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夢十夜(第七夜)

夏目漱石
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青空文庫より、
夏目漱石「夢十夜」の
第七夜を読みました。

《ふわっとあらすじ》

こんな夢を見た。

大きな帆船に乗っている。
大きな音を立てて波を切って進む。

毎夜毎夜
水平線に落ちていく日を
追いかけるように進むが
決して追いつかない。

舳先では水夫が集まって
帆綱を手繰りながら囃している。

この船はどこにいくのか、
いつ港につくかわからない。
自分は大変心細くなった。
船から身を投げて死にたくなった。

女がしきりに泣いていた。
悲しいのは自分だけではないと思った。

さまざまな国の乗客がたくさんいた。

ある晩甲板で星を眺めていたら、
異人がそばへ来て、天文学の話を始めた。
最後に、神を信仰するかと聞いてきた。
自分は黙っていた。

或る時、サローンに入ったら
若い女がピアノを弾いていた。
近くには背の高い男がいて歌を歌っている。
2人は周りのことにはまるで無頓着だった。

自分はますますつまらなくなった。

そこでとうとう死ぬことにした。
そしてある晩、海に飛び込んだ。

しかしその瞬間、
急に命が惜しくなった。
そう思ったが、もう遅い。

どこにいくのか分からない船でも
乗っているほうが良かったと悟った。

悟ったけれども、元には戻れない。
船は過ぎ去っていく。

自分は、無限の後悔と恐怖を抱いて
なすすべなく黒い波へ落ちていった。


《語句解説》

焼火箸:焼けた火箸、熱した火箸。
帆柱:帆船の帆を張るための柱。マスト。
蘇芳:くすんだ赤色。
かじまくら:船中で寝ること。船の旅。
帆綱:帆の上げ下ろしなどに用いる綱。
更紗:インドが起源の木綿地に多色で文様を染めた布製品[。
   及びその影響を受けてアジア、ヨーロッパなどで
   製作された類似の文様染め製品を指す染織工芸用語。
金牛宮:黄道十二宮の二番目の宮。おうし座。
七星:プレアデス星団。すばる。
サローン:客船の主に上級の船客が共通に用いる、
     休憩、談話などのための大きな部屋。


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音声配信アプリstand.fmにて、
「しんいち情報局(仮)」の
「朗読しんいち」を
担当させていただいています。

しんいち情報局(仮)
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