手触りのない世界に生きるということを短歌で感じる
近づくだけで、あるいは、手をかざすだけで、ドアが開く。少し前の時代から考えてみたら、魔法としか言いようのない状態が、当たり前になっている。
魔法が当たり前になっている。そして、私たちは、電車のドアが、コンビニのドアが、レストランのドアが、百貨店のドアが、勝手に開くことに疑問も抱かなくなってしまっている。
そして、私たちはドア以上に多くのものから、重みや手触り、そして、手応えを奪ってきた。
たとえば、twitterやライン、メールなど、手触りもなく遅れてしまうメッセージがある。そのほかにも、本は電子書籍となり、音楽はデータとなり、イベントや観劇はオンラインでもみれるものも増えてきている。
どんどんと手触りが失われてしまっている。
このような現実を改めてみまわしながら、「誰もそこから先へは行けない」という下の句を読むと、私たちは手触りのない世界を本当に前に進めているのだろうかと疑問に思えてしまう。
連絡はオンラインで、仕事はテレワークで、効率を優先させて迅速に進めているつもりが、本当はどこにも進んでいないのではないだろうか。
進んでいるようで進んでいない。踏み出したようで踏み出していない。私たちはもしかしたら、ずっと前から、足踏みばかりしているのかもしれない。
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