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業務用野菜の現状~業務用きゅうりの特性について~

こんにちは。アグリペディアの村山です。

アグリペディア株式会社では、今後日本の農業を担っていく大・中規模農家にフォーカスした支援事業を行っています。
現在は「販売先のマッチング事業」を主に行っており、業務用野菜の生産者様の支援の一環として、本ブログを開設いたしました。

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今回も引き続き、カット野菜の動向について簡単ではありますが解説していきたいと思います。

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今回は、業務用野菜、主にきゅうりの特性について説明します。

業務用きゅうりの概要

きゅうりは業務用としてサラダやサンドウィッチに使用される他、キムチや漬物、太巻きの具など、様々な用途で使われています。

きゅうりの栽培量は約47万t、うち45%程度が業務用として出荷されています。
野菜全体の業務用需要は60%程度であるため、他と比較すると業務用の需要は少ないですが、今後成長が見込める野菜の1つでもあります。

業務用野菜は市場出荷されている家計消費用と比較して単価が落ちる傾向にありますが、きゅうりは業務用と家計消費用の価格にほぼ差がありません。

業務用きゅうりの特性について

前回の記事では「カットキャベツ」について業務用野菜と生食用野菜の違いを解説しました。
今回はアグリペディアで新たに取り扱いを始めた「きゅうり」を例に、業務用きゅうりにはどのような品質が求められるのかを解説していきます。

下の表に生食用野菜と業務用野菜の特性の違いについてまとめました。

出典:「フードシステムの革新と業務・加工用野菜(H26.8 坂知樹)」より弊社作成

今回はこの表の「商品形態」と「栽培方法」について詳しく解説していきます。

業務用きゅうりの商品形態について

外見重視の生食用野菜と比較すると、業務用野菜は外見はあまり重視されず、「歩留り」が重視されます。
この歩留りとは、供給原料の量に対する製品量の比率のことであり、捨てる部分が少なく、加工に使える部分が多いほど良い原料野菜ということになります。

形質

ここで、きゅうりの加工形態について説明したいと思います。
きゅうりの加工形態には大きく分けてスライスするもの(横に切る)、スティック状にするもの(縦に切る)の2種類があります。
スライスするものは、多少曲がっていてもスライスできますから多少の曲がりは許容されます。
しかし、スティック状にするものは曲がっていてはカットできませんので、曲がりがなく、まっすぐなものが求められます。
また、どちらもある程度大きさを統一する必要があるため、著しい曲がりのもの、尻太果、尻細果等の形状のものは不適となります。

出典 :「品目別・用途別ガイドライン」(H23.3 野菜ビジネス協議会)」より弊社作成

カットキャベツの記事でも説明しましたが、業務用野菜は歩留りを良くするために大型規格が好まれます。
きゅうりであれば生食用は15cm程度のS~Mサイズが基本ですが、業務用では20cm程度M~Lサイズが好まれます。

水分量

また、加工用野菜では水分量が少ないものが好まれます。
これは、カット野菜にする際に水分が多いと萎れてしまい、食感が悪くなるほか、加熱調理をする際にはドリップ(食品から出る水分)が多くなり、味が薄くなる原因になるためです。
特にきゅうりでは実が硬く、パリッとした食感の歯切れの良いものが求められます。
きゅうりの水分量や歯切れに関わってくるのが胎座部です。
胎座部とは種のある部分で、水分を多く含み、柔らかいのが特徴です。

胎座部が大きいきゅうりは歯切れが悪くなるほか、カットした際に種子が落ちてしまうなど、加工には向いていません。
そのため、胎座部の小さいきゅうりが業務用に適しています。

外観

きゅうりはキャベツなどの葉物野菜と違い、皮を剥かずにそのまま加工します。そのため、洗浄しやすく、衛生面で有意ないぼ無し系きゅうりが好まれます。

業務用きゅうりの栽培について

栽培方法

業務用きゅうりは生食用と比べ、5cm程度大きいLサイズ規格が求められることが多いですが、キャベツのように生食用に求められる品質と大きな違いはなく、業務用に向けた栽培方法の確立は成されていません。

近年では、蒸し込みが不要でハウス栽培よりも湿度が低くても栽培が可能である養液栽培の技術も確立され始めています。
今後も業務用に適した新たな栽培方法が確立する可能性もあり、注目が高まっています。

栽培コスト

業務用きゅうりは生食用のきゅうりと比べ、約1.2倍の反収が見込めます。これは、生食用と比べ大果生産で曲がり果を出荷できることから、屑果が少なく済むことにあります。

出典 :「品目別・用途別ガイドライン」(H23.3 野菜ビジネス協議会)」より弊社作成

また、生食用と比べ、見た目が揃った梱包をする必要がなく、ある程度の大きさが揃っていれば良いことから「混み規格」での出荷が可能です。これにより、生食用と比べ一斉収穫が可能になり、選別の手間が少なく済みます。
選別の手間が少なくなることで、人の手が触れることが少なくなることから、鮮度保持も可能となります。

品種選定

きゅうりは業務用、生食用の品種で大きく違いはありませんが、やはりいぼ無しきゅうりの「フリーダム」(サカタのタネ)は加工に適した性質を持ち、業務用にも適していると言えます。

業務用のイボ無しキュウリ品種としては「フリーダムハウス1号」が最適であり、果実への農薬付着量が少なく、洗浄が容易で衛生的な優位性があった。

出典:低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発 農林水産省

また、業務用ではLサイズが求められることもあるため、大果で作り続けても草勢を保つことのできる品種を選定するのも良いでしょう。

まとめ

今回紹介した商品形態、栽培方法について簡単にまとめていきます。

  • 業務用野菜は歩留りが重視されており、大型規格が求められている

    • 特にきゅうりであれば、果肉が硬く胎座部の小さいもの

  • いぼが少なく、洗浄しやすい品種を選定する

  • 業務用きゅうりは生食用と比べ、高い反収が見込める

次回の連載もお楽しみに!

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参考文献

フードシステムの革新と業務・加工用野菜 坂知樹
加工・業務用野菜をめぐる現状 農林水産省
加工・業務用野菜需要への取り組みに向けた『品目別・用途別ガイドライン』 野菜ビジネス協議会
野菜の出荷規格および出荷関連作業の見直しに向けて ~加工・業務用野菜を含めた出荷規格の見直し~ 農林水産省
低コストで質の良い加工・業務用農産物の 安定供給技術の開発
農林水産省
作物統計調査 令和2年産野菜生産出荷統計 都道府県別の用途別出荷量(きゅうり)


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