僕が農業法人で働く理由


こんにちは。愛知県の某農業法人で働く森潤一です。今日は「僕が農業法人で働く理由」というテーマでお話したいと思います。

というのも、先日、弟と大喧嘩したんです。

今思えば僕が悪かったのですが、僕が仕事の愚痴を言っていたんですね。

内容は以下の感じ
・休みが少ない。
→農業は労働基準法の労働時間上限が適用されないんです。

・給料が少ない。
→会社の経営が悪いのか、米価が低かったり、農業がそんなもんだからなのか?今回ははっきりさせませんが、年収300万円も超えません。多分、時給にしたら近所のすき家のバイトとトントンくらい。

・こんなの結婚できるわけない。

・弟は今は大変かもしれないが、成功すれば希望があるからいいじゃないか。
→弟は名古屋でお笑い芸人をしています。

さて、こんな愚痴を聞かされ、しまいには自分に当たられてしまった芸人弟もとうとう我慢の限界を超えてしまい一言。

「知らねーよ」

これに腹立った僕が

「それはないだろ!だったらもうお前米食うなよ!」

弟「なんでそうなるんだ!!!」

ってな感じで泥仕合になってしまいました。

こうやって改めて整理してみると本当にひどい。弟が怒るのも無理ないなと思います。

で、こんなことがあったので、「どうしてこの会社で働いているのだろう?」とか「こんな風に人に当たるくらいなら辞めた方がいいのかな」とか今後もこの農業法人で働くか色々考えてしまいました。

結論から言うと、もう少し今のまま農業法人の従業員として働こうと思っています。

今回は、そんな結論を出した理由をちょっと聞いてもらいたいと思います。


ご飯を食べられなくなる不安を抱えて生きたくない。

僕が農業に興味を持った理由の一つがこれです。

「ご飯を食べられなくなる不安を抱えて生きたくない。」

小学生のときにご飯を残そうとすると、親や先生に「世界には食べたくても食べられない人がいるのだから残すもんじゃありません」みたいなことを言われたことある人、結構いると思うのですが、僕、あれを真に受けちゃったんです。

食べられないの嫌だー!!!って。

それで大きくなるにつれて、「人口増加による食糧危機」やら「日本の食糧自給率は低い」こととかを知るようになります。

実際に、2008年には穀物のバイオ燃料への転用や気候変動、アジアの人口増加などによる食糧価格の高騰が世の中で騒がれました。

僕の身の回りでは、ポテチの内容量とか減ったりして、自分の中の食べられないの嫌だ心がまた一段と大きくなって、農業が大切さに気づき始めました。

こんな考えが潜在的にあったからか、大学は農学部に入学しましたし、社会人になっても最初は農文協という農業関係の出版社に就職しました。

(勘違いはされたくないのですが、全部第一希望ではありません!!別に農業関係がいいとかじゃないです。僕は滅茶苦茶ミーハーなので芸能エンタメ関係とかマスコミ関係とかの方が好きで、興味ありました。でも、なんか入れませんでした。)

こういう環境にいて、農家が減っていることや、農家の高齢化、地方の過疎化を目の辺りにして、日本の農業(特に食糧生産、米とか麦とか)への不安がよりいっそう大きくなりました。

