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人間だってかわいくなりたい!猫先輩に習う地上支配の方程式

猫かわいい~~~~~~~~~~~~~~~

猫はカワイイのでイイ。
はぁ~~~~~~かわい~~~~~ね~~~~~~ネコはさ~~~~~
猫になりたい!

はい。

 地球の支配者は猫です(王者は人間だと思っていた君!それは傲慢だぞ)。
 猫は凶悪だ。寄生虫(トキソプラズマ)を媒介し、数多の小動物を絶滅に追いやるハンターだ。
 奴らの身体は関節の可動域が広いおかげで柔軟で、驚異的な移動力や着地ができる。敵に悟られないよう体臭は少なく、汚れないよう毛づくろいは手を抜かない。巨大でまんまるな瞳は得物のを動きを捉え、夜目も利いて感情表現が豊か。そしてプニプニの肉球は鋭い爪を収納し、物音を立てずに移動できるしカワイイ~~~~~~~~~~~~~~~~~
 マジカワ。
 小型の肉食動物として進化した猫は、狩りに特化した結果、とてつもなく「カワイイ」身体と仕草を手に入れた。はい猫の勝ち。人類の負け。

 人間にとってネコは食いでも無いし狩りに役立つわけでもない!
 犬と違って意思の疎通ができるわけでもなければ忠誠心も無いし、門番もできない!
 ネズミが狩れる?あれ遊び程度の習性で、現代の餌に困ってない猫は民家を防衛できるほど働いてくれないそうですよ。役立たずじゃん!!
 こんな不都合な存在がなぜヒトの隣で繁栄しているのか!!
 人間パンチで猫顔面ぶん殴れば駆逐など容易いはずだ!!
 でもできない。
 カワイイからである。
 猫は「かわいさ」による実効支配の結果、たった数千年で世界中に生息域を拡大し増え続けている。人類がそれに何万年かけたと思ってるんだ(怒)!
 ヒトは猫を愛し、時代と場所によっては崇拝すらしてしまう。
 そう、猫は「カワイイ」によって地球最大規模の動物ホモ・サピエンスを支配した最強の生物なのである。
 しかも我々は好んでその支配を受け入れ、苦労や屈辱を感じることがない。下々に苦労を強いる権力者や神様などとは大違いだ!
 カワイイを持つものは、最良の支配者なのである!!

 そんなわけで、地球の支配者になりたい人類はカワイく進化します。
 それが生物進化として間違いじゃないことは、猫先輩が証明済みなので。
 我々は学んで発展できる生物なので。
 なります。
 猫みたいに。

 身体は柔軟で小型化して、猫耳が生えて、尻尾もとりもどします。
 あと目が大きくなって鼻やアゴが小さくなる。
 非力になる代わりに、永久に幼児的で愛らしいデザインを獲得します。
 ふざけてないです。
 そういう未来人がいます。
 『省力種(エコヒューマン)』と言います。

小さな身体に秘められた生存戦略

 実のところ「人体のサイズをコンパクトにして退化や減少を避けつつも、人類の容量ごと小さくしてしまうだろう」というアイデアは、現時点で最も有力視されている未来人像の1つだ。
 (極端な例を挙げると、地球より小さい火星に移住するなら頭の大きさはそのままで身体が小さくなる…とか。当たり前のようだが人体のサイズは、自分に許された範囲の大きさにしかならない!)

 人類の未来を想定する時、「エコ人間」の存在は確実に登場する。
 環境に優しい人種を作ろうというコンセプトは環境問題に関心があれば当然の発想だし、競争を促すたぐいの進化をやろうとすれば「犠牲者を出してでも人類を存続させる」という過激な覚悟を要してしまうからだ。
 平和的に人類を拡張しようと思った時、人体の小型化はきわめて有効な選択なのだ。

 しかし反面で、小型化は攻撃能力とトレードオフ。
 だから「エコ人間」になる進化を選ぶなら、非力を補う生存戦略をとらねばならない。
 その一つが先述の「カワイイ」だ。
 実際、カワイサというのは自然界でも抜群に強い能力の1つ。
 わかり易い例として、動物が他生物の幼体の親代わりになる事例がある。敵勢力の子供を見捨てられず育ててしまうオオカミ少女のような例は1つ2つだけではないし、そこを巧妙に利用した托卵という行為もある。
 動物には子育てを完遂するために母性が備わっている。
 特に幼生的可愛さは多くの生物に共通する価値観として根付いており、子供の可愛さというのはそれを逆手に取って生存率を上げるための戦略に他ならない。
 そしてこの生存戦略は非力な「エコ人間」ととても相性が良い!

