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ビジネスリスクとインテリジェンス

飽きっぽい性格なのは昔から自覚していましたが、まさかここまで更新してなかったとは、自分でも呆れています。

最近、VUCAという言葉がビジネスの世界でバズワードになってきました。VUCAはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまい性)の頭文字をとった言葉で、1990年代後半のアメリカ陸軍で最初に提唱されたものといわれています。当時の世界は、永遠の競争相手とみられてきた共産主義国ソ連が崩壊し、冷戦が終結を迎えたところでした。冷戦が終了したことで世界は安定するとみられていたのが、実際はより国際情勢が不安定化したことから、冷戦終結後の不安定、不確実、複雑、曖昧な多国間の世界を表現するために、アメリカ陸軍大学(US Army War College)がVUCAという概念を導入したといわれています。

VUCAの時代のビジネス、特に日本のビジネスにおいて決定的に不足しているのが、リスクマネジメントとビジネスインテリジェンスだと考えています。リスクマネジメントとは、ビジネスの結果に影響を与える「不確実性」をどのように制御するかであり、達成すべき目標との関係でどのような手法をとるべきかが決まります。一般的にはリスク回避、リスク低減、リスク移転、リスク受容の4つに分かれますが、それらは全て達成目標に応じて採用されます。
また、リスクは損失だけに限りません。予想より上振れすることもリスクです。リスクのそのような特質の理解が社会で進んでいないため、ことさら損失につながるリスクマネジメントに意識が集中し、戦略目標達成とビジネス成長のチャンスにコミットする胆力を、日本はどこかに置いてきてしまったのかもしれません。

もう一つのビジネスインテリジェンスは、ビジネスにおける任務遂行上の意思決定に必要な情報活動(インテリジェンス)全般を指します。ビジネスインテリジェンスはBIとも称され、主に社内のデータ分析から知見を得ることに重点が置かれていますが、より広くインテリジェンスを捉えると、戦略環境の分析、戦略目標の設定、任務の設定、能力見積、脅威のリスク分析、脅威判定、(戦略の)効果測定、教訓収集などの活動も含まれます。これらはすべて、戦略目標達成のための任務遂行に貢献するものでなくてはなりません。言い換えると、いくら情報活動を適切に行っても、目標と任務の設定が誤っていたら、望む結果が得られる蓋然性は極めて小さくなるでしょう。そのような事態に陥らないようにするために組織に警告を与える「レッドチーム」としての役割も、インテリジェンスには求められます。

上記のリスクマネジメントとビジネスインテリジェンスは、自衛隊や警察などの国防・公安組織を除き、日本では本格的に学べる場が多くありません。普段のコンサルティング業務においても、リスクマネジメントとインテリジェンスを意識している経営者や経営企画層にお会いできる機会はまだ少ないのが現状です。VUCAの時代、企業経営支援に関わる中小企業診断士として、そしてコンサルタントとして、これらの視点からも支援企業の経営の方向性を一緒に考えられるような力を持たなければならないと考えています。

次は、リスクマネジメントとインテリジェンスに必要な、確率とデータに関する考え方とセンスについて、思うところを記したいと思います。

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