近江商人のスキル(特に重要なスキル)
商人とは何か?
基本は「商いをする人」のことなので、すべてのビジネスパーソンが商人です。
商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいいます。(商法第4条1項)
そして、商人は「お客様が要望するものをお届けする」という使命を持ちます。
ただ商品を届ければいいのかというと、そうではないと思います。
やはり「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」を大前提に、
売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売である。
これが本物の「商人」だと思います。
売り手よし(商人として)について今風に書いていこうと思います。
商人のスキルとして「技術力」「営業力」「経理力」の3つが必要です。
技術力(売るモノを具体化する)
最初に売るモノを決めることです。
さらには、何が売りものになるのか、自分の中にあるもの、才能や、自分のまわりにあるものに気が付くことです。
例えば、商品や文章を書くのが上手、絵が上手い、工作が得意など実際に体を動かしてつくる作業で培ったものです。
(僕の場合、小さい頃から割と手先が器用でした。プラモデルとか細かいことが好きだったんです。)
しかし、つくっただけでは売れません。
つくったものは評価されなければなりません。
日本の学校教育では、先生が生徒の作ったものを評価しますが、社会人になると、社員がつくったものを、会社内外の社員、地域の住民、一般の人などにも物や情報を利用してもらって、感想や指摘、評価を行うことしてもらうような仕組みが必要だと思います。
そして、さらによいものをつくろうとする原動力にしていくことが重要です。
営業力(売れるための活動をする)
つくったもの(仕入れたものも)を、いかに売るかの仕組みを見つけたり作ったりし、実際に行動してください。
今の時代、スマホのフリーマーケットアプリやシェアリングアプリで、売るための仕組みを簡単に作れます。
また、SNSなどで自分と自分の提供するサービスの発信を継続することも重要になってきます。
チラシなど紙媒体の広告、様々な宣伝する手段がありますが、いろいろ試して自分にあったやり方を採用し続けるといいと思います。
経理力(収支、採算と再投資を考え続ける)
売れても、損してまで売ってしまっては意味がありません!
いくらの利益がでたか、利益率はどうか、経費削減の余地はないかを常に考えます。
得た利益は、貯めて、次の再投資に備えます。
収支と採算を常に見て、再投資可能な仕組みをつくらないと商売が成り立ちません。
この力が経理力です。
ここで特に重要なのは!
「数字」です!
商売を長続きさせる為には、数字に強くなかったら長続きしません。
数字の苦手な商売人で商売が長続きした方はほとんどいません。聞いた事がないです。
うまくやっている商売人は、数字に強くなっているはずです。
数字に強くなることは、経理力を強めます。
僕はお店の中のあらゆる数字を出しています。
利益を考えることは悪い事ではありません。
利益にともなう現金をどう使うかは、いつも真摯に考えなければなりません。
粉飾決算などは言語道断!ダメな事です。
まっとうに利益を考えるのは当然なことです。
そしてもう一つ必要なのは「陰徳善事(いんとくぜんじ)」
人に見えるところで、人のために行われる行為を「陽徳」と言い、人に知られないよう、人のためになる行為を「陰徳」と言います。善いことであっても、売名行為や自己顕示のためにやっては人から信頼は得られず、人が見ていなくても、知らなくても、地域社会のために尽くすことが大切というものです。
そして、事業の永続
商売に社会性がなければその商売は永続しないという理念のもと、長期的視点に立ち、永続性の尊重することが大切な事です。
当時の近江商人は事業の永続をとても大切にしていました。
自らの利益のみを追求することを良しとせず、地域社会の発展をも願う「三方良し」「陰徳善事」の精神は、後に多くの企業の経営理念の根幹となっています。
今回は特に「売り手よし」について書いてみました。「買い手よし、世間よし」については売り手が良くないと付いてこないと思います。
最後に余談です。
「売り手によし、買い手によし、世間によし、三方よし」という表現自体は、歴史用語ではなく、近江商人研究においては、昭和63年(1988)ごろ、近江商人研究者の小倉榮一郎氏によって用いられた、近江商人の到達した商いの精神を端的に表した造語です。