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リスクマネジメントに何が必要か

リスクマネジメントとは何か特別のことのように思われる方が多いと思いますが、決して特別なことではありません。例えば、朝起きて朝食に何を食べるか、何時の電車に乗るか、今日は残業しようかと言うふうに、私たちは常に何かを決断しています。今日は朝食にパンを食べたいと思ったけどご飯しかなかった場合、いつも乗る電車が15分も遅れてやってきた場合、そのような想定外の事態に遭遇した際、その影響をできるだけ小さくしようと考えて行動するでしょう。パンがなければ会社の近くの喫茶店でモーニングを食べよう、電車が遅れてもいいように少し早めに家を出ようという人もいることでしょう、それらが全てリスクマネジメントです。

リスクマネジメントに必要なもの

では、リスクマネジメントに必要なものはでしょうか。真っ先に思いつくのは、リスクマネジメントの知識でしょう。例えば「リスクマネージメントにはこんな国際規格がある」とか「リスクマネジメントは確率論だ」と考える方もいらっしゃるでしょう。それは間違いではありません。しかし、リスクマネジメントで知識より重要なのは「想像力」です。

ある機械を操作する場面を想像してください。事故や故障などのリスクが最も低くなる使い方は、その機械の取扱説明書に書かれているとおりに操作することです。すべてのユーザそのようにすればいいのですが、中にはショートカットのような使い方をしたり、誰もやらないような使い方をする人もいます。洗ったペットを電子レンジで乾かす人もいるぐらいですから。そういう「ありえないこと」や「ありえない人」の存在をどこまで想像できるかによって、リスクマネジメントの質は変わっていきます。

なぜ想像力が必要なのか

リスクマネジメントプロセスには、リスクとなる要因を特定する「リスク特定」という段階があります。リスク特定で明らかになったリスク要因に対し、リスクの影響を低減させるためのアクションが計画・実行(これを「リスク対応」といいます)されるのですが、リスク対応の効果は、このリスク特定がどこまで精緻にできるかによって変わってきます。そのために必要なのが想像力です。「そんなやついない」「そんなこと起きやしない」と思うようなことをできるだけ多く想定できれば、リスクが現実化しても、組織が落ち着いて対応できるようになります。

逆に、リスクマネジメントにおいて避けるべきは「思い込み」や「固い頭」です。これらは思考や想像の幅を狭め、重大なリスク要因の見落としを引き起こす可能性がある習慣や態度です。特に成功経験や実績のある人ほど、その罠に陥りやすくなります。そのような人が「八割がた大丈夫」というと安心しがちになりますが、それは同時に「二割ダメなこともある」ということでもあります。その二割が現実化したらどうなるかを想像できるかが、リスクマネジメントの成否を分けます。

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