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雑感ハタチ

先日、さる用事で市バスに乗った。車内は満員で、次の大きなバス停で、降客より乗客の方が多ければ身動きが取れなくなると思われた。
私の隣に立っていたもうリタイアしたと思われる男(どうしてそう思うかというと、単に昼間の服装がラフだったからなのだが)が目の前に座っている男に「佐山じゃないか」と声をかけた。
かけられた方の男は、さっと顔を上げたが「ああ」と言ったきり、それきりまた下を向いて書類を読み始めた。ベッコウ色の眼鏡をかけたその男は先ほどと同じ理由で現役だった。
相当おもしろくなかったのだろう。隣の男は座っている男の書類をさっと取り上げた。
「おい、何をするんだ」と現役は応じた。
「お前、旧友だろ。その無視の仕方はよくないな」
隣の男は泡を飛ばしてそう捲し立てた。
「悪かった。返してくれ」
それから大騒ぎになって、とうとうバス停で警察にバトンが渡されることとなった。

きっと若い男だったら、そんなことにはなっていない。若い時には他にも何本かの社会と自分を繋ぐ糸を持っているからだ。年を取るにつれ、その糸はプツンプツンと切れていく。
最後に残るのが、昔築いた関係、古い糸。隣の男はこの糸を蔑ろにされて、キレたというわけだ。

もちろん全ての男に当てはまることではない。また女性は社会との関係をうまく築いているものだ。ただし、定年まで勤めあげるというライフスタイルを採っている方は、男同様の危険が待ち構えているかもしれない。

残念なことに、年を取った男は女性からも相手にされなくなる。金を持っていれば別だが、それは自分が相手にされているわけではないことは説明するまでもないだろう。
こうして男は女性に対する恋愛感情もなくしていく。熱い情熱を以て女性を見られなくなってしまうのだ。これはひとつの社会に背を向けることだと私は思っている。

「だから恋愛っていうか、恋心っていうのは社会に繋がる大事な力だって思うわけさ。」(ナオさん風に語ってみた。)

男は社会との糸を切らないように、うまく年を取らなければならない、という話。
                    おわり


この冬の寒さに震えているのではない。恥じ入っているのだ。

なんとなくローマの格言のように聞こえませんか?
本当にそうなのです。フォロワーさんの記事をひとつ貼らせていただきますが、本当に壮大でおもしろいのです。こんな私の「雑感」と一緒にするのはたいへん申し訳ないのですが・・・

最初の導入編も含めますと全7巻ですが、かなりおもしろいです。


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