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【長編小説】 初夏の追想

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30年の時を経てその〝別荘地〟に戻ってきた〝私〟は、その地でともに過ごした美しい少年との思い出を、ほろ苦い改悛にも似た思いで追想する。 少年の滞在する別荘で出会った人々との思い…
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#絵画

【長編小説】 初夏の追想 11

 「お母さん、楠さんは、美術史にすごく詳しいんだよ」  そのとき守弥が言った。そして、数…

【長編小説】 初夏の追想 14 

 ――彼らとの交流が始まって、数週間が過ぎていた。そして、六月の声を聞くとすぐに梅雨が訪…

【長編小説】 初夏の追想 20

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【長編小説】 初夏の追想 21

 パタン、と、扉が閉まった瞬間から、その部屋には私と守弥の二人きりになった。部屋の中は閉…

【長編小説】 初夏の追想 28

 ――守弥はパリで絵を描くうち、あるフランス人の画家から言われたそうである。 「君の絵は…