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学習理論備忘録(31) 『好きも嫌いも知らぬうち』

勉強会。夜になって聞くだけの参加になってしまった。。



さて、潜在制止の臨床応用の話をしていた。

3つめは、嘔吐などの治療の副作用の話。


抗がん剤治療をしている人が、抗がん剤という言葉を聞いたときなどに起こす「予期嘔吐」は、32-72%の患者がなるという。それほど抗がん剤が起こす吐き気というものは強く、その影響も大きい。


抗がん剤治療中に病院食を食べて吐くと、目の前に病院食が出されるだけで吐き気を催し、食べられなくなってしまう。



また吐き気と言えば、医者が患者に、副作用に吐き気のある抗うつ薬を使いたいと思っていても、嘔吐恐怖のために飲んでもらえないということもある。


このように医療現場では、吐き気に関わる問題がよく起こる。


何かを摂取することと吐き気のような嫌な感覚との間に起こる「条件味覚嫌悪」は、人間ばかりでなく、言葉が通じない動物にも共通に起こる。研究者がその気になれば、人でも動物でも100%ほぼ確実に嫌悪感を条件づけることが可能だ。


たとえば以下のような実験により、クランベリーへの嫌悪が生じさせることができる。


「クランベリーの匂い」を嗅がせる + 「アポモルヒネの注射 」をする


これは一回だけでも、新しいクランベリーの風味に対して嫌悪感を学習させられる。被験者は一生クランベリーを避けるようになってしまうのだ。(実験に参加した人たちが、日常でクランベリーの匂いにさらされる場面が少ないと良いのだが)


さてここで私は思いついてしまった。合コンで今度出会うライバルたちに勝利する方法である。

手順はこうだ。自分を除いて、女の子たちと、他の男子には船で荒海の中、遊びに出てもらう。きっとひどい船酔いが生じるはずだ。すると、他のライバルたちの顔を見ただけで女の子たちは吐き気を覚えるようになる。そう、女の子たちは、私に対してだけは平気になるのだ。これで私の天下だ!




ところで私のいる地域では、茶碗蒸しに甘い栗が入っている。違和感なくそれを当然だと思って食べている。これは潜在制止のおかげである。味にならされているので、今さら平気なのである。

潜在制止は意識できるとは限らないので、人は知らず知らず、何かと嫌悪感が結びつくのが防がれているのである。


先に述べた実験でも、事前にクランベリーの匂いに慣らされたグループでは、嫌悪感が著しく減った。



だから、食べ物と嫌悪が連合しないようにするためには、予めその食べ物を食べ慣れておく、ということが役に立つ。

それでも抗がん剤の吐き気はひどいものなので、そのとき食べたものと吐き気が連合してしまう可能性はある。

そこで、

1. 食事はできるだけ吐き気の少ない時間に取る
2. 食事を、今まで食べたこともなく今後も一生食べなくても困らなそうなもの(生贄の食事)に変える

といった対処があるという。これももう少し広まってほしい方法である。



さて、合コンに必勝するために、ライバルと女の子たちを船に乗せた吟遊くんであったが、なんとライバルたちは、船に乗る前の時間帯からおしゃべりをして、自らを先行提示してしまった。これでは嫌悪への条件づけに対して潜在制止が働いてしまう!

その上、XくんはAちゃんを介抱して点数を上げるわ、YくんとBちゃんは海が荒れると燃えるタイプで水着姿なもんだからますます興奮するわ、ZくんとCちゃんに至ってはZくんがゲーゲー吐きまくってCちゃんが嘔吐萌えしちゃい、残ったDちゃんはそもそも船酔いをしないタイプなのであった。


皆さんも、学習理論の悪用には注意しましょう。


Ver 1.0 2021/4/10



学習理論備忘録(30)はこちら。



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