駅のトイレ・池袋散策　2024年6月【1】

あちこち適当に出かけて、ただブラブラすることが好きだ。しかしそれは正当な趣味とは言えない。出不精を極められない体質から生ずる、言わばやむを得ざる外出なのだ。ひきこもり過ぎたことに対する反動に過ぎない。能動的行為というより、心身の自動反応に近い。

もう夜の8時過ぎ。郊外に行くことは考えられない。闇の中を歩いてもつまらないからだ。それがかえって面白いこともあるが、今夜はそこまで酔狂ではない。電車に乗って、池袋に行くことにした。家の最寄駅からは、だいたい30～40分ぐらい。

せっかく遠くに出かけるのだから、ワクワクする服を着たい。気候も良くなってきたので、スカートで行こう。姿見の前であれこれ着てみる。よし、これで行こう。

それは膝上丈のワンピースだった。スカートでの外出は慣れてきたものの、まだまだ家族や近所の人には見られたくない。当たり障りのない服で家を出て、どこかのトイレで着替えることが多い。

こういう服に着替える時、男子トイレは使いにくい。さりとて女子トイレはもちろんダメ。そこで、だれでもトイレを使用する。

T駅のトイレは、普段はきれいだ。しかしこの日は汚れていて、とても利用できる状態ではなかった。そこで、ひとまず電車に乗り、途上の駅のトイレを利用することにした。

H駅で途中下車。しかしトイレは使用中だった。空くのを待つ手もあるが、さっさと別の駅に行ったほうが早い。田舎の駅と違い、電車はひっきりなしに来る。

次にS駅で降りた。ここのトイレもまた汚れがひどい。あまりわがままを言うものではないとは思う。しかし私には、便座や流しに汚物が付着している状態を受け入れることは難しい。

ここまで3つのトイレを訪れたが使用できず。私は観念し、池袋駅まで行くことに決めた。最初のT駅のトイレが使えなかった時点でそうすべきだったのかもしれない。しかし私は少しでも早く着替えたかった。少しでも長くお気に入りの服でいたかった。

また池袋は利用者の多い駅だ。そこのトイレは使用中である確率が高い。仮に空いていたとしても、すぐにノックされかねない。だから避けたかった。

ところがこの日は意外なことに空室で、無事に着替えを済ませることができた。最小限の時間で済ませるために急いだが、トイレ前で待っている人もいなかった。

ようやくお気に入りの服に着替えることができた私は、夜10時過ぎのサンシャイン60通りを歩く。さしもの繁華街も平日のこの時間はガラガラ。旧東急ハンズ横の階段を降りて、サンシャインシティに入る。動く歩道も止まっているし、どの店も閉まっている。

施設内のトイレに入る。周囲は静かで、ほとんど誰もいなかった。

ここからは夜のサイクリング。シェアサイクルを利用して、池袋駅周辺をグルっとまわった。サンシャインシティから駅方面に向かい、ウイロードをくぐる。西口五差路を左折、池袋警察署を右折。ジュンク堂と雑司ヶ谷霊園の中間辺りのポートに駐輪。

そこから駅まで5分ほど歩く。西武南口から入場しようとしたら、閉まっていた。夜は10時30分までしか開いていないらしい。知らなかった。改めて東口まで移動し、乗車。

池袋駅西武南口

家に帰る前に、出発時の服装に戻す必要がある。往路で使えなかったT駅のトイレに行く。もう清掃が済んできれいになっているはず。

幸い使用中ではない。「開」ボタンを押す。なんと中に人がいた。便座に座ってうなだれている。慌てて「閉」ボタンを押した。

使用中なのに、なぜ外から開けることができたのだろう。故障しているのではないか。気になってググってみたところ、30分以上使用すると、そのような状態になる場合もあるとのことだった。駅に問い合わせたわけではないので正確なことはわからないが。

病気で動けなかった可能性もある。駅員に報告したほうが良かったと思う。でもそれに気付いたのはだいぶ後だった。気が動転して、その勢いで電車に乗ってしまった。

昼間だったら、報告に走ったかもしれない。しかし夜だとスルーしてしまう。というのも、都市部の夜は酔っ払いが多い。特に駅の周辺はそうだ。人がうなだれていたり、倒れていたりしている光景が日常茶飯事なのだ。

本当の病人もいるかもしれないのだが、見分けがつかない。前後不覚になるまで酔うのは、こういった意味でも良くない。

この日の外出時間は3時間ほど。それにしては、トイレに悩まされた。

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