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“寄り道”たのしい煮込みメニュー

 「風が吹けば桶屋が儲かる」というほど突拍子もない展開ではないが、カレーやシチューなどの煮込み料理は段階ごとに味わいが変化して、それぞれが「独立した料理」としても愉しめる魅力がある。目的を達成する過程の、いわば“寄り道”が面白い、というか——。とかく食材を余らせ気味な独りメシでもプロセスごとに句読点が打て、味わいを変えながら材料を使い切れる達成感、鍋を浚える充足感も満たしてくれる。そして何より「手軽にできる」というのも煮込み料理の大きなポイントなのである。

 「寄り道料理」のポイントは「淡白から濃厚へ」。いうなればクレッシェンドな味付けを意識すること。今回の料理は最終的にはビーフシチューに仕立てるが、まずは滋味あふれる具だくさんスープから愉しむとしますか。
 材料は、じゃがいも(煮崩れしにくいメークイン推奨)、セロリ、玉ねぎ、にんじん、今の時期なら芽キャベツを入れても美味しい。それと、肉は牛スネ肉。スーパーでは「カレー・シチュー用」と名乗って一口大にカットされたパックものが多いが、できればブロックで買ってきて自分で好みの厚さに切り分ける方が断然美味しい。

 調理工程は至ってシンプル。
 野菜類は、思い切って大きめにカット。じゃがいもや玉ねぎは半分に切る程度、人参は皮付きのままブツ切りで十分。この後、何度も火を入れるので小さく切ってしまうとどんどん煮崩れてしまうのでご注意を。
 野菜の準備ができたら、スネ肉を好みの大きさに切り分ける。こちらもチマチマせずに厚みを持たせて。フライパンに薄く油を敷き、しっかり両面をソテー。こんがり焼き色がついたらいったん取り出す。
 さあ、ここから煮込み。
 深さのある鍋を用意して、野菜、牛スネ、水をたっぷり注いで点火。月桂樹の葉があれば一緒に入れる。火加減は中火の強火。クツクツ沸いて灰汁が浮きはじめたら丁寧に取り除く。
 灰汁が落ち着いたら、ここからは、ごくごく弱火。蓋をしてコトコト煮込む。「味付けは?」と不安になる方もおいでかと思うが、どうぞご心配なく。牛スネがいい仕事をしてくれる。1時間も煮込めば、材料はすっかり柔らかくなっているはずだ。

 さぁて、味を付けていきますか。
煮込み料理に限ったことではないが、味付けの際のポイントは「素(す)の味をたしかめること」。調味料を加える前の素材だけの味を自分の舌で確認することが大切。スープを小皿にとって味わってみると、淡いながらも牛肉の頼りがいのある風味が口いっぱいに拡がるはず。まず、塩、コショウで整えてみるとしようか。「まだ薄いな」と感じたら、コンソメの素を軽く加えて。ほうら、滋味あふれる牛スネのスープが完成。バケットと白ワインでいただけば、ちょっとしたディナー、おもてなしにも◎。
 ここでご注意!1時間煮込んだ食材はとても柔らかくなっているので調味料を混ぜるときは充分に気をつけて。お玉の縁が当たるだけで崩れてしまうこともある。

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 おいしくスープをいただいたら、翌日は別鍋にお玉2杯程度を取り分けて、ご飯を入れておじやでどうぞ。お好みでバターを少し加えても良し。まだ残っているスープに、市販のビーフシチューの素を加えれば、素材の味がよく染みた絶品ビーフシチューが手間なくできる。
 牛スネの代わりにソーセージを使って、【ポトフ】→ミルクとシチューの素をプラスして【ホワイトシチュー】→カレー粉を入れて【白いカレー】なんていうアレンジも。それでも残ってしまったら、ご飯にかけてスライスチーズを載せてオーブントースターで焼けばドリアもできる。
 自由な発想で“寄り道ひとり飯”。皆さんもお愉しみただけたら嬉しい限りである。

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<牛スネのスープ 材料>
・牛スネ:300g(ブロック推奨)
・じゃがいも(メークイーン):2−3個
・セロリ:1本
・にんじん:1本
・玉ねぎ:1−2個
・芽キャベツ(あれば):1パック
・塩:適宜
・コショウ:適宜
・コンソメスープの素:適宜

※朝日新聞webメディア「DANRO」掲載分をリライト

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