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もう恋なんてしない


前の投稿でカリーソムリエを自称していた私だが実際に週の半分くらいはカリーを楽しむ日がある。作ることもあるしレトルトを食すこともある。


しかしどんなカリーにも私は必ずカイエンペッパーをたす。食卓に持ち出して。それは辛味を足すという仕事ではかなりの働きぶりを見せた。

一度に多くの量を足してしまうと、粘膜や内臓にとってかなりの凶器になる。なので食べながら少量ずつ足してゆく。

いつしか私は適量を探すという目的を放棄していた。辛さの限界という壁を動かそうとしてその赤い粉を好奇心のままにカリーにふりかけてゆく。
 美味しさではなく自身の口内の強化を試みて日々精進していった。

そして私は思惑どおりその辺の激辛料理を難なく食することができるようになった。辛いものを食べることができるという称号を手に入れてフルマラソンを走り切ったかのような自信と達成感をその手に掴んだ。

一昨日午後、私は某激辛食品を食べた。
昨年完食できなかったそれを口に運んだ。
なにも感じない。まじで。
商品を間違えたのかとパッケージを見た。
しかし買い物の失敗は犯していなかった。



私は辛いものを受け付ける舌を手に入れたのではなく、辛いものを感じるなにかを失っていたのだ。

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