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GPS/GNSSによる農業自動化の未来に想いを馳せる

はじめに

前回の記事では、GPS/GNSSガイダンスと自動操舵システムの導入の効果とコスト感について、お話しました。

今回は少し視点を上げてみて、GNSSによるトラクターの自動化の未来と、その技術により農業はどうなるのか?という視点で整理してみたいと思います。

GPS/GNSS、ガイダンスって何…?という方は、ぜひこちらも参考にしてくださいね。


現在のGNSSガイダンスシステムの普及状況

まずは、現在地を見ていきます。
今の普及状況はどのくらいなのでしょうか?

調べてみたところ「農業用GPSガイダンスシステム等出荷台数の推移」という北海道の調査資料が見つかりました。

これによると、令和元年までに約18,000台のガイダンスシステムが出荷されているようで、そのうち8割が北海道向けとのことです。
令和元年の北海道の農家戸数(正確には経営体数)は約37,000戸(参考)。
ざっくり計算すると、おおよそ北海道の農家3軒に1台はガイダンスを導入している計算になりますね。

同様に計算してみると、おおよそ北海道の農家5軒に1台くらいが自動操舵を導入しているようです。

これは令和元年のデータなので、この二年間でもっと普及しているはずです。
なかなかの普及率ですよね。僕の個人の感覚ではありますが、実際に導入している農家は一軒で複数台所有していることが多く、まだまだ偏りがある印象です。


自動運転トラクターの目指す先

次に、このトラクターの自動操舵の技術がどこへ向かっているのか?というお話です。

数年前から日本の政府・農業関係者で連携して研究・開発を進めている農作業のロボット化のロードマップでは、自動化レベルを以下のように分類しているようです(参考書籍「図解でよくわかる スマート農業のきほん」)。

・レベル1:GNSSオートステアリングの開発
・レベル2:目視監視・自動走行農機の開発・市販
・レベル3:遠隔監視・圃場間移動が可能なロボット農機の開発

レベル1はこれまでお話してきた直進自動操舵システムのことで、北海道を中心に普及が進んでいると言えます。

レベル2はいわゆる「 ロボットトラクター 」です。
作業者はそのトラクターに乗る必要はなく、タブレット操作でトラクターに指示を出してやることで操作します。また近くで見ていることが前提ですが、旋回や作業機の上げ下げまでプログラムで自動で行ってくれます。
このロボトラは既に市販もされていますが、まだまだ国内での導入数は少ないのかなと思います。

最後のレベル3は、作業者はロボット管制室から作業中のロボトラに指示を出し、倉庫から出て圃場(田んぼや畑)を耕し、また倉庫まで戻ってくる…という作業を想定しているようです。

これは正直、かなり夢物語のように思いますね…。
先述のロードマップは2020年までの目標のようでしたが、現在も研究開発は続けられてるようです。


ロボットトラクターで農作業がどう変わるか?

レベル3はともかく、レベル1の直進自動操舵とレベル2のロボトラの大きな違いは、オペレーターが運転席にいる必要がなくなるということかな、と思います。

⬇︎ロボットトラクター デモ映像

映像で見るとかなりワクワクしますね。
僕も数年前に試乗体験したこともありますが、なかなか新しい体験でした。

直進自動操舵ではオペレーターが運転席に張り付かなければなりませんが、ロボトラでは運転はトラクターに任せて、作業者は他の作業ができるようになります。
繁忙期でも少ない人数で作業することができるようになるのは、現場では非常に助かります。

今後プログラムによる制御も高精度でできるようになると、複数台のロボトラの連携も魅力的ですね。


COMMENT
とはいえ現状、ロボトラは単一の作物・単一の作業には向いていますが、「作業機との連携」という面で課題が多くありそうです。十勝の畑作の作業機連携の課題トラクターと作業機との世界共通規格(ISOBUS)の普及に関して、気になる方は是非参考リンクもご覧ください!

このロボトラが自動操舵の延長で普及するのか、大規模農家・農業法人の特権になるのか、それとも事業者が導入して作業を引き受けて効率化していく形になるのか…。
ちょっとまだ分かりませんが、今後とても期待の技術です。

農家は畑での長時間作業から離れてより付加価値の高い仕事ができる、そんな時代に向かっているのかもしれませんね。


おわりに

さて、最後は少しふわっとした話になってしまいました。

ロボトラもセンサーやAIなど色々な技術が活用されていると思いますが、着目したいのは位置情報を利用するためのGNSSの技術が根底にあるということです。
GNSSはトラクターの自動化に限らず活用されています。農家自身もある程度その仕組みを知っておくことで、今後新しい技術に触れた時にも役に立ちそうです。

こんなところで概論的なお話は終わりにして、次回は実際に農業情報設計社さんのAndroidアプリ「AgriBus-NAVI」を使って無料のガイダンスを体験してみたいと思います。

無料のままだと精度はかなり低いので活用は難しいのですが、まずは試しに使ってみましょう!

⬇︎次回記事


参考リンク

●参考書籍

●参考記事


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