そこで、自分の中のこの不安をなくすために、お米を作るスキルを身につけようと思いました。

お米を作ることができれば、いざというとき、自分と自分の身近な人くらいは、ご飯が食べられなくなるという事態は避けられます。

だから、この米作りの技術を身につけるために、僕は農業法人に入社しました。

農業法人なら大きい面積をこなすため、1年のうちにたくさんの作業や作型体系の経験ができて、比較的短期間で米作りの技術を習得できると思ったからです。

他にも農業法人なら大きい機械や設備も自分で買わなくても経験できるし、生活が苦しかったりして辞めたくなったときは辞められます。

辞められるという選択肢を持っていることは農業法人で農業をする一番の魅力だと思います。

そもそも農業は、儲かりづらかったり、地方の場合なんか若者が少なくて結婚しづらかったりとかで、やりたい人が少ないお仕事。

長く続けることはだいぶ難しいです。

逃げられるようにしておくことはとても重要なことだと思います。

さて、話を戻して、今の僕は、前述した愚痴の通り、農業法人で働くことに辛さを感じています。

辞めるという選択肢がチラつきます。

しかし、残念ながらまだ最初の目的の、米作りの技術がまだ身についていないのです。

3年も勤めていますが、法人ならではの分業制のため、僕はトラクターやコンバインなどの機械に乗ったことすらありません。

(代わりに、田んぼの水回りをしていて、その合間に、稲の生育の記録とかできたので、稲には詳しくなれました。(何もしてなかったわけではないアピール!))

ということなので、もうちょっと辛抱して、今の会社で働こうと思いました。

それと、農業法人で働くうちに、米作りの技術の他に新たな不安もでてきました。

僕が辞めても不安は増すばかり

実際に3年間、農業法人で働いてみて思い知ったのが、本当に辞めるという選択肢を使うということです。

しかも、これは僕が特殊というわけではなく、普通の選択なんです。

今、僕が働いている農業法人は生産部と販売部という2つの事業部でできています。

生産部の社員は6人、販売部は正社員2人、パート1人です。あと、それとは別で季節ごとのパートさんも加わります。

その社員を各部の上長として、社長のご家族がまとめる形で運営しています。

実際に現場で農作業をする生産部は、意外と、若い男の子が多くて、未婚の20代〜30代前半がほとんどです。

だけど、3人は今年中にはもう辞めると言っています。また、それ以前にもこの2ヶ月で二人辞めました。

もちろん社内の雰囲気や人間関係等も退社の理由になるかもしれませんが、ほとんどの社員が僕の愚痴のような給料、休暇に関する労働条件や待遇を理由に辞めるのだと思います。

しかも、この会社について聞く限りでは、僕が勤めはじめる前から、若い人が5、6年くらい働いて30前後でやめるという社員のサイクルを繰り返しているようなのです。

つまり、こんな感じ。

1、若いうちに農業に関心を持って入社
2、労働条件に我慢しながらも頑張る
3、年齢を重ねるうちに結婚とか将来を考える
4、退社する、転職する

こういう社員を募っては辞められてはを繰り返しているのが、今の僕の会社です。

多分、もっと田舎の方の農業法人だと、転職する仕事がなかったり、転職しても給料が変わらなかったりで、4が「結婚とかできずに我慢しながら働き続ける」になって、社員が辞めるということは少ないのだと思います。

だけど、僕の会社の場合は愛知県にあり、色んな製造業、サービス業も盛んです。

そういった業態で精神を病んだりして、農業に希望を持って、転職する人も多い反面、現実を見つめて、条件のよい仕事に転職していく人も多いのです。

こういう現状に直面して、気づいたことがあります。

それは、僕が当初の目的である米作りの技術習得を達成して(ここはあくまで自分基準です)、この会社を辞めても、誰かがまた雇われて、苦しい思いをしながら、しばらく働き、また辞めていくということです。

これはこれで、ご飯を食べられなくなる、という不安を起こす現象です。

この労働者、担い手の定着化という課題は、僕の勤める会社だけでなく、日本中で困ってる人がいる課題だと思うからです。

だから、せめて僕の会社だけでも、もっと長い期間働ける労働条件を作ることを目標にも頑張ってみようとも思ってしまったんです。

このためには、経営の改善や社長の意識改革など、やらないといけないことがたくさんあって、一従業員が簡単にできることではないと思います。

ただ、せっかく普通の人にはあまり馴染みがない農業法人で働いて、気づけたことなので、僕なりにできる限り取り組めたらな〜なんて思っています。

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