ビジネスホテル体験記(東横イン) 2024年4月【4】
前々回と前回、2回にわたって静岡旅行の記事を書いた。
【1日目】
【2日目】
今回は泊まったホテルでのできごとを記す。
***
簡単に旅程を振り返る。埼玉の所沢から、高田馬場、品川を経由して、静岡まで行った。途中、小田原と清水で途中下車。新幹線や特急には乗っていない。各駅停車の旅だ。
出発は早朝6時前で、13時頃に静岡着。1時間ぐらい滞在。それから折り返して、15時頃に沼津。軽く散策して、16時にホテルにチェックイン。駅前の東横インだ。
以前からどのホテルにしようかと、あれこれ検討していた。結局、リーズナブルなチェーン店がいいだろうという結論に至った。
ホテルに泊まるのは16歳の時以来。実に23年ぶり。何もわからないので、係の人にいろいろ聞いた。感じのいい青年だった。
カードキーをもらう。23年前は普通の鍵だったので、時代の進歩を感じた。
まだチェックイン可能時間の15分前なので、部屋には入れない。ロビーで待たせてもらった。置いてあった静岡新聞を読む。テレビ欄が新鮮だ。
見たこともないテレビ局が並んでいて面白い。2チャンネルの隣に6チャンネルがあるのが不思議だ。
16時になった。係の人がもう部屋に入れると教えてくれた。エレベーターを使う時にもカードキーをかざす。部屋に入る時にもドアにかざす。
部屋に入る瞬間はワクワクする。チェーンのホテルだから、どこでもほぼ同じ部屋だ。でもそれは何度も泊まっている人の話。私はこの23年間、ホテルに泊まるという経験をしていない。
生まれてからずっと実家暮らしなので、ひとりで泊まるという経験自体が非日常なのだ。両手を広げて「私は自由だ!」と叫びたくなった。ベッドの上に立って部屋を見渡し、高揚感を味わった。
この日は夜中に起きたため、もう眠い。早々にナイトウェアに着替える。自前ではなくホテルで貸してくれるものだ。ワンピースタイプで、丈が膝ぐらいまでしかない。室温は20度ぐらいだったと思うが、この服だとちょっと寒い。エアコンをつけた。
バッグから洗面用具を出す。歯ブラシ、タフトブラシ、舌ブラシ、歯間ブラシ、歯磨き粉、ナイトガード。それと鼻うがい用の容器。こうして書くと、なかなか多い。
歯磨きを済ませて、寝る準備に入る。バッグから睡眠に必要なグッズを取り出す。アイマスク、口にするマスク、耳栓。枕元のコンセントにプラグを挿し込み、スマホとワイヤレスイヤホンとモバイルバッテリーを充電。こうして書くと、なかなか面倒くさい。
バタンキュー(死語になりつつあるらしい)かと思ったのだが、意外にも寝付けない。結局、正味3時間ぐらいしか眠れなかった。
洗面所で顔を洗う。フェイスタオルが乾いていなかったので、バスタブにかけてある微妙なサイズのタオルで顔を拭いた。後になって、これが足元マットであることに気付き、苦笑した。ホテルに泊まり慣れていないので、こういうことも知らないのだ。
朝6時30分、1階ロビーに降りて朝食を食べる。5分前ぐらいに行ったら、既に先客が2名いた。バイキング方式で、自由にお皿に置いていく。サラダ、ソーセージ、卵焼き、ハンバーグ、ご飯、味噌汁……。おかわりして、カレーや食パンも食べた(ジャムとマーガリンをつけた)。
どれもいい味だったが、MVPはカレーだ。前日に食べたココイチよりもおいしい。この日の夕方に食べたゴーゴーカレーをも上回っている。東横インの朝食のカレーはなぜおいしいのか。
ジャムとマーガリンもおいしかった。前日食べずに寝たこともあって、たくさん食べることができた。考えてみると、18時間ぶりの食事だった。
部屋に戻って、お茶タイム。1階ロビーに置いてあった梅こぶ茶を飲む。実においしかったので、新たに3包もらってきて飲んだ。
続いて風呂に入る準備。蛇口をバスタブの上に持っていき、お湯を出す。部屋に戻ってしばらく待つ。そろそろかなと思って見に行ったら、まったくたまっていない。栓をし忘れていたのだ。実にもったいないことをしたが、ホテルでよかったとも思った。
湯船に浸かる。いい湯加減だ。それにしてもバスタブが大きい。余裕で脚が伸ばせる。安いホテルなので、ここまでの広さがあるとは思っていなかった。
まず洗髪。次は体だ。フェイスタオルに石鹸をつけて体をこする。そこで気付いた。ここには桶がない。これには困った。保湿のために、お湯にベビーオイルをといて、それを体にかける習慣があるのだが、それもできない。今調べてみたら、世の中には折りたたみ式の桶があるらしい。購入を検討したい。
フェイスタオルで体を洗うと、入浴後に手を拭くものがなくなる。だから体を洗う布を持参したほうがいい。それかフロントに言ってタオルを追加してもらう(ただし有料)。まあバスタオルを手拭きにすれば間に合うが。
ドライヤーで髪を乾かす。机の左に備え付けてあるので、右利きの私には使いにくかった。なぜこのような配置になっているのか。9割の人が右利きだというのに。
私はどうも時間配分というものが苦手で、チェックアウト前にバタバタした。最終的には、何もかもごちゃまぜにバッグに放り込んだ。
ホテルを出る時、フロントの人が私を見ていなかったようだ。入ってきた人と間違われて「いらっしゃいませ」と言われてしまった。
これが今でも心残りだ。カードキーを渡した後にトイレに行ったせいでもある。ストレートに退出していれば、間違われなかったはずだ。ちゃんと見送ってもらいたかった。ちゃんと「行ってらっしゃいませ」と言われたかった。
そういえば、前日16時のチェックインの時と、翌朝10時のチェックアウトの時にフロントにいた人が同じだった。どのような勤務形態になっているのかと不思議に思った。
でもよく考えてみると、フルタイムで働いている人は夜まで会社にいて、翌朝また会社に来る。それと同じことか。
こんなことを疑問に思うのも、ほとんどフルタイム労働の経験がないからかもしれない。夕方に働いていた人が、朝も働いているのを見ると、変な感じがする。寝ずに働いているみたいに思える。
なお「行ってらっしゃいませ」と「いらっしゃいませ」を間違えた人は、前述の感じのいい青年ではない。声の大きい、イケイケなお姉さんだった(青年と二人体制だった)。
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