【関連含めネタバレあり】仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド感想・考察
今更ながら、仮面ライダー555の周年記念映画「仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド」について、個人的に感じたことを雑多に書いていく。
鑑賞から日が経っているため、不足や思い出補正が入ることをご了承いただきたい。
井上敏樹脚ワールド
草加雅人
井上脚本では、過去のトラウマなどが原因で、何かしら強いこだわりを持つ魅力的なキャラクターが多い。ファイズでは草加がその代表であり、本作のMVPである。
本作では、かの有名なニヤリ顔が2回も登場する。草加のキャラクター性を一枚の画で表現できている。これを見いだした井上先生をはじめとする制作陣にはあっぱれである。
真里への異常な愛は20年たっても建材で、真里が若干受け入れがちになっていることからも、愛情表現が日常で、当たり前になったためゆがんだ関係になっていることがうかがえる。
食事シーン
井上脚本での重要なシーンといえば、食事であろう。本作最後のシーンも、あえてお好み焼きを食べている。お好み焼きという、混ぜて作る料理であることも意味深ではあるが、キャラ同士の関係性が座り順、食べ方、接し方すべてで表現されている。見所満載のラストシーンである。テレビシリーズにおいては、性行為のメタファーとして使用されるほど、重要な場面なのである。
(本作ではついに異形の性行為が映像化された。)
考察
【考察】なぜネクストではなく旧ファイズに勝算があったのか
なぜ通常のファイズであんなに強い2人を倒すことができたのか。ヒントは北崎の「予測が出来ない」という言葉ぐらいである。鑑賞中は少しモヤモヤがあったのだが、少し考察する。
現代では車のアシスト機能や、精度のよい天気予報など、現代では当たり前のように自分でない「誰か」が未来の出来事を予測している。北崎の「予測が出来ない」という言葉を皮肉と捉えれば、技術の進歩により、人間は弱体化してしまったのではないかという問題提起ではなかろうか。アンドロイドでも脳は生前と同じであろう。
ネクストファイズがどのような経緯で作製されたのかは不明だが、スマートフォンよりも、ガラケーとも言われた2つ折り携帯電話を進化させた日本の強さというのも表しているのかもしれない。
【考察】なぜ本作の敵がアンドロイドなのか
本作のボスは草加と北崎の2人のアンドロイドである。なぜ井上先生らはあえてアンドロイドにしたのだろうか。
それはアンドロイドは人間の進化先であるため、と考えている。
オルフェノクの因子をもつ人間は、オルフェノクに殺害されたとき、オルフェノクとして転生する。つまりオルフェノクは人間の進化先ともとらえられる。
ファイズでは、テレビシリーズ、映画で幾度となく人間とオルフェノクの共存について描いてきた。同じく井上脚本の仮面ライダーアギトにおいて、人間は近いうちにみなアギトとなり、どう共存していくのかという流れで終わった。つまり、人間の進化とその先の未来というのは、井上先生の作家性でもあるのだ。
そして現代。技術の進化により、義足の選手が健常者よりも動けるようになってきた。トランスヒューマニズムという考え方も広まり、人間と機械の融合が目前に控える時代において、アンドロイドというのは、リアルワールドでの人間の進化先なのである。
オルフェノクとアンドロイドをダブらせ、果たしてリアルワールで共存は出来るのか?というクエスチョンを我々に投げかけているのではないだろうか。
スマートブレインは首上だけの人間やアンドロイドを社長にする、かなり大胆な人事であることは確かである。
おわりに
その他にも、本作ではミューズというなんとも意味深な666をナンバーに持つライダーが登場する、また仮面ライダーキバにあったような、玲菜の死に際の行動の昼ドラ感など、さらに語りたい部分が多いのだが、長くなるのでこのあたりでとどめておく。
時間の関係でこちらに解釈を任せる展開も多々あったが、これぞファイズである、という新作を出した関係者各位に感謝でしかない。
未読の方は小説版仮面ライダーファイズ(旧 異形の花々)を読めば、さらに井上敏樹という作家性を感じ取れるので要チェックである。
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