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サマー・アポカリプスと匣の中の失楽

パリの酷暑、といえば真っ先に思い出すのが笠井潔『サマー・アポカリプス』だ。
これは実際に著者がパリに滞在していた夏の猛暑に基づいて書いたそうなので、1975年頃か。

「ルイ十四世の時代以来といわれる猛暑の夏だった。こんな狂気じみた気候に初めから抵抗力を持ち合わせていないパリジャンには、耐えることのできないような日々だった。それがもう三週間以上続いていたが、凶暴な炎熱の日々はなおも果て知れなかった。」(笠井潔『サマー・アポカリプス』創元推理文庫 冒頭より)

さらに、日本の暑い夏なら竹本健治のデビュー作『匣の中の失楽』だ。
こちらは1977年に連載開始しているが、やはり著者が実際に体験した、舗装中のアスファルトが融け出して靴底に粘りつくほどの夏の暑さを描出したそうなので、同じ頃だろうか。

そこから約50年、歴史は繰り返す、のだな。
どちらも大作だが、コロナ禍の暑い夏に、古典ミステリに耽るのも一興。


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