きます。

 バーバラは逃げ回っていましたが、そこで自分を川へ放り込んだ不良達と遭遇します。銃を使うことなく、徒手空拳で見事に不良たちを撃退します。しかし彼も今回限りでお役御免です。

 ブランクスとコープランドから拳銃を奪った暴徒にハリスが人質に取られてしまいます。ビルの屋上に立てこもって銃を乱射する暴徒。カレンは孤立してピンチです。一方フックスは裏口から屋上へと走ります。

 マホニーは非常階段から屋上へ忍び込み、その間にカレンを逃がしますが、ハリス共々人質に取られれて絶体絶命です。そこへ駆けつけたのが花屋に戻っていたハイタワーでした。

 暴徒に「手伝いたい」と申し出て、すきを見て暴徒を殴り倒して銃を奪い取ります。階段から転落した暴徒はリミッターを外したフックスが「動くなクソッタレ野郎」という決め台詞で確保です。そう、彼女はオチ要因なのです。

 一方タックルベリーはパトカーに頭を打ち付けて悔しさを爆発させます。彼は一発も撃てなかったのです。

 かくして手柄を立てた候補生たちは感動の卒業式を迎えます。母親と抱き合って喜ぶバーバラ、キャラハンの実家へ挨拶に行く約束を取り付けられるマルティン。

 マホニーとカレンは物陰で濃厚なキスをしているところをハースト本部長に見つかってオカマと罵倒されますが、基本的に良い人なのでカレンが女だと知ると頑張れと粋な言葉をかけて去っていきます。

 マホニーとハイタワーは勲章を貰い、スピーチをやらされます。ハイタワーはありがとうの一言で済ませましたが、マホニーの番になるとファスナーの下りる音が。ラサール校長の仕返しで映画は幕を閉じます。

BL的に解説

魅惑のブルーオイスター
 それ自体の是非はともかく、公開当時はまだゲイをギャグのネタに使う事が広く許容されていた時代でした。あのプロ野球選手がやらかしてウホッないい男が流行る以前、日本人のゲイのイメージは長きに渡って保毛尾田保毛男とブルーオイスターだったのです。

 スタッフの伝手で毎回本物のハードゲイが集められ、シリーズのキラーコンテンツとして、ひいては象徴として映画史に名を残しました。

 ブルーオイスターがゲイのアイコンなのは何も日本に限った事ではありません。同性愛者を弾圧することで悪名高いロシアのプーチン大統領が個人的に持っている島に、ゲイの有志によって掘っ立て小屋のブルーオイスターが作られたニュースは世界に衝撃を与えました。

 一応LGBTの端くれとしてフォローを入れておくと、今作の影響でゲイバーにノンケが入ると掘られると思っている人をよく見かけますが、それはとんでもない誤解です。やんわり退店を促されてお終いです。

 その代わり、冷やかすつもりで入るのも絶対にやめて下さい。それは迷惑行為に他なりません。それがお互いの為です。


マホニーマバイー説
 最近一部の勢力が必死に火消しにかかっていますが、水野晴郎先生が淀川長治先生と同好の士であったという疑惑は古くから囁かれるところです。

 火の無いところに煙は立ちません。こんなホモ臭い映画を好んだのだって根拠としては十分過ぎるます。

 マホニーは女にモテますが、男にも実にモテます。候補生達は他の人には出来ないような相談をいちいちマホニーに持ってくるのです。

 大体なんでブルーオイスターを知っているのかという話です。ミックスバーと言ってノンケの客も受け入れるゲイバーもありますが、ブルーオイスターは明らかに硬派なゲイバーです。

 マホニーは普段はレザーで決めてあの店に出入りしているのではないでしょうか?そして出口を入り口として使用しているのです。


リード警部×マホニー
 今作のカップリングを考えて見ても、マホニーは黒人男が好きに違いありません。父の親友であるリード警部からして黒人です。

 ゲイの性癖は少年時代のヒーロー像に決定付けられることが多いのです。パパと一緒に悪と戦う強く逞しいリード巡査がマホニーの少年時代のヒーローであったに違いありません。

 そして警察官にゲイが多いのは万国共通です。子供の頃のマホニーはうかつに教会に行かせるのも危険な美少年であったことが容易に想像が付きます。リードがソドミー法を冒したとしても何ら驚く事はありません。

 だからこそリード警部は悪さを繰り返すマホニーをいちいち庇ってくれるのです。マホニーを警察学校に入れたのも、リード警部にはよりお近付きになる好機と映ったはずです。

 狙い通りマホニーは父親に負けない立派な警官となりました。もう彼の入り口は警部の物です。今夜はブルーオイスターでフィジカルなお祝いです。


マホニー×ジョーンズ
 マホニーの黒人好きはジョーンズへの態度からも伺えます。カレンへの強引なアプローチを観ればマホニーの恋愛観は一目瞭然です。そして気付くはずです。ジョーンズへも同様の方法論を行使していることに。

 たまたま警察署に居合わせただけです。なのにマホニーはジョーンズと一緒なら警察学校に行くと条件を付けるのです。そして無理矢理ジョーンズを引っ張って行ってしまいます。

