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2021年映画感想

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2021年4月の記事一覧

映画『BLUE/ブルー』感想 青コーナーの視点から描く美しい悔しさ

 男くさいけれども、とても繊細な作品でした。映画『BLUE/ブルー』感想です。  敗け続きのプロボクサー瓜田信人(松山ケンイチ)の所属するボクシングジムから、久々にスター選手が生まれようとしている。瓜田の後輩である小川一樹(東出昌大)は、その才能とセンスを如何なく発揮して、日本チャンピオンとなるのも目前となっていた。小川は、瓜田の幼馴染である天野千佳(木村文乃)との交際も順調で、瓜田はそんな2人を穏やかに見守る。だが、千佳は、小川の言動が若干おかしい事に一抹の不安を抱き始め

映画『JUNK HEAD』感想 ひとりの脳内にある、とてつもなく大きな妄想世界

 噂には聞いておりましたが、マジでブッ飛ばされました。映画『JUNK HEAD』感想です。  環境破壊で汚染された地上から、人類は地下へ移ろうと開発を進める。その労働力として人工生命体「マリガン」を創造するが、自我に目覚めたマリガンは反乱を起こし、地下を乗っ取ってしまう。  それから1600年後、遺伝子操作によりほぼ永遠の命を手にした人類は、代わりに生殖機能を失っていた。そんな人類社会も新種のウィルスの発生により、人口の30%が失われる。政府は地下で独自の進化を遂げた生命体

映画『ゾッキ』感想 散漫になってしまった群像劇

 今回は映画『ゾッキ』感想。ちなみに「ゾッキ」とは、余った新品本が古書市場などで安く出回ったものである「ゾッキ本」からとったタイトルだそうです。  「秘密はなるべくたくさん持て」と祖父(石坂浩二)から、謎のアドバイスを受ける前島りょうこ(吉岡里穂)。寝袋と拾ったエロ本だけで、あてのない自転車旅に出る藤村(松田龍平)。親友の伴くん(九条ジョー)の、実在しない自分の姉への恋心に悩まされる牧田(森優作)。父(竹原ピストル)に連れられて真夜中の高校に忍び込んだことで、とんでもない物

映画『ミナリ』感想 異文化で描かれるアメリカ

 紛うことなき「アメリカ映画」だったと思います。映画『ミナリ』感想です。  1980年代のアメリカ。韓国からの移民であるジェイコブ・イー(スティーヴン・ユアン)は、家族を連れてアーカンソー州の田舎の土地に移住してきた。ジェイコブは、その地に農場を拓き、韓国の野菜を育てようとする。新居はボロボロのトレーラーハウス、病院へは車で一時間という住環境に、妻のモニカ(ハン・イェリ)は、夫への不満を募らせる。最も心配だったのは、子どもたちの事、特に弟のデビッド(アラン・キム)が心臓の病