第四回阿賀北ロマン賞受賞作③童話部門 『いろり』きしだしげお
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第四回阿賀北ロマン賞受賞作③童話部門 『いろり』きしだしげお

この記事は新潟県の阿賀北エリアの魅力を小説で伝えてきた阿賀北ロマン賞の受賞作を紹介するものです。以下はきしだしげおさんが執筆された第4回阿賀北ロマン賞童話部門受賞作です。2020年より阿賀北ロマン賞は阿賀北ノベルジャムにフォーマットを新たにし、再スタートしています。<詳しくはこちら>公式サイト

小説創作ハッカソン「NovelJam(ノベルジャム)」初の地方開催を企画・運営しています。「阿賀北の小説 チームで創作 敬和学園大が初開催 筆者と編集者、デザイナー募集へ」 (新潟日報)→ https://niigata-nippo.co.jp/news/local/20200708554292.html

『いろり』きしだしげお


 雪国の秋は、早足です。阿賀北の山あいの村も、まもなく、長い冬が、はじまります。
 それは、さむい日の、たそがれ時でした。
 カサカサ、カサカサ……。ザザー!
 家囲いの、カヤにぶつかる、雪の音です。
 いろりばたで、なべの番をしていた、おたねばあちゃは、外へ目をやりました。
「ありゃ、ふってきたかや。じいちゃが、かえるまでに、やめばいいんだけんど」
 風の音は、ますます、強くなっていくようです。じいちゃは、村の集まりに出かけていました。ようすを見に、げんかんの戸をあけて、おたねばあちゃは、ぎくりとしました。
「あれまあ、どうしたで!?」
 うす茶色の、わたいれと、毛糸のぼうしすがたの女の子が、ふるえながら、のき下に、立っていたからです。としのころなら、小学校に、あがるまえくらいでしょうか。
「んな、どこの子だ? なにしてるん」
「ご、ごめんなさい。あの……」
 女の子は、なみだごえで、いいました。
「あのね、あそんでたら、ふぶいてきたの。したら、さびくて、うごけなくなったん」
 村では、見たことのない子です。きれながで、すんだ目をした、その子のかおは、どこか人間ばなれしているように、思えました。
 おたねばあちゃは、やさしい人でした。
「ほうか。だったら、おらご、へえれや」
「え、いいの? でも……」
 女の子は、とまどったようすです。
「ふたりきりの家だ。いま、おらだけだで、えんりょしんでいい。ほれ、雪おとせ」
 おたねばあちゃは、雪をはらいながら、ぼうしをぬがせました。いきなり、ぴんと立った、キツネの耳が、あらわれたので、おたねばあちゃは、ひゃっと、こえをあげました。女の子は、あわてて、手で、かくしました。
「ごめんなさい、おどかすつもりなんて、ないの。あたし、山ギツネの、おぎん。まだ、ばけるのが、へたっぴだから……」
 おたねばあちゃは、ふきだしました。
「ははは、そういうことかい。だれだって、かまわねえよ。さあ、あがれや」
「わあ、すごい! いろりがあるんだ!」
 おぎんは、いろりばたに、かけよると、ちょこんとすわって、手をかざしました。
「ああ、あったけえなあ。きいてた、とおりだ。それに、いいにおいが、するね」
 なべをのぞきこむ、おぎんを見て、おたねばあちゃは、はてなと、思いました。
「んな、火ィ、こわくねえんか?」
 おぎんは、わらいながら、こたえました。
「こわくね。田んぼや畑で、見てるもん。でもね、トドとカガは、おっかねえってさ」
「へえ、だったら、これ、けってみるか?」
 おたねばあちゃは、くつくつ音をたてている、なべのふたをとりました。もあっと、あがった、ゆげにおどろいて、おぎんは、ぴょんと、とびあがりました。
「びっくりしちゃった。これ、なあに?」
「のっぺださ。いろんな、やさいや肉でこさえた、にものだわ。味見ば、してくれや」
 おわんに、もってあげると、おぎんは、くんくんと、においをかいで、おはしをたのみました。じょうずに、はしをつかうキツネに、おたねばあちゃは、感心するばかりです。
「うんめえ! いろんな味がして、たのしいな。ほら、体の中が、ぽくぽくしてるよ」
 おぎんは、うれしそうに、おなかをなでてみせました。キツネと、こうしてるなんて、おたねばあちゃは、おかしくてなりません。
 おぎんは、二はい目をおかわりすると、ぺろっと、たいらげてしまいました。ひえた体は、すっかり、あたたまったようです。
 ケンケーン! ケーンケーン!
 うら山で、キツネの、なくこえがして、おぎんは、はっと、かおをあげました。
「あっ、カガが、よんでる。さがしにきたんだ。あたし、もう、かえらなきゃ……」
 おぎんは、ざんねんそうな、かおをしました。おたねばあちゃも、おなじきもちです。
「けえるか。じゃあ、ちっと、もってけ」
 おたねばあちゃは、小さななべに、のっぺをいれて、もたせてあげました。
「みんなして、け。のっぺって、さめても、うんめえからな」
「ばあちゃ、ありがとう。あのさ……」
 おぎんは、もじもじしながらききました。
「また、いろりに、あたりにきても、いい?」
「いいさあ、いつでもこいや。まってるで」
「うん、またくるよ。やくそくね!」
 にわに出ると、雪はやんで、星が、ぽっちらぽっちら、またたいています。
 おぎんをみおくりながら、おたねばあちゃは、わらいが、こみあげてきました。
 のっぺをかこみながら、いろりのはなしをする、キツネたちのことを考えると、ゆかいで、たまらなかったのです。 

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