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【学会誌】甲冑に使われた漆の密着性

こんにちは。
もう4月ですが、まだ『表面技術』2023年2月号を読んでいます。
読んだ記事について内容をメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「古墳時代に作られた黒漆甲冑における乾燥方法と密着性」で著者は技術士の山本さんです。

内容

古墳時代の甲冑に用いられている漆に関して、非破壊分析や界面構造分析の結果から、母材である鉄材との密着性メカニズムについて考察しています。なお、古墳時代の甲冑は文化財としての価値が高いため、界面構造を分析するためには、それを模した試験片を作製して断面分析を行ったそうです。

ポイント

  • 古墳時代の甲冑に用いられる漆は、定説とされる常温乾燥方法で成膜したものよりも鉄との密着性が良いため、焼き付け乾燥が施されている可能性が高い。

  • 焼き付け乾燥では、漆と鉄の界面に厚さ数μmの酸化膜が形成されており、この酸化膜はマグネタイト(Fe3O4)を多く含んでいる。

  • マグネタイトは強固で緻密な酸化膜なので、漆と鉄の界面に存在することで強い密着性を示している。

記事の中では、界面の酸化被膜の生成過程について詳しく考察されています。(が、私の理解が及ばないのと、これ以上踏み込むにはある程度の専門知識が必要そうです)

古墳時代の人がこのメカニズムを理解して使っていたわけではないと思いますが、長い年月を費やして生み出された技術の完成度は凄まじいですし、それを科学的に分析することは重要な意味がありそうです。

今日は以上です。

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