サクッと読める『Who is Pep Guardiola?』
「美しく勝利せよ」
先生の教えを狂気的なまでに追い求める彼は、決して優等生などではない。
見えない頂を目指し、道のない道を脇目も降らずにただ登る。
周囲が心配しても、彼は止まらない。止まれないのだ。
何が彼をそこまでさせるのか。
答えはただ一つ。
純粋過ぎるフットボールへの愛。
妥協などない。成し遂げた偉業など慰めにさえならぬ。
ただ進むだけだ。
ヨハン・クライフのもとで選手としてバルセロナでプレーした彼は、やはり「ペップ・グアルディオラ」である。
熱量が凄まじく、高身長ではあったものの、決してフィジカルの強くない彼ではあったが、試合になれば多少の削り合いは厭わない。
納得がいかなければ、納得いくまで選手同士で話し合う。間違ったことが嫌いで、ドーピングの疑いをかけられた時も、徹底的に否定し続けた。
そして、バルセロナの後、イタリアに渡り、プレーする。そこではカテナチオという守備の考え方を学びに行ったと考えられている。
彼は、ヨハン・クライフや、フアン・マ・リージョ、アリーゴ・サッキから多くを学んだ。
彼らだけではない。
他種目のスポーツや、チェスの棋士、映画監督、多くの方のアイデアから常に何かを学ぼうと渇望している。
彼は決して発明者ではない。
人から得たアイデアをアレンジし、組み合わせ、そしてそれをチームに落とし込む能力が非常に高いのである。
革新的と思われたメッシの偽9番さえ、サッカーの歴史から見つけ出し、現代用にしたものである。
彼は臆病者だ。
それゆえ、守備の練習には攻撃よりも時間を取る。3点取られても4点取る、といった考えより、無失点にこだわる。
但し、無失点を求めるが、4点を取らなくていいわけではない。残り15メートルまでは連れて行くが、そこからは選手の能力に任せている。
臆病ゆえにボールを離したくない。
常に持っておきたい。
そうして、ポゼッション率が自然と高まっていくのである。
彼は完璧を求め過ぎるあまり、苦しむ。
選手の立ち位置、角度、体の向き。
細かく細かく指摘し、無意識で行えるまで、繰り返す。
日本で行われた昨夏の「マンチェスターシティvs横浜・F・マリノス」は記憶に新しいのではないだろうか。
極東の地のたかだか親善試合でカイル・ウォーカーに指摘し続け、試合後は当時のコーチ、ミケル・アルテタと数十分間におよびピッチ上で話し合っていた。
身振り手振りを踏まえ、熱く口論する二人に胸を打たれた人は少なくないはずだ。
彼は柔軟である。
一見、自分の考えを曲げない、偏屈なところがあるようにも見えてしまうが、そうではない。
そのことは、バルセロナからバイエルン・ミュンヘンに移った時に証明した。
彼は決して教えに来たわけではない。
ドイツサッカーの基準を理解し、バイエルンというチームの歴史を尊重し、選手の特徴を踏まえたサッカーを志す。
そこにペップの要素を加えるのだ。
そこにはお互いにリスペクトがあり、相乗効果をもたらす。
そして現在、シティでは、真白いキャンパスに絵を描くように学んだことを描き続けている。
偉大な歴史があるわけでも、口うるさいOBがいるわけでもない。当初は疑問を抱いていたサポーターさえも、ペップ・シティに心酔しているのではないだろうか。
彼は人との繋がりを大切にする。
シティに来た理由の一つは、友人であるチキ・ベルギスタインらとの約束があったからだ。近年、ビジネス色の強くなってきたサッカー界で、珍しい関係を築けている。
また、ダビド・シルバがプライベートな問題で苦しんでいる時、彼はチームに、ダビド・シルバのために勝つことを要求した。見事にシティは要求に応え、得点を挙げたKDBは『21』と指で作る。
人との関係を大切にする彼だからこそ、チームの規律を乱すことは許さない。
例え、それがエースだろうが、試合に出れず不満が溜まっている選手だとしても、理解は示しても決して許さない。
ただ、要求するだけではない。
選手たちには愛を持って接する。
選手達が批判に立たされるようなことがあれば、自分が表に立ち、庇うことを厭わない。
そうやって信頼関係を築いてきた。
彼はサッカーを発展させる。
ほんの10年前のサッカーと今のサッカーでは、プレースピードも、判断の質も、何もかもが進化している。
その発展へのペップの貢献は少なくないだろう。意図しているかしていないかに関わらず、世界中で模倣され、うまくいかず、改善され、またその対策も生まれ、更に進化していく。
サッカーの成長は止まらない。
物凄いスピードで進化していく。
その中心に彼はいる。
おすすめ本:『グアルディオラ総論』
今回は、本当にざっくり、ご紹介させていただきました。
深くペップの考えを知りたいという方には、タイトルにある通り、私は『グアルディオラ総論』という本をお薦めいたします。
人柄や、トレーニングの考え方、内容、ポジショナルフットボールについて、、、
非常に面白いため、是非手に取って読んでいただけたら、と思います。
読んでいただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願いします。
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