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新選組の一夜

裏木戸から誰かが来るのはわかってた。
奴らが洗濯場から段だら羽織を盗んでいったのを知ってたからな。奴等はそんなものを盗んで何に使うと思う?
俺はすぐに出世を望んでいたお前に声をかけた。

筋書きはこうだ。俺は味方に化けた尊王攘夷派の奴を邸内に通す。いくら副長といえど、油断しているところを襲われればひとたまりもない。そこでお前が奴らの襲撃を阻止する。

俺は事件を予見し、そして解決に導いた。お陰でお前からの百両と間抜けの烙印を手にした。お前は出世の足掛かりってわけだ。

俺はここを出て江戸へ行く。これから世の中は大きく変わる。体制が変わるんだ。それまでの功も罪もチャラだ。悪いな。
この世はより大きく俯瞰して見られる者のものなんだよ。

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