【学会誌】電気化学を用いた細胞脱離と三次元細胞シートの作製

こんにちは。
『表面技術』2023年1月号を読んでいるので、備忘録的に記録しておきたいと思います。
1月号の特集は「ウェアラブルデバイス及びインプランタブルデバイスと表面処理」となっていて、人が装着するデバイスや人体内で動作するデバイスに関する内容です。

今回読んだ記事のタイトルは『電気化学細胞脱離を用いた細胞シートの移植デバイス』で、著者は横浜国立大学の山内万貴さんと他数名の方々です。

記事の内容

電気化学を用いた細胞脱離の原理と三次元細胞シートの作製方法について説明されています。

電気化学的な細胞脱離は、電圧を印加することで短時間で剥離できる手法です。(熱を用いた剥離では30分~1時間程度必要)

三次元細胞シートの作製では、立体物への成膜に有利な無電解めっき技術を用いて鋳型を作製しています。一般的にはスパッタリングを用いますが、粒子の飛び方に異方性があるので、立体物へは向かないという問題があります。

ポイント

  • 電圧印加で素早く剥離可能な単分子膜としてオリゴペプチドを独自設計した

  • 生体適合性の金めっき浴を開発した

  • 独自設計のオリゴペプチドと金めっき浴によって、立体構造物の表面に細胞シートを形成・剥離することで、三次元細胞シートを作製した

技術的なメリット

細胞シートは体内の炎症部などへ貼ることによって回復を早めたりすることに使われますが、人体の内側は部位差や個人差が大きいらしいです。

なので、その部位に合わせた形で細胞シートを作る方が便利だと考えれば、三次元の細胞シートのニーズが出てきそうです。
(この点はあまりはっきり書かれていないのがこの記事の欠点ですが)

課題

課題として書かれているのは、細胞シートの転写が完全ではないことです。

また、書かれていませんが、貼り付ける部位のスキャンから鋳型を作る工程も検討が必要になりそうです。

見えない課題が多そうですが、なかなか面白い技術なので、今後の進展に期待です。

今日は以上です。

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