 そんなエコ人間の典型例である「省力種」は他にも、小さな体を活かして自己防衛能力を上げるための特性をいくつも獲得した。

 1つは軽くて便利な身体
 身体の軽量化によって実現したしなやかな筋肉と可動性の高い骨格は、落下や衝撃に対して大きな防御力になる。
 幼い子供が高所から落下しても生存しやすいのと同じ理屈だ。
 また、小型で柔軟な身体は俊敏性も高く、優れた逃走能力を実現する。
 くわえて狭いところに侵入できるし、尻尾のおかげでバランス感覚もすば抜けている。人間の皮膚を持ってすれば隠密性も確保でき、身体能力としては逃走機能に全振りしたような塩梅だ。
 かくれんぼも追いかけっこもお手の物だぞ!

 2つめは危機回避能力
 耳穴の位置はそのままで、外耳が上に伸び巨大で自由に動かせるようになる。それはまさしく猫耳の形状になるが、これは集音機能に長け音源定位能力がとても高い。
 必要酸素が減ったために鼻は小型化するが、ニオイを嗅ぐ機能には差し障りないどころか積極的に嗅覚を強化する。
 2つが合わされば状況把握と対象との距離・方角を正確に知る能力を強力にアップデートでき、省力種は無用な危機をいち早く回避できるのだ。
 これらの進化は大きなエネルギーを対価とする賢さや筋力の代わりに発達するもので、脳や骨格を巨大化させられない省力種にとって非常に重要な能力だ!

 そして特筆すべき3つ目は、愛玩性能である。
 「カワイイ」を目指した省力種は幼児体型のまま成長を止め、防衛能力の特化と両立する形で猫の身体のデザインを上乗せした。
  小さく非力な身体は“強者”への安心を与え、庇護欲を煽るだろう。
 顔面に比して巨大な瞳や耳や尻尾は、感情表現を的確かつ愛らしいものに置換する。
 省力種はチカラで対抗すれば絶対に敵わないことを重々承知で、強い生物の庇護下に入る。
 飼い主たちは「カワイイ」の恩恵にあやかりながら、省力種たちになにをしてあげられるかを常に考え続けるが‥彼らのコミュニケーション能力をもってすれば、飼い主を悩ませること無く世話してもらえるだろう。
 “飼いやすさ”もまた、省力種の能力の一つなのだ。

 そして省力種は、気ままで安心な生活を手に入れる。
 かつて猫以外のあらゆる生物が到達できなかった境地である。

省力種が支配する非暴力非服従の社会

 省力種はその特性上、単一で繁栄できない。
 地球で最も強い生物(他人種)に相乗りしなければ安心できないのだ。
 そうなればもちろん、省力種の運命はその強者に握られ、管理されることになる。

 だが人類の知能をそのままに総容量さえコンパクトにできたなら、それでイイのだ。

 そもそも生物進化の目的とはなんだろうか?
 長生きすること?――違う。進化は目的のためなら、簡単に寿命を削る選択をする。
 数を増やすこと?――ならば微生物が王者で、それ以上の進化の意味は失くなってしまう。
 子孫を残すこと?――だったら同性愛の実在や働き蜂などの「生殖しない個体」に説明がつかない。

 実は生きること自体に目的なんかなくて、環境に適応した生物が増殖するだけだ。
 現生人類は長いあいだ生存競争で勝つことを考え続けてきたので見失いがちだが、生物進化において他の生物に(何らかの競技―数や寿命や強さ)で勝利することはさして重要ではない。
 もし競争や生活を人任せにして生き残れる方法があるならそれが一番良いに決まってる。進化に正解があるとしたら、それは「楽チンに生きていけるシステムにのっかること」だったのだ!
 それを実現できるのは知力や筋力ではなく、ずば抜けた可愛さを伴う「魅力」なのだと気づいた人類こそ省力種なのである!

 もちろんこれでは、時に強者にひどい目にあわされることもあるだろう。
 それがあるから逃走能力に特化したのだが、強者が本気を出せばきっと為す術無くやられてしまう。
 だがそれも厭わない。
 そんな時には別の強者が意地悪な強者を糾弾し、苦しめるからだ。

 こうして強者たちは何度も省力種の愛しさと儚さを再確認し、庇護の意志を強化する。
 省力種は気ままな暮らしを演じながら、可愛さを振りまき続ける。

 そしてその構図が完成した時、精神的に依存しているのは実は強者の方なのだ。
 自身の非力さをよく理解している省力種は、どんなに信頼している飼い主が相手でも「暴力への恐怖」から脱出できない。
 飼い主の裏切りは致命傷だ。だから強者に心から服従するという事ができないし、誰かに与えられる幸せに頼らない。
 生活は支配されても、心は誰にも渡さない。
 いつでも自分の気分をなにより尊重し、自分の幸せは自分で決める。
 非力な彼らは臆病なために、心が自立してしまうのだ。

 信頼できるのは自分だけ。
 だから他者を魅了する「カワイイ」がいつでも必要だ。
 省力種に至るのは、甘え上手で世渡り上手な器用で賢い人間に違いないのだ。

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