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2022年映画感想

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2022年2月の記事一覧

映画『さがす』感想 「伊東蒼、おそろしい子…!」な一作

 『空白』に続いて、伊東蒼さん父親運が悪いですね。映画『さがす』感想です。  『岬の兄妹』で衝撃的なデビューを果たした片山慎三監督による長編第2作。『岬の兄妹』は、劇場で観た際のインパクトが強く、その湿り気の強い陰鬱さがありつつも、どこかユーモラスがあるという空気は、本当に独特のものでした。  今作が初の商業作品ということなので、一応ミステリー娯楽作品には仕上がっているんですけど、その独特の陰鬱さとユーモアというものは今作でも引き継がれています。やはりこの片山監督の特色にな

映画『ハウス・オブ・グッチ』感想 「グッチ」という名前の呪い

 リドリー・スコット、アダム・ドライバーは共に傑作続き。映画『ハウス・オブ・グッチ』感想です。  巨匠リドリー・スコットによる最新監督作品。2021年の『最後の決闘裁判』が大傑作だったので、御年80を超えてなお、絶頂期に達しているような充実っぷりを感じさせましたが、今作もまだまだ衰え知らずの傑作となっています。  今、何をやらせても名演となるアダム・ドライバーに、老年太りな姿が素晴らしい名優アル・パチーノという豪華キャストの中で、レディー・ガガが気炎を吐く演技というのが面

映画『クライ・マッチョ』感想 爺が見た束の間の心地好い夢

 まだまだ元気、とはいかない年齢に差し掛かっているようです。映画『クライ・マッチョ』感想です。  御年90歳を超えるクリント・イーストウッドの、最新監督・主演作品。『運び屋』が主演としてはさすがに最後になるかと言われていましたが、今作ではさらに老いさらばえた姿でスクリーンに登場してくれました。定年過ぎた爺さんが職場に残ると、人によっては煙たがられることもありますが、この年齢になると居てくれるだけで価値があるようにも思えてきます。  原作はN.リチャード・ナッシュによる同名

映画『偶然と想像』感想 言葉で紡ぐ映画の魔法

 この台詞群、脚本を読んでみたい。映画『偶然と想像』感想です。  2021年を代表する作品『ドライブ・マイ・カー』が世界的に評価される中で発表された、濱口竜介監督の最新作。濱口監督自らが脚本を書いた3つのオムニバス形式の物語で、「濱口竜介短編集」と銘打たれています。  それぞれの物語には繋がりはありませんが、一応「偶然」というものが物語を動かす仕掛けとなっていて、テーマは共通しているようです。  『ドライブ・マイ・カー』が評価され、ロングランを続けてはいますが、3時間を超