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エイターリンクのワイヤレス給電技術で、世界が変わる姿が見たい。VCの視点で見る、エイターリンクの魅力と可能性【社外取締役 野村直児】

シリーズAの資金調達においてリード投資家を務める慶應イノベーション・イニシアティブでプリンシパルを担い、社外取締役としてエイターリンクに参画している野村直児です。今回は、ベンチャーキャピタリストという立場から見た、エイターリンクの魅力や将来への期待についてお伝えします。

ワイヤレス給電のエンジニアからベンチャーキャピタリストに転身

私自身の経歴を少しお話ししますと、もともとエンジニアであり、前々職のNTTドコモでは、携帯電話向けワイヤレス給電装置である「おくだけ充電」の開発に携わっていました。これは、Qi(チー ※ワイヤレスパワーコンソーシアムが策定したワイヤレス給電の国際標準規格)を搭載した電磁誘導方式の装置で、2011年に携帯電話向けとしては世界で初めてドコモがつくったものです。

2010年10月のCEATECにてデモ展示した、世界初のQi搭載ワイヤレス給電携帯のプロトタイプ

その後、自らの希望でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)組織に異動し、国内外で携帯電話のコア技術を中心とした投資関連業務に携わっていました。当初はエイターリンク発祥の地でもある、スタンフォード大に近いオフィスに勤め、ベンチャー企業の人と交流していたのですが、技術のことは興味があるので話はできるものの、人の話、お金の話となると自分にはさっぱりで。これが一つのきっかけになり、ドコモ退職後は一念発起して香港のHKUST Business School(香港科技大学)に通い、MBAを取得しました。その後は、INCJ(元・産業革新機構)を経て、2020年からは慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)に参画しています。

DOCOMO Innovations在籍時に同僚たちと

ワイヤレス給電に携わっていたことから開発の現場を離れた後も、この技術には注目してきました。ただ、私は開発をしていたころから、携帯電話やスマートフォンにおけるワイヤレス給電には懐疑的でした。なぜなら、ケーブルを使うときと比べて充電速度は半分になるし、購入コストも余分にかかります。ワイヤレスといっても充電パッドは必要だし、もっというと、携帯電話は有線でつないで充電しながら使えるほうが便利じゃないか、と。開発当時は、こういうことは思わないようにしていたんですが、感じていたことはあながち間違っていなかったと思います。というのも、実際、新しいプロダクトが出てくることはありませんでした。サムスンが携帯電話向け磁界共鳴方式の給電装置を当時開発していたものの、製品としては出てきませんでしたし、ドコモも空港ターミナル等にワイヤレス給電台を設置していましたが、ワイヤレス給電で携帯を充電する必要性を見出せず、2、3年で収束させてしまいました。その後、2017年発売のiPhone8にQiが搭載されましたが、やはり大きな話題にはなりませんでした。結局、2011年以降のワイヤレス給電に対する僕の結論は、「製品化はされたものの、世の中の何かは変わったんだっけ?」というもの。新しい価値を生み出していない状況にある、と感じていました。

エイターリンクのワイヤレス給電技術は、世のため人のためになる

ですから、昨年(2021年)2月、Kawasaki Deep Tech Accelerator ピッチイベントの会場で代表の岩佐さんが、「ワイヤレス給電は、FA(ファクトリーオートメーション)やビルマネジメントの領域で非常に有用だ」とプレゼンするのを聞いたときには、全身に衝撃が走りました。儲かるうえに、世のため人のためになる技術をピンポイントで貫いているな、と。「これはいける」と瞬間的に感じたので、さっそくコンタクトを取ったのですが、エイターリンクはすでにいろいろなところから声をかけられていていました。それでも、まずは情報交換からはじめ、エイターリンクのさまざまな方にもお会いしながら、頻度高く地道にコミュニケーションを取るなか、昨年9月、僕たちKIIの出資を受けていただくことに至りました。

その後、12月からは社外取締役として、エイターリンクの事業に携わっています。僕の役割は大きく二つです。一つはワイヤレス関係の企業が加入する任意団体「ブロードバンドワイヤレスフォーラム」のなかの、一つのワーキンググループに所属し、リーダーとして意見を取りまとめ、総務省に提言する活動です。もう一つはベンチャーキャピタリストとして、IPO関連の業務、人材採用支援をはじめ、皆さんからの相談ごとに対応しています。

エイターリンクのオフィスで、代表取締役の岩佐さん加藤木さんと

エイターリンクの雰囲気

大手町のオフィスへは、いまは定期的に通うというよりも何かあれば伺う、というスタンスですが、結局なんだかんだで週1で通っています。

私はいま、ベンチャー企業の働き方にとても興味があって、そのなかでもエイターリンクのそれはとてもいいなと思っています。コロナによってフルリモートに移行する会社は多く、 KII自体も完全リモートですが、エイターリンクは基本、オフィスに出社するというスタンスです。もちろん正解はありませんが、私がいろいろな人の話を聞いたところでは、ベンチャーのころ、特に初期のフェーズではオフィスに集まって働くほうがいい、という意見は多いですね。「みんなで一緒にやっている」という一体感、スタートアップというDNAを植え付けるためのムードづくりというか、言葉に表すのがなかなか難しいそれらを共通認識として持つ会社ほど勢いというか、やる気というか、凄みがあります。実際、エイターリンクからも、そんな空気を感じています。

ワイヤレス給電技術で、変わる世界を見せてほしい

エイターリンクがいま、注力している領域は、FAとビルマネジメントの二つです。前者は、すでに大手企業を顧客に抱え、社会実装の本格化に向かっています。これは、いわば“ベンチャー企業の成功の方程式”といえるものです。たとえばうちの社長の山岸(KII代表取締役社長 山岸広太郎氏)はグリーの共同創業者ですが、同社がガっと伸びたのは、初期からKDDIの支援や提携があったことが要因の一つだったと聞いてます。ベンチャーが著しく成長するときは、本気でホールドしてくる大手企業が存在するのかどうか、が成功のカギになっています

こうした強力なバックアップのもと事業を動かせること自体、非常に頼もしいことですが、ここにもう一つアドオンとして乗っけられるのがメディカルの分野です。エイターリンクはペースメーカーの開発を進めています。既存のペースメーカーは電池を内蔵する必要があるため、ある程度の大きさがありますし、電池には寿命があるので定期的な交換を要します。そのたびに胸を開く手術が必要となると、ペースメーカーが必要な方は高齢者が多いので、体力的にも非常にこたえます。その点、エイターリンクのペースメーカーは、米粒ほどの大きさです。これはワイヤレス給電で動かすことができるからこそ実現したサイズであり、これならカテーテルを使って装着できるので、からだに大きな負担がかかりません。このようにワイヤレス給電が人の命を救う技術にもなることは、エイターリンクに大きな伸びしろがあることを意味します。実用化まではまだまだ時間がかかると思いますが、こうした未来を描けることもまた、とても楽しみです。

会社の成長スピードが高まるにつれ、いろいろなところからいろいろな意見が聞こえてくると思いますが、エイターリンクの皆さんには、小さくまとまって満足するのではなく、いわゆるユニコーンやそれ以上の企業規模を目指してほしいと思いますし、それを目指せるだけのポテンシャルを秘めていると思っています。ですが、それ以上に期待しているのは、エイターリンクのワイヤレス給電で、僕たちの生活にパラダイムシフトを起こしてほしいというもの。ワイヤレス給電で生活が変わる姿を、ぜひ世界中に見せてほしいと思っています。その世界の実現に向けて、僕自身もさまざまな支援を惜しまず、伴走していきたいと思います。

エイターリンクのメンバーと


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