天地争乱(仮) 6.佐谷の戦い 3

風輝の掛け声と共に五人は走り出し、敵の作る陣形を破壊を試みる。
刀と刀がぶつかり合う。火花を散らしながら。しかしそれは拮抗することはなかった。体の鍛え方から違う。例え刃がなくとも蓮花たちは力づくで押す。それによって倒れれば簡単に陣形は崩れる。
そして一分ももたずに陣形が崩れる。そこからはもう蓮花たちのやりたい放題好き放題だ。
ばらばらに襲いかかってくる敵兵の攻撃を軽く流し、頭は狙わず腕、腹と足を徹底的に刀で叩く。頭を狙わないのは刃がなくても殺してしまう可能性があるからだ。

道普はその光景を見ていることしかできなかった。自分のことを慕ってくれる部下が倒されていくのを。
「ど、どうしてだ。どうして、応戦するんだ」
風輝に対して投げかけられた質問に蓮花が答える。
「それはそっちが私たちの領土に踏み込んで来たからでしょ」
「そういうことを言っているのではない。なぜ怯まずにいられる。数はこちらが勝っているのに」
「数で負ける程弱くはない」
夜太郎の後に灯が続く。
「俺たちと力量が等しいならともかく、雑魚を幾ら集めても勝つのは俺たちさ」
五人相手に道普の部下五十人は次々と倒されていく。その惨劇の唯一の助けは死人が出ないことだ。
数分の内に味方は無惨にも地に伏せ、残るは道普一人となった。
「貴様らを止めずして何が大将だ」
道普はそう言って刀を抜き、風輝に向かって走り出した。

風輝は冷静に道普の刀を捌いていた。
「ちょっとー、一人占めはずるいー」
蓮花が甘えたように言った。
「そうだ。そもそも俺の獲物のはず」
納得がいかないと夜太郎は声を荒らげる。
こんなものはまだ優しいものだ。酷いものは、ほら見たことか。風輝の足元に矢が刺さる。
「柚葉。幾ら何でも味方に放つの止めない?」
全くもって説教にも怒るにもなっていない声で話す旗徒。これだから柚葉は言うことを聞かない子なんだ。
「やるならやるでさっさと終わらせろ」
灯は一人木に腰掛け、刀も鞘に収める。
「ま、そういうことなんで」
風輝の動きが変わる。

今までは道普の攻撃を躱すだけだった。道普にはそれが精一杯に見えていた。しかしそれは違っていた。
まるで風輝の刀は生きているかのようだった。刀を刀で受けようとしても道普の刀は空を切り、体に刀を叩き込まれる。何度やってもだ。一手一手が変化し、攻撃が読めない。

こんな強者がいたとは。道普は空を仰ぎながら呟いた。自分の任務は果たせたとは言えない。わかったことは相手が異次元の強さだということ。
風輝たちは道普に一封を置いていき、
「さっさと帰れ」
そう言って村に帰って行った。
道普は立ち上がり、部下を気にかけながら城に戻るのであった。

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