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白とグレーの美しきリノベーション

僕は白とグレーという二つの色が好きだ。それはミニマムなファッションが好きな僕にとっては自然なことになる。白とグレーを用いられたファッションには、クールでシャープなイメージが迫ってくる。だけど、そのイメージは白とグレーの一面に過ぎないと思う。

クールなイメージが感じられる白とグレーにも優しく柔らかく感じられ、気分が安らぐ瞬間がある。そのことを、あるマンションリノベーションが証明してくれた。

それはstraight design labによるマンションリノベーション「国立フラット」である。

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straight design lab「国立フラット」より

「国立フラット」は1981年築のマンション住戸をリノベーションしたもので、床はグレーに塗装されたラワン合板、白いペンキで塗られたラワン合板張りの壁と天井で仕上げられている。完成された住戸は雑多な空気とは無縁な緊張感のある、けれど光によって淡く柔らかく照らされたミニマム空間を見せていた。

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straight design lab「国立フラット」より

白いタイルの壁とステンレス製のキッチンには最小限の道具だけが目に見える場所に置かれ、凛とした佇まいはリビングだけでなくキッチンでも継続されていた。アイランドキッチンが人気の今だが、僕には壁付キッチンもありだと思わせる魅力がこの風景には潜んでいる。

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straight design lab「国立フラット」より

玄関を開ければ、このミニマムな美しさに包まれた空間は始まる。芦野石で作られた床が整然とした空間に自然の趣を与え、綺麗に整えるだけの空間には終わらせないノイズが入り込んでいて、そのノイズがこの空間の凛々しさをいっそう清く美しくしている。

白とグレーに支配された空間は、インダストリアルな内装によく見られる色のコンビネーションだが、「国立フラット」にそんなイメージはない。躯体現しになった壁はあるけれど、それはインダストリアルなイメージというよりも自然の優しさを添えているようで、躯体の壁と白い天井が接するこの写真を見ていると、僕は穏やかな気分になっていくのが自分でもわかる。

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straight design lab「国立フラット」より

リノベーションであれ新築であれ、今は住宅の内装に使われる床はフローリンが主流。無垢のフローリングが見せる木目の上は歩きたくなる魅力が確かにある。けれど、僕はグレーの床も好きだった。そしてできるだけ目地の少ない床がいい。フラットであればあるほど、グレーの床はかっこいい。

いくつもの住宅写真を観察しているうちに、ファッションと同じように住宅設計にもトレンドがあることを知った。床に関していえば無垢のフローリングはトレンドの中心。だからこそ、僕は余計にグレーの床へ惹かれてしまう。トレンドにカウンターを打つことが好きな性分なんだ、僕という人間は。

光に淡く照らされた「国立フラット」は心地よさを朗らかに醸す。

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straight design lab「国立フラット」より

クールでシャープなイメージだけが白とグレーの側面ではない。優しく朗らかな一面が白とグレーにもある。決して冷たさと無機質さだけが白とグレーの特徴ではない。

願わくばファッションでも、優しく朗らかな白とグレーで作られた服が見てみたい。ナチュラルな素材感で程よくリラックス感を含むスリムシルエットで、白とグレーが使われたミニマムなデザイン。そんな服を。

木材が見せる自然素材の色に囲まれた気持ちよさもいいけど、クール&モダンに見せる現代都市を代表する白とグレーで作られた家には、光に包まれて暮らす心地よさがきっとある。

〈了〉

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