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茶湯からの、便り 十

梅が咲き
早咲きの桜が咲き
春一番の風が吹いて
空気が少し和らいできた

今日は吊り釜
天井から吊るされたお釜が
ゆらゆらと静かに揺れる
炭で温められたお釜の蓋を開けると
そこからぐらゆらと煙のような湯気がたつ

少し俯瞰したところから
美しくお茶を点てる姿を眺めながら
ふと目に入るお茶の緑の鮮やかさに心を奪われる
ぐっと濃い緑色なのに
人掬いの茶杓の先が明るく照ってみえる
茶によって緑の色が異なるのだろうな
比べて見てみたいなと色への欲が湧く


気温が少しずつ上がり、雪が溶け出して
山から沢に清らかな水が流れてくる
つくしが頭を少し出して
そよそよと吹く春風に
立髪をゆらして馬がかけていく
ふと馬の歩みがとまり
海辺に足跡がぽつりぽつり
裾に砂をつけながら
薄い桃色の貝が指でつままれ
袂に落ちる
また走り始めた馬を
春のやわらかな日が照らす
風にのって桃の花びらが舞っている
頬を赤く染め
庭の芽吹きを眺めながら帰りを待つ背中にかかる
綺麗な黒髪がゆれる

平安時代に頭の中で時空旅行をしていた



なんか春のにおいするなぁ
春のにおいします?
おお。なんか春のにおいしてるな、いま

ちょうど春の始まりに想いを馳せながら歩く隣を
自転車にのった2人組が
春を連れて通り過ぎた

3月
もう、春ですね

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