見出し画像

【ショートショート】 『秘密警察を宣伝してみる』

「秘密警察、いかがっすかー」
  ピ国首都の大通りで、ビラが配られていた。
  ピ国の秘密警察の優秀さは、各国にも広く知られていた。国内外で暗躍し、その証拠はいっさい残さない、と名高い。二十年前、大統領の「秘密警察の募集については、いっそ広く募集してみよう!」ツルの一声以来、職員はビラをまいて公募されているのであるが、その試験は極めて難しく、多くの著名人もその試験に落ちたという噂が流れていた。
「いやー、課長。今日の応募者は一次面接を通過になりましたけれど、優秀そうでしたねー。きっと上まで行くんじゃないですか?」
「ん? うーん」
「それにしても、秘密警察をビラで募集するっていうのが不思議ですよねー。どの国もスカウトでやっていますけれど。ピ国の秘密警察が優秀なのは、募集制度のおかげなのかなー」
 課長が若者に、耳打ちした。
「だれにも言うなよ」
「へ?」
「この国に秘密警察なんて、もうとっくにないんだ」


#毎週ショートショートnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?