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のんびり地学基礎 #33 火山と防災

日本には火山がたくさんあります。
それは、
東からは太平洋プレートが
南からはフィリピン海プレートが
日本付近で沈み込んでいるからです。

これらの海洋プレートは
水を抱えながら沈み込みます。
地下100㎞より深くなってくると
抱えていた水を吐き出します。
すると、吐き出された水によって
マントルが溶けだし、
マグマが作られます。

そのマグマが噴出するまでには
どんな経路をたどるのでしょう?

まずは、マグマは浮力によって
おおむね地下15~5㎞あたりまで
上昇してきます。
マグマは周りの岩石と比べて
軽いのです。

マグマは上昇し、
周りの岩石とちょうど重さが
釣り合った場所で止まります。
地域による
地殻の厚さの違いで
釣り合う深さは5㎞だったり、
15㎞だったりします。

釣り合って停滞するので
マグマがそこで溜まり始めます。
マグマ溜まりです。

さて、そこから地上まで
どうやって昇りましょうか?

それはマグマ溜まりに、
下からどんどん
熱いマグマが加わりますと、
マグマの発砲が始まります。

炭酸飲料を振ると
勢いよく飛び出しますよね。
それと同じで
ガスが抜けて発泡したマグマに
圧力がかかって、
勢いよく地上まで吹き上がります。
これが噴火です。

噴火の性質の違い

①、水蒸気噴火

マグマが全く顔を出さない、
水だけの噴火があります。
水蒸気噴火です。

水蒸気噴火

マグマの熱によって
地下水が間接的に熱せられると
水が気化をして、
高温・高圧になった
水蒸気が爆発します。

水蒸気噴火は、
火山としては
規模が小さいのですが
人間にとっては
危険であることに
変わりはなく、
近くにいれば
多くの被害がでます。

2014年9月に起こった
長野県と岐阜県の
県境にある御嶽山の噴火は、
水蒸気噴火でした。

運が悪いことに、
9月で観光シーズンだったため
登山客がたくさんいました。
火口付近にいた方、58名が犠牲に
なりました。
行方不明者も5名おられます。

②、マグマ水蒸気噴火


マグマと水が
直接出会うことで
水と一緒にマグマ物質も
噴火するものが
マグマ水蒸気噴火です。

マグマ水蒸気噴火

マグマが
地下水や海水などに触れると
大量の水蒸気が発生し、
爆発的に噴火します。
マグマと水が
直接触れているので、
噴出物にはマグマ由来の
物質も含まれています。

てんぷら油に水が混ざって
爆発するようなものですね。

マグマ水蒸気噴火の煙は
独特な景色です。
コックステイルジェット
(雄鶏の尻尾のような煙)と呼ばれる
黒っぽくギザギザしたような形の
土砂まじりの噴煙を出します。
水蒸気の噴出後に、
マグマがいよいよ出てきたぞ
っていう時の煙だそうです。

↓ 1986年1月、福徳岡ノ場 マグマ水蒸気噴火


③、マグマ噴火


マグマが噴き出す噴火を
マグマ噴火といいます。
マグマの性質や
噴火の形態によって
細かく分類され
名前がついています。

マグマ噴火の種類については
のんびり地学基礎 #23
火成岩②[火成岩の分類]
で触れております。


噴火の予兆

私たちは、
火山のそばで
生活していたり、
観光で登山をしたり
火山と接する機会は
少なくありません。

私たちは、火山噴火の
兆しをつかむことは
できるのでしょうか?

