【都市伝説】『だるま女』
ある若い夫婦が香港に旅行に行ったときのことだ。
二人は知らず知らずのうちに香港でもかなり治安の悪い地帯
に紛れ込んでいたに紛れ込んでいた。
その中で一軒のブティックを見つけた。
妻はそこである服がとても気に入り、それをもって試着室の中へ入っていった。
ところが、それっきりいつまでたっても彼女は出てこない。
あまりに彼女が遅いので夫が様子を見に行くと、
なぜか試着室はもぬけの空。
驚いて店員に妻のことを聞いてみたのだが、
店員たちはまるで口裏を合わせたかのようにそんな人は見ていない、
そんな人はやってきていないと言い張るのみで、まるで相手にならない。
そこで彼は現地の警察に要請して妻を捜してもらうことにしたのだが、
何一つ手がかりを見つけることができなかった。
その後も、しばらくのあいだ彼は自力でのだが、
いつまでも香港に留まるわけにもいかない。
やむを得ず彼は妻を見つけることができないまま帰国した。
それから一年がたった。
彼は長い休みをとると再び香港にもどってきた。
もちろん妻を捜し出すためだ。
彼は妻の写真を手に香港中を歩いて回ったのだが、
今回もまた妻に結びつくような手がかりは何一つ得られない。
やがて休みも少なくなり、
心身ともに疲れきって帰国を考えはじめたある日のこと、
彼は一軒の見世物小屋の前を通りかかった。
小屋に掲げられた看板には「日本達磨」と書かれている。
彼は見世物などに関心は無かったのだが、
ちょっとした気晴らしがしたかったのと、看板に書かれた
「日本」の文字に興味を引かれてふらりと中へ入っていった。
しかし、小屋に入った彼はそこに晒されていたものからすぐに目をそむけ、そこに入ったことをひどく後悔した。
小屋の中では、手足を切断された全裸の女性が見世物にされていたのだ。
その女性は舌を抜かれているらしく、
声にならないうめき声をあげつづけていた。
あまりに陰鬱な見世物に気分を悪くした彼は
すぐにその場を立ち去ろうとしたのだが、
何か心に引っかかるものを感じ、その女性の顔を改めてよく見てみた。
すると、その女性は、失踪した彼の妻であった。
その後、彼は現地のマフィアに話をつけて
大金と引き換えに妻の身柄を受け取ることができた。
しかし無理もないことだが、
可哀想な彼の妻はすでに発狂していたという。
彼女は現在も国内のとある病院の中で存在している。
声にならないうめき声をあげつづけながら……。
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