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新しい道#4 〜天国と地獄〜

昨日に引き続き、オーケストラフィエスタの練習。
駅に着くと友人カップルが。話しかけてもお邪魔になるし、追い越していくのも変な空気になりそうだし…
一定の距離を保ちつつ、後ろからついていく不審者となってしまった。
27歳なのに未だに人との接し方がわからないままでいる。
結局昼ご飯を買いに寄ったコンビニで挨拶することができた。

今日はブラームスの交響曲1番の弦分奏(バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスだけでの練習)からだった。
練習場に指揮者台が無く、ストレッチ用のマットを何枚か重ねた即席の指揮者台に村上くんが立っていたのが可笑しくて笑ってしまった。
今回のフィエスタの参加を勧めてくれた(脅し)K瀬くんやT竺くん、M浪さんもこの日は一緒だ。特にどこかの団体の練習がない時でもスタジオを借りて一緒にアンサンブルして遊んだりする音楽仲間だ。

それに、懐かしい顔もいる。関西学院大学出身の後輩、A木くんだ。初めて出会ったのは6年ほど前。それから2、3年くらいなんの打ち合わせもしていないのに色んな演奏会で一緒に共演し、青春を過ごした。
もっと沢山演奏をともにしたかったのだが、仕事の都合で遠く離れてしまったのだ。
すごく寂しくかったのだが、それから数年後彼は近畿に戻り、またこうして再び一緒に音楽をすることになった。
そういった意味でも、今回のフィエスタは自分の中でかなり大事な位置にある。

昨日と違って、今日の1stバイオリンパートの人数はかなり充実していた。ほぼ全員揃っていたんじゃないかな。初めましての人が多かったけど、昨日もいた人たちとも少し打ち解けることができた。練習の合間に冗談を言ってみたり、好きなフレーズについて語ったりした。
昨日の練習で体がほぐれたのもあって、その日の練習は結構調子が良かった。コンミス、刑部ちゃんの隣(トップサイド。一番前の席だ)で弾くことになって緊張した。
僕は結構トップサイドで弾くのが好きだったりする。後ろの席になればなるほど他のパートが聴こえにくかったり、指揮が見えにくくなったりする。トップサイドはすぐ右にコンサートマスター(刑部ちゃんは女の子だからこの場合はコンサートミストレス)、すぐ左には2ndバイオリンのトップF川くんがいる。うまい人に挟まれて演奏するのは楽しい。
1stと2ndが掛け合いをするところなんて、興奮しっぱなしだった。いいアンサンブルができていたように思う。

夢の中にいるような体験だった。しかしこんなに浮かれている時に限ってピンチは来るのである。
この日は2楽章も練習したのだが、2楽章というとあのバイオリンのソロである。このソロはコンサートマスター(この場合はコンサートミストレスの刑部ちゃん)が弾くことになっている。1stバイオリンのトップがソロメロディを弾く間、他の1stバイオリンたちは別の伴奏を弾くことになっている。
そう、つまり隣のコンミスがソロを弾く間、自動的にトップサイドにいる人(つまりあごひげぺんぎんのことである)が代わりに後ろのメンバーの伴奏を引っ張らなければならないのである。

その事に気付いたのが、ソロにはある数小節前。僕は完全にテンパってしまった。
僕が間違えて、さらに後ろの人たちがつられてしまったら(そんかヘマをするような人たちではないが)、せっかくの美しいソロが台無しになってしまう。僕は急に心臓を掴まれたような気分だった。生きた心地がしない。
いつもはスコアが刷り込まれている頭の中が真っ白だ。

とにかく指揮に合わせるのに必死だった。
途中で拍感が迷子になりながらもなんとかミスなく終えた。いや、ちょっとミスったか?それすらも分からなかった。余裕の無さのあらわれ、つまり練習不足のあらわれである。ちゃんと練習します…

まあこんな具合に僕の新しい道の始まりの二日間はとても充実したものになった。
今でもうこんなにいい演奏なのに、これからさらに磨かれていくのかと思うと楽しみでならない。
次の練習も楽しみだ。

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