映画『アイリッシュマン』感想

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 新年最初の映画鑑賞は、マーティン・スコセッシ監督作品『アイリッシュマン』でした。


 NETFLIX配信限定だと思っていたら、劇場公開もしているとのことで、遅ればせながら鑑賞。
 割と上映開始ギリ気味で席に着いたのですが、トイレや空腹に悩まされることなく、3時間半の長丁場を一気に観ることができました。
 ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノといった重鎮俳優たちを配して、マフィア社会の視点で近現代アメリカの歴史を辿るような内容。


 マフィア映画といっても、派手な銃撃戦、渋い男の世界、裏社会の恐ろしさというような、外連味で強調するような演出は一切無く、淡々とした描写はむしろ、ビジネス社会を描いているような印象でした。
 ただ、当然マフィア社会なので、人死には当たり前に登場するわけで、ビジネスライクに人を殺していく様が、裏社会の恐ろしさを強調する演出になってるんですよね(車のキーを差してから、爆破されることを疑うシーンなんか、ホントに巧いですよね、めちゃくちゃ怖かった)。

 この作品は、ケネディの大統領就任やキューバ危機、ケネディ暗殺など、アメリカの歴史と並行して物語が進むパートが物語の3分の2ほどで、その後は、フランク、ラッセル、ジミーたちの結末を描いているんですけど、この残りの人間ドラマが、物語のメインだと思うんですよ。
 ただ、このアメリカ近現代の歴史部分をきっちり描いて、トータル3時間半の鑑賞時間で観客に疲労感を与えることで、フランクたちの罪の重さを感じさせる演出になっていたと思います。
 それと同時に、アメリカ繁栄の歴史は、マフィアたちの血みどろの暴力でもたらされたものであるという批判でもあるんですよね。国として裕福になって、世界のリーダーの位置に登り詰めるけど、理不尽な暴力や殺害の繰り返しによるもので、栄光でも何でもねぇよと。(アメリカに限らず、どの国でも発展の裏側なんてそんなものなんでしょうけど。)

 暴力をきっちりと容赦なく描いてはいるんだけど、その暴力を肯定していない作品が好きなんですよね。感情を出さずに仕事(殺し)をこなすことで信用されたフランクも、老いてからは饒舌になって、娘にすがる姿は同情の余地がない哀れさでした(この作品のデ・ニーロ、モノマネ芸人以上にデ・ニーロ的な演技で凄く良かったです)。

 スコセッシ監督特有のカメラワークも見事で、3時間半ダレることなく鑑賞できる傑作でした。
 ただ、僕はNETFLIX契約していないので、劇場で観たけど、これ家で観てたらどうなんですかね、けっこう途中途中細切れで観てしまうんじゃないですかね。
 それだとまた印象が変わって、ダレてしまうんじゃないでしょうか。海外ドラマを何時間も一気観する方が長いんでしょうけど、1話1話区切りがあるのとでは、また違うと思うんですよ。
 ただ、莫大な費用で頓挫しかけたそうですし、劇場では扱いにくい3時間半という上映時間を通せるのはネトフリだから出来たことなんでしょうね。世に出せたという意味での功績は大きいと思います。


 出来れば、これからもネトフリの長編映画は劇場公開してもらいたいですね。


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