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2021年映画感想

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2021年2月の記事一覧

映画『すばらしき世界』感想 世界の捉え方を問う大傑作

 2021年を代表する傑作になったと思います。映画『すばらしき世界』感想です。  雪が降りしきる旭川刑務所から、独りの受刑者が出所した。殺人の罪で13年の刑期を終えた三上正夫(役所広司)は、今度こそ堅気になるという強い決意を胸に、東京での暮らしを始める。  時を同じくして、小説家を志しTV製作会社を辞めたばかりの津乃田龍太郎(仲野太賀)の元に、プロデューサーの吉澤遥(長澤まさみ)から、三上の密着取材の依頼が舞い込む。三上は、自分の「身分帳」(受刑者の個人経歴を綴った台帳)を

映画『劇場版 殺意の道程』感想 非日常を、日常に変えるバカリズムイズム

 良い意味で、「世紀の凡作」とでも言いましょうか。映画『劇場版 殺意の道程』感想です。  小さな金属加工会社の社長である窪田貴樹(日野陽仁)が、職場のビルから投身自殺をした。下請けをしていた取引先の社長である室岡義之(鶴見辰吾)の口車に乗せられ、多額の負債を抱えて倒産した直後であった。貴樹の息子である窪田一馬(井浦新)は、平然と葬儀の場に顔を出して帰っていく室岡に、遣り切れない怒りを募らせる。  そんな一馬に、従兄弟の吾妻満(バカリズム)が声を掛けてくる。  「復讐するなら

映画『花束みたいな恋をした』感想 サブカル人必中・必殺、地獄の恋愛映画

 長い感想文になってしまいました。この作品観たら、語りたくなっちゃいますね。映画『花束みたいな恋をした』感想です。  お互いに終電を逃したことで、知り合った大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。好きな本、音楽、漫画や映画など、驚くほど趣味の合う2人が恋に落ちるのに、そう時間はかからなかった。大学を卒業後、イラストレーターを目指す麦はイラストのカット描きを、絹はアルバイトをしながら同棲を始める。お気に入りのパン屋を見つけ、捨て猫を拾って飼い始め、同じ漫画を2人で読む

映画『ヤクザと家族 The Family』感想 家族という「呪い」に価値を見出すヤクザたち

 各俳優、全員が演技賞ものの渾身作。映画『ヤクザと家族 The Family』感想です。  唯一の肉親だった父を、覚醒剤で亡くしたチンピラの山本賢治(綾野剛)。クスリの売人からひったくった金で山本が仲間と行きつけの食堂で飲んでいると、店に居合わせた柴咲組の組長である柴咲博(舘ひろし)が目前で襲撃され、結果として山本は柴咲の命を救う。  後日、クスリを捌く侠葉会の加藤(豊原功補)と川山(駿河太郎)に山本たちは拉致されて、クスリを盗んだ報復を受けるが、柴咲の名刺を持っていること