・火山性地震が起こる

地下で
マグマや熱水が
周りの岩石を押し割ることで
引き起こされる地震を
火山性地震といいます。

火山性地震

・火山性微動

地下でマグマや熱水が
揺れていることにより
引き起こされる震動を
火山性微動といいます。

揺れが細かく、
連続的に続く震動です。
何時間も震えている
場合もあります。

火山性地震も微動も
マグマが活動している
という証拠です。
一見、落ち着いてる様子でも
火山性地震、火山性微動は
観測されています。

このまま噴火につながるものかを
見定めていく必要があります。

・山体膨張

地下からマグマが
沸き上がったり
蓄積したもので
山が膨張してしまう
現象です。

噴気がかなり
強くなってきている証拠です。
膨張が顕著になってきたら、
大きい爆発を伴う
危険な噴火の恐れがあります。

火山研究に携わる方々は
精度の良い地震計による
観測データをもとに、
正確な情報を私たちに
提供してくださいます。

【注意】
どんな場合においても
予測できないことはあります。

噴火がもたらす災害

①、火山ガス

地表に噴出する気体で
噴気ともいいます。
水、二酸化硫黄、
硫化水素、二酸化炭素
などを主成分とし、
火山ガスを吸い込むと、
気管支などの障害や
硫化水素による中毒などに
なる可能性があります。

②、火山灰

直径2mm未満とはいえ
一回の噴火で何万トン以上の
火山灰が噴出します。
それが風に乗って、
火口から離れた
広い範囲にまで降灰します。
農作物への被害、
健康被害、
交通機関への妨げ、
商工業、医療、
私たちの生活すべてに
影響を与えます。

③、噴石(大きな噴石・小さな噴石)

噴火で飛ばされた
防災上注意すべき大きさの
岩石を噴石といいます。

・大きな噴石
概ね20~30cm以上で
風の影響を受けずに
飛び出す火山弾などは、
逃げる間もなく降ってくるため
生命の危険が高く、
注意喚起のために
「大きな噴石」と呼んでいます。

・小さな噴石
直径数cm程度、
風の影響を受けて
遠くまで飛ばされる噴石を
「小さい噴石」と呼んでいます。

小さな噴石でも
火口付近ではアツアツの噴石が
登山者を直撃し死傷者がでます。

④、溶岩流

溶岩が地表を流れ下る現象。
比較的ゆっくり流れるので
歩いて避難できる場合もあります。

⑤、火砕流

火山ガスの中に
火山灰や火山弾など
いろいろ混ざって
ものすごい速さで
火山を流れ下ります。

800℃くらいの高温のガスが
時速300㎞になることもあり、
逃げ切ることはできません。
町を破壊し呑み込み
多くの被害を出す
おそれのある災害です。

⑥、火山泥流

火山噴出物と水が出会い、
地表を流れ下る災害です。

火山噴出物が
池や川に流入したり、
雨が降ることにより、
そこから泥状の流れになって
勢いをつけ流れ下ります。
流速は時速数十kmに
達することがあります。

⑦、融雪型火山泥流

火砕流などが
火山を覆う雪や氷を溶かし、
混ざって泥状になり
一気に流れ下ります。

積雪時の噴火は、
融雪型火山泥流が
起こるおそれがあります。

⑧、ラハール

すでに溜まっていた
火山噴出物が降雨により
流れていく火山泥流を
ラハールといいます。
土石流と同義とする
場合もあります。

噴火が終息したあとでも
大雨が降れば
噴出物が土石流となって
人命を奪う可能性があります。

噴火後に雨が降るときは、
川の近くや谷の出口に
近づかないで下さい。


では私たちは
どうしたら火山の危険から
命を守れるのでしょうか?

火山災害から身を守る


火山にも、
ハザードマップ
山ごとに作られています。

どこがどう危険なのか
噴火の癖、
地形とを合わせて
書かれています。

身近な火山、
観光で訪れる火山の
ハザードマップをぜひ
入手してください。

また、気象庁のHPでは、
各火山の噴火警報・
噴火警戒レベルを確認できます。

〇さんは地震速報だけでなく
「噴火速報LIVE」や
「ラジオ気象台」では
噴火情報も教えてくれています。

次回から
地球の歴史に入ります。
「地球史①」です。

謝辞~星屑の子供たちへ~

「火山と防災」。
まとめたいことが次々に増えて長文になってしまいました。地震も火山も気象も、防災が重要課題です。Geo Radioでは、常にみなさまの安全と防災力の向上を図り、配信して下さっています。ありがとうございます。

Geo Radio「のんびり地学基礎#33「火山と防災」



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