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茶湯からの、便り 七

普段の景色が少し違って見える
見えなかったものが見えるようになる
聞こえなかったものが聞こえるように
香らなかったものが香ってくるようになる
それが私にとっての茶の魅力のひとつ

公園に鮮やかな桃色が見えた
桃の花かな
立春もすぎ
今日はぽかぽかと暖かい
少しずつ春のはじまりがみえる

それでもまだまだ冷える季節
掛け軸には 紅炉一点雪 とある
木造平家の、壁や屋根があるようでないような家の中
赤々と灯る囲炉裏の中にひらりと風にのって雪がやってくる
その雪は炭火にあたり、すっと姿を消す
先生に導いてもらいながら
五文字から昔の日本の冬を想像する

沸かしたての熱い湯で点てた一服の茶が
腹に流れていくのを感じながら
むくむくとたちあがる湯気と松風を聴きながら
寒さの中にある暖かさの幸福を想う

今日はゆっくりとお茶を点てている姿をながめ
その時間に浸ることができた
浸りながら想像をめぐらす
冬の枯れた木々の上にぽってりと雪が降り
冷えた海はすーっと波を持つ
白の中に浮かぶ、茶の鮮やかな緑に
植物の芽吹きを待ち遠しくもおもう

他人の手をゆっくりと見つめる
美しさにはっとする


円と線を上手に使い分けたい
おだやかなやわらかさと
ぴっとぱっとした凛々しさと
どちらもがそこにある

そしてそんな余計なことを考えながら
今日もお手前を間違えるのでした…

また来週

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