新しい新しさを示唆するカイダン エディションズ
*このテキストは「AFFECTUS subscription」「AFFECTUS letters」参加メンバー限定有料ニュースレター「LOGICAZINE(ロジカジン)」で、2019年9月24日に配信されたタイトルです。
【こんなニーズの方におすすめ】
・デザインやトレンドの分析・考察が大好きで毎週読みたい
・専門学校生・大学生でファッションデザインの勉強に使いたい
・アパレル営業・販売の方で、モードファッションの情報収集と商品の言語化の参考にしたい
本文は以下から始まります。
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ファッションの魅力は一面からだけでは断定できない。私の好きな服をあなたは嫌いかもしれないし、あなたの嫌いな服を私は好きかもしれない。そのことがしばしば論争を起こして、ファッションを難しいものにする怖さがある。
今回ピックアップしたのは、女性の服では本来なら魅力ではないと思われる要素を魅力に転換させた、日本人には耳慣れた単語をブランド名に使用しているロンドンのブランドである。
日本語の「怪談」をブランド名に取り入れた「カイダン エディションズ(KWAIDAN EDITIONS)」は、夫婦でもあるフランス人デザイナーのレア・ディッキリー(Lea Dickely)とベトナム系アメリカ人デザイナーのフン・ラ(Hung La)が2016年にスタートさせた若いブランドだ。
なぜ「怪談」をブランド名に使用しているのか。レアとフンは初めてのデートで映画『シャイニング』を観るほどホラー好きであり、小林正樹監督のオカルト映画『怪談』がブランド名の由来となっている。
ブランド名のエピソードやホラー好きという趣向を聞くと、カイダン エディションズはダークでアヴァンギャルドな服なのかと思わせるが、その想像は裏切られる。
カイダン エディションズのデザインはテーラードジャケットが数多く登場し、シャツとパンツのスタイルが毎シーズン現れ、シックでシンプルなデザインが特徴の端正なスタイルが魅力のウィメンズウェアである。複雑なディテールやパターンは見られない。クリーンでシンプルなカットを持ち味に、服を丁寧に作って見せている印象を抱く。
ただし、上品な美しさに落ち着いているわけではないし、ベーシックウェアと評するすることにも違和感を感じる。スタイルからはダークさがにじんでいる。光沢のある素材が使われることが多いが、その光が鈍く怪しげに感じらてきて、時折色で赤が使われるが、その色味も暗く濃い赤で、どこか血を連想してしまう。数は少ないがプリントも使用されて、2019AWコレクションに登場したシャツに施されたプリントはおどろおどろしい雰囲気を持つ抽象的な柄で、人間の顔が恐怖で歪んだ表情からインスピレーションを得たのではないかと思わせる怪しさがあった。
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