日日是好日
お茶の世界は、なんだか閉鎖的で堅苦しいところだと思っていた。
ピシッと着物を着たご婦人方が、互いの作法に眼を光らせながら、澄ました顔で抹茶をたてる謎の文化。
そんな薄っぺらい知識で、茶道を敬遠してきた自分は何と勿体ない事をしてきたんだろう。
この本を読んでいると、日常に溶けて見えなくなっているものを、次々と思い出す。
雨が降る前の匂い、湿度、水を撒いた後の庭の匂い、梅雨が若葉を弾く音、秋雨が枯れ葉を濡らす音、夜道の沈丁花の香り、紫陽花の花びらのグラデーション、満月、四季折々の草花…
五感を研ぎ澄ませれば、1日たりともつまらない日など無いのだ。
しかしながら、繊細な感覚は社会で生きていくにはきつい。いちいち反応していては、やっていけないのも事実。
理不尽なことにも文句を言わずに対応したり、嫌味をサラッと受け流したり、辛い事があっても笑顔で過ごしたり。
私たちは、感性を鈍らせる事で社会に順応している。
しかし、ストレスをかわしているうちに、美しいものや美味しいものを感じる心がどんどん小さくなっていた事に気付いた。
この作品を読んでよかった。これからも心が疲れたら、この本を読もうと思う。
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