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2021年映画感想

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#アカデミー賞

映画『ファーザー』感想 人は樹、想い出は葉

 誰もが迎える可能性を先行体験するVR作品、映画『ファーザー』感想です。  劇作家フロリアン・ゼレールによる舞台演劇の戯曲を原作として、フロリアン・ゼレール本人が監督・脚本を務めた作品。フロリアン・ゼレールにとっては初監督作品になりますが、各映画賞を総ナメして絶賛を浴び、ついにはアカデミー脚色賞、主演のアンソニー・ホプキンスは、『羊たちの沈黙』でのレクター博士役に続いて2度目の主演男優賞を受賞するという快挙を成し遂げています。  本作の最大の特徴は、認知症患者本人の視点を

映画『ノマドランド』感想 演技ではない言葉で綴られるドラマ

 アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞と総ナメの快挙、本当に素晴らしいですね。映画『ノマドランド』感想です。  ネバダ州の企業城下町「エンパイア」に暮らしていた女性、ファーン(フランシス・マクドーマンド)。夫は数年前に亡くなり、その後のリーマンショックで企業は倒産、「エンパイア」という町そのものも消え失せてしまう。住処を無くしたファーンは自家用車のバンをキャンピングカーに改造して、亡夫の想い出と共に流浪生活を始める。  amazonの倉庫での作業、国立公園の清掃スタッフなど

映画『ミナリ』感想 異文化で描かれるアメリカ

 紛うことなき「アメリカ映画」だったと思います。映画『ミナリ』感想です。  1980年代のアメリカ。韓国からの移民であるジェイコブ・イー(スティーヴン・ユアン)は、家族を連れてアーカンソー州の田舎の土地に移住してきた。ジェイコブは、その地に農場を拓き、韓国の野菜を育てようとする。新居はボロボロのトレーラーハウス、病院へは車で一時間という住環境に、妻のモニカ(ハン・イェリ)は、夫への不満を募らせる。最も心配だったのは、子どもたちの事、特に弟のデビッド(アラン・キム)が心臓の病