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夫が似合うと言ったので金髪にした話

今年の夏に、突然金髪にした。
どうした?なにがあった??と聞かれ、なんやかやと答えていたけど、突き詰めて言うといたってシンプルで、夫が「似合う」と言ったから。
そして、鏡に映った自分の顔色が明るく見えたから。
それだけ。
でも、金髪にしてみて、副産物的によかったことや考えることがあったので、文章に残しておきたいと思う。

実は、夫が私に「金髪が似合うと思う」と言い出したのは、なにも最近のことではなくて、10年も前からヘアサロンに行くたびに言っていた。
それを、「こんなこけし顔が似合うわけないじゃん」「仕事的に無理でしょ」と一蹴していた私。
確かに正社員で、ホテルにスタッフとして入る機会もあったし、状況的に難しかったと思う。
でも、それ以上に保守的な考えに囚われて、周りからの見え方が気になってたんだな。
実際金髪にしてみて、お茶の先生も衣紋道の先生も
「あら、似合うじゃない」
としか言わなかった。どうした?なにかあった?と聞かれはしても、眉をひそめられるんじゃないかと心配していた諸先輩方は好意的に見てくれた。仕事もびっくりするくらい差し支えがないし、金髪NGの現場はウィッグ対応で問題なし。後述するが、元から黒髪であることが必要な現場はその期間だけ黒に戻した。
なんだ、こんなもんか。拍子抜け。
まあ、とある文化施設をお借りしての伝統文化系のイベントで、初対面の関係者にディレクターですって挨拶したら、にこやかながらも文化系の質問は全部後輩に聞いていて、「そりゃ、こんな金髪より、黒髪真面目そうなメンズのほうがわかってそうだよな」と苦笑。でも、金髪にしたときのみんなの反応ってこうなるだろうなって思ってたから、ついにきたか!?と、変に納得してる自分がいた。

逆に自分のほうが気を回しすぎてるくらいで、来年お正月の「新春 子ども茶会」の案内役をするのに、子どもが金髪を気にして話が入ってこなかったらどうしよう。ウィッグかなあと言っていたら、今SENSE OF WONDERというプロジェクトを一緒にやってる松尾翠さんが「今の子たちはそんなの見慣れてるから金髪にきものでいいじゃん。このフライヤーのセンターの子サガちゃんじゃん」と。

真ん中の金髪おかっぱは私らしい笑


確かに、、と妙な偶然に、金髪のままでいくかと決めたのだった。きものは黒髪じゃないと似合わないとか、もうゴリゴリの固定観念というか、ただただ見慣れてるだけの話かなと。昔はショートカットに着物だってありえなかっただろうしね。そもそも、今の時代生まれて死ぬまでバージンヘアの日本人はどれだけいるのかって話で、明るい茶髪はOKで金髪はNGというラインはどこ?って聞かれると答えられない。社則や校則で決められてて、それを納得済みでそこに入ったなら、従うべきだけどね。

そこで、金髪じゃないほうがいい場面というのを考えてみた。それは「佐賀裕子」という個ではなく、私自身が構成要素になる場合。
例えば、「個」でいいのは、今年の衣紋道高倉流京都道場の衣紋納めの会。今年のお稽古の成果として、先生や仲間の前で女房装束のお服上げ(着装)をした。

金髪袿姿で女房装束(十二単)のお服上げ

これは、私の1年の成果発表なので金髪でも問題なし。外野がなんと言おうと余計なお世話なわけだ。先生にも髪が顔にかかるから、まとめだ方が良かったとは言われたけど金髪については何も言われなかった。
ただ、これが衣紋道とはなんたるかを見せるお服上げのショーだったら話は違う。お客様は所作や技術だけではなく、連綿と続く日本の文化を見にきているわけで、袿姿で装束をおつけしていた当時の人に金髪はいるはずもない。私は舞台を構成する1部であり、それは舞台にあったもの=黒い髪の垂髪ではないといけない。

もうひとつ、私は9月下旬から10月上旬に1ヶ月弱だけ黒髪に戻した。それは、祇園甲部の芸妓さん舞妓さんの舞の発表の場でもある温習会の進行役をやらせてもらったからだ。

2022年祇園甲部温習会

冗談で「皆んな芸妓さん舞妓さんを見にきてるんだから、進行役の髪型なんて見てないよ」なんて言われたりもしたけど、直前の大ざらえまで、やっぱり小道具の位置が、色が。舞妓さんの帯揚げの色がと、「神は細部に宿る」ではないけれど、細かいところまで直しが入っていたのを見ると、添え物の案内役でもそれにあった装いが必要だったと思う。お客様は、舞を通して彼女たちが作り上げる世界を文化をみにきているのだから、異分子は入り込んではならないのだ。

そんなふうに、金髪にしてみて仕事のなかでの自分の役割を見つめ直し、でも多様性の世の中で、個である私が「こうあらねばならない」というのは割と思い込みだなと実感したのだった。
どうも存在感が薄かったのか、仕事の上で同じ人から何度も名刺を出されがちだったのが、金髪をトレードマークに覚えてもらえるのも嬉しい。

デメリットを言えば、隠密でいたいときにすぐ身バレするのと、やっぱり髪は痛むので、メンテナンスにお金がかかる。これを思えば、若いときより金髪にするのは今だったのかもなとしみじみ。
ちなみに、「似合ってねーよ」というのは主観の問題なので受け付けません。
夫が「似合う」と言ったから、金髪にしたんだもん。

実は金髪夫婦



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