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【長編小説】 初夏の追想

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30年の時を経てその〝別荘地〟に戻ってきた〝私〟は、その地でともに過ごした美しい少年との思い出を、ほろ苦い改悛にも似た思いで追想する。 少年の滞在する別荘で出会った人々との思い…
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 私は再び犬塚家の別荘に戻った。平生通り、祖父は一切のことに無関心だった。あちらに行くと…

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 ――目が醒めたとき、私は床の上に横になっていた。部屋の中に守弥の姿はなく、私の絵画たち…

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【長編小説】 初夏の追想 27

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