 そしてジョーンズと同室にしてくれと頼みます。警察学校で同室。これはもうBL的には二人は手錠より固い絆で結ばれるのに三日とかからないシチュエーションです。

 下の口をいじったらジョーンズの上の口はどんな声を出すのか?マホニーが興味を持つのは無理からぬ話です。かくしてジョーンズの入り口にマホニーは機銃掃射をかますのです。


マホニー×タックルベリー
 マホニーは人種差別をよしとしない男なので、白人も当然ストライクゾーンです。タックルベリーと同室になった以上、マホニーの魔手は彼にも及ぶのです。

 しかし、今回このカップリングについては多くを語りません。彼らのジャムセッションは次作で燃えるのです。その時に取っておきます。


マホニー×マルティン
 マルティンはキャラハンに惚れてしまった相談をマホニーに持ち掛けます。何故マホニーにそんな相談を持って行ったのか?愛していたからです。

 女に飽きて男に走るというのは二丁目ではよくあるコースの一つです。マルティンもそろそろ男を覚える頃合いです。

 マホニーはマルティンの相談をちゃんと聞きつつ、彼のラテン訛りが時々消えることに気づきます。マルティンは本当はラテン系ではないのに、モテる為にキャラを盛っていたのです。

 マルティンはマホニーの推理に観念して本名がマーティンであることを白状してしまいます。二人だけの秘密です。自分から弱みを握られに行きました。誘い受けです。

 秘密をばらされたくなかったらと言われれば、マーティンは躊躇うことなくマホニーに入り口を差し出すのです。前はキャラハン、後ろはマホニー、愛のシベリア超特急が薔薇の咲き乱れる荒野をどこまでも進んでいくのです。


マホニー×ハイタワー
 アメリカのゲイにとってフットボーラーは憧れです。まして黒人好きのマホニーがNFLのスターと引き合わされたらどうにかしようと思うのは当然です。

 ハイタワーもマホニーを深く信頼しています。明らかに似合わない花屋というちょっと人には言いにくい稼業もマホニーにカミングアウトし、車の運転も何故かマホニーに相談に行きます。

 そもそもハイタワーは怪しいのです。キャラハンのおっぱい格闘技訓練にもハイタワーだけ興味なさげでした。いい歳なのに女っ気もありません。彼はゲイであったのではないでしょうか?

 花屋という女性的な商売も説明が付きます。そして警察はゲイにとってはパラダイス。そしてゲイ同士はそうと言わなくても何となくわかるものです。ハイタワーはマホニーがお仲間なのを察していたのです。かくしてハイタワーの花瓶に薔薇の花が咲き乱れるのです。


マホニー×バーバラ
 マホニーの愛するハイタワーを退学に追い込み、マホニーをマホモー呼ばわりして罵倒したコープランドに手を下したのはバーバラでした。気弱ないじめられっ子体質のバーバラがここまでした。健さんの殴り込みに匹敵することです。

 バーバラもマホニーが好きだったのです。自身とは真逆の快活で勇気ある悪戯者のマホニーは、バーバラにとって一生忘れることのできない光なのです。

 そもそもバーバラはマザコンです。マザコンにゲイが多いのはもはや一般常識といってもいいでしょう。マホニーに悪戯されるのも、コープランドやブランクスにいじめられるのも彼にとっては快感なのです。

 彼はマホニーとの愛を通じて男となり、不良たちを殴り倒すほどのつわものに変身します。愛は豚をライオンに変えるのです。


コープランド×ブランクス(リバ可)
 二人は典型的南部のアホな白人です。ああいう手合いは差別と戦争とアメフトさえあれば満足なのです。

 そしていじめっ子のレイシストである彼らには天罰が下ります。ブルーオイスター行きです。明らかに掘られています。

 刑務所などで掘られて目覚めるのも二丁目では王道です。彼らは心に傷を負い、男の良さを無理矢理教え込まれ、傷口を舐め合う仲になるのです。この場合傷は勿論入り口に出来ています。

 あるいは、二人もマホニーが好きだったのではないでしょうか?薔薇族の編集長である伊藤文学氏は「ホモのホモ嫌い」という名言を残しています。

 実際ホモフォビアが実はゲイというのはよくある話です。彼らがホモフォビアになる理由は自身がゲイである事を認めたくないという抵抗、カミングアウトしたゲイへの羨望など色々歪んだ心理があります。

 つまり彼らは本当はマホニーに処女をささげたかったのです。しかし、実際はブルーオイスターの野郎どもに弄ばれて汚れた身体になってしまいました。南部人は実は結構身持ちが固いので、これは耐え難い事だったに違いありません。

 マホモー呼ばわりも、ブルーオイスターへ送られた事や、車を壊されたこと以上に、マホニーのハイタワーへの愛が二人に見えてしまったことが原因ではないでしょうか?好きな子に意地悪したくなる小学5年生の心理です。

 典型的ホモのホモ嫌いと噂の元都知事が敬愛する文豪の切腹に際し、スピリチュアルな人に「お前が先生を殺した」と恨み言を言い、弟の軍団を「あいつらは精神的ホモ集団だ」と怒り狂いながらも選挙のたびに応援に駆り出していたのにも似ています。

 気象予報士の息子はそんな父親の姿について怒りながらも羨ましそうだったと嫌なリアルにあふれた証言を残しています。とにかくこれで皆様もホモフォビアも腐転換する技能を手に入れました。差別はいけませんよ。

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 私が警察の世話にならないうちに是非

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