【学会誌】アルカリ脱脂剤と環境

こんにちは。
『表面技術』2023年7月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になったポイントをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「カーボンニュートラルの視点から考えるアルカリ脱脂剤の開発」で著者はユケン工業㈱の辻さんです。


内容

めっき工程で用いられるアルカリ脱脂剤に関して、製造~使用・廃棄まで含めた二酸化炭素排出量の算出と、排出量を低減するために低温でも脱脂能力の高いアルカリ脱脂剤の検討結果について解説されています。

二酸化炭素排出量の算出

二酸化炭素の排出量は、以下の5つのセクションに分けて推算されています。

  • 原材料

  • 製造

  • 輸送

  • 使用

  • 廃棄

排出原単位データベースを用いたり、作業内容や投入熱量などから消費エネルギーを算出したりして、計算しているようです。

被脱脂材料・処理温度でCO2排出量に大きな差

ワークの材質によって、使用される脱脂剤の成分や処理条件が異なります。

記事の中では、鉄系材料と非鉄系材料で比較しています。
非鉄系材料の方が、〈原材料〉〈使用〉の排出量が半分くらい少ないようです。
特に大きいのは〈使用〉で、ここは処理温度の差が効いています。鉄系材料は高温で使用することが想定されているため排出量も多くなるようです。

使用と廃棄でCO2排出量が多い

セクション別でみると、〈使用〉が最も大きく、次に〈廃棄〉が排出量が大きくなっています。

〈使用〉は加熱しながら処理しているので、一番大きくなるのは納得です。
このため、如何に低温で処理できるか、が排出量削減で重要なポイントになるようです。

低温脱脂剤の開発

低温化に向けて着目したのが、脱脂剤に含まれる界面活性剤のようです。
界面活性剤は油分を取り囲んで液中に放出・分散させる効果があります。

低温では除去しないといけない油分の表面張力が大きくなるので、低温でも機能する界面活性剤で表面張力を下げることで、除去効果をあげようとしています。

表面張力という点では、油分を表面から引きはがすための動的表面張力を下げることが重要だと書かれています。
(動的表面張力は非平衡時の表面張力らしいんですが、勉強不足で上手く説明できません…)

そんな方針で開発を進めたところ、目的の機能が達成できたとのことです。
(材料メーカーの記事にしては珍しく出来た材料・商品に関しては詳しく書いていません。商品化には至ってない?)

廃棄量削減のために再利用

2つ目にCO2排出量の多い〈廃棄〉については、再利用することで改善しようとする試みが解説されています。
〈廃棄〉は燃焼処分が主に用いられるので、結局、使用する熱エネルギーを如何に小さくするか、廃棄量を如何に小さくするかが重要になります。

具体的には、特殊な油分離剤を添加します。
低温時に油分離剤を添加・分散させたあと、高温にすると油分・界面活性剤を液面に浮上させることが出来ます。
再表面の液を取り除けば、残った液は再利用可能になるそうです。

この方法で廃棄量を90%削減できるということなので、かなり効果は大きそうです。

界面活性剤も除去されるので、これは補給しないといけないようですが、廃棄する際は水分を飛ばすためのエネルギーが大きいと推測できれば、単純に廃棄される液量を減らすことが効果的なのかもしれません。

界面活性剤の機能から、開発コンセプトまでをしっかり説明してくれていて、個人的には良記事でした。

今日は以上